刃牙道 第9話 出産



今回から1話ごと掲載の平常運転だ。
感想サイト的な繁忙期は過ぎ去った形となる。
そして、怒濤の連続掲載のはずが話があまり進んでいない。
みっちゃんはトーナメントでも企画しておいた方がいいんじゃないだろうか。


「全力疾走にも勝る…………」
「エネルギーの消耗度…………」
「十字懸垂」


さて、鎬紅葉は懐かしの十字懸垂をしていた。
並みの運動量では心臓が立ち上がらないのが紅葉である。
そのため、ウォームアップとして十字懸垂をするほどであった。
紅葉の高い身体能力を物語るエピソードと言えよう。

逆に言えば紅葉はちゃんと準備体操をしないと戦えないタイプの格闘家である。
実戦派格闘家に転向しないと不味いぞ。
あの本部だって実戦派なのに。
うーむ、せっかくの出番が来そうなのに……

そんな過酷なトレーニングを行っている紅葉だったが、その最中にあくびをしてしまう。
十字懸垂だけでなくベンチプレスでも100m走でもあくびがこみ上げてくる。
(いずれも常識的なトレーニングなのがいまいちだが)
トレーニングと言えど過酷なものなのに、思わずあくびをしてしまうミステリーである。
あくびは刃牙だけの現象ではなかったのだ。

このあくびを紅葉は疑問に感じ、医学的ではないとの感想を漏らす。
何故退屈しているのか、何に退屈しているのか。
退屈の原因は何なのか。そもそも、あくびは退屈から出ているものなのか。

このあくびは紅葉だけでなく滝浴びをしている独歩もしてしまう。
極寒の滝浴びというハードな環境だというのにあくびをしてしまっている。
格闘家たちが感じている予感とは何なのか。
今までの日常があくびが出るくらいに退屈なものになるほど、武蔵の復活は大事ということなのか。

紅葉は近代的なトレーニングを行い、独歩は古典的なトレーニングを行う。
2人の世代の違いがよく表れていると言えよう。
紅葉は肉体自慢だから素直に筋力を伸ばしている。
筋力だけならジャックやオリバと言った紅葉以上のキャラが登場しているから、医者らしいことをして差別化して欲しいものではあるが。

さて、独歩は初期のエピソードとはいえ、筋力やスピードを維持できるのは55歳の時点が最後と言っている。
なので、肉体を鍛えるのはあまり効果がないと見て、精神面を鍛えているのだろうか。
何やかんやで精神力は効果があることが実証されている。(範馬刃牙第111話
独歩自身、甘さがあったと勇次郎に語っている。(範馬刃牙第138話
肉体も技術も完成の域に達しているからこそ、精神面を鍛え直すための滝浴びなのだろうか。

さて、独歩と紅葉だが意外と共通点がある。
地下闘技場での(連載上での)初めての試合は同時期である。
加えて徳川光成から戦うとしたらどうするかを問われている。(範馬刃牙第200話
トレーニング内容も対称的だし今後この2人に何らかの接点が生まれるかもしれない。
初期の実力者同士という点でも共通しているマッチメイクだ。
まぁ、紅葉は勇次郎に9対1を仕掛けてから株が暴落していますけどね……

トレーニングを重ねているのはこの2人だけではない。
○○大学医学部付属病院という一見格闘技とは無縁の場所でも、その強さに磨きをかけている人物がいた。

「現在の身長へ…」
「さらなる上乗せ」
「より高く…より遠く…」
「俺の上半身の長さから算出した運動能力を損なわぬ限界値…」
「骨延長30センチ…! 身長目標値2メートル43センチ!!!」


そう、ジャック範馬はまさかの2度目の骨延長手術!
その目標はまさかの30cmの大改造! そして2m43cm!
って、努力のベクトルを間違えてるよ、ジャック兄さん!!
デカいってことはメリットだけじゃないんだぞ。
デカくて勝てるなら世の巨漢はもっと勝っている。
うーむ、むしろ身長を圧縮した方がバキの文法的には勝てると思うのだが……

ジャック兄さん、まさかの大暴投である。
アンタに足りない部分は多分身長じゃない。
そこは足りすぎているくらいだから他の部分を追求してみてはいかがか。
でも、ジャックはパワーもスピードもある。
テクニックも渋川流を模倣しピクルタックルを逸らしていたことから十分ある。
ピクルの登場でオンリーワンではなくなったけれど、噛みつきという個性もあるぞ。
じゃあ、後足りない部分となると……範馬の血の濃さか?
……どうにもならんな。
知らぬ間に器用貧乏のキャラになりおって。

まぁ、ジャックは骨延長でデカいことが個性みたいになってしまっていた。
長身という個性(オリジナル)を追求するのはさほど間違えていないのではないでしょうか。
例え実力で劣っていても属性が違えば活躍できる機会があるのだ。
もうこだわりの長身キャラを貫いてもいいかもしれない。
2m43cmはデカい人の代表格、リーガンの2m40cmを越える大台だ!
リーガンよりデカいという名誉なのか不名誉なのかわからん称号をもらえる。

「見下ろせる………………」
「全ての敵を見下ろせる」


激痛に耐えながら伸ばした身長がもたらすものを想像してジャックは笑う。
ジャック的には1回目の骨延長手術は大成功だったようだ。
なので2回目もやっちゃおうということだろう。
読者的にはジャックが身長を伸ばしたメリットがいまいちわからなかったのだが。
一応、身長に比例して身体能力も伸びたみたいだけど、それでもピクルには通用しなかった。
もちろん、リーチの増加は打撃を好むジャックにとっては大きなプラスだけれども、そんなリーチを活かした削りを好む人間でもあるまいて。

そんな愉快ささえ漂うジャックの暴挙ではあるが、ちと暗い話題も。
まず、身長は大きすぎると寿命が縮む恐れがある。
巨人と言われている人間はいずれも早死にしている。(これはデカいからというよりも病気ということもありますが)
例え寿命を無視しても長身から来る体重の増加は肉体に大きな負担をかける。
バキの作中でも斗羽がそれによって膝を壊していることからも明らかだ。

そして、ジャックは1回目の骨延長で20cm伸ばしたことでさえ紅葉に奇跡と言われている。
30cmとなると奇跡というレベルを越えている。
加えて2m43cmとデカすぎる身長は先述した通り、身体への負担もデカい。
いくら運動能力を損なわないと言っても、元の身長が193cmだったのだからそこから合計50cm身長を伸ばすなんてバランスがメチャクチャである。
それでもジャックは強さだけを求めて身長を伸ばそうとしている。
明日を望まぬ今日だけの強さを求めたジャックらしい発想である。

だが、これはある意味では消極的な思考にも思える。
ジャックはピクルに惨敗した。
技術で翻弄し一矢報いられた烈や克巳と違って、ジャックは自慢の噛みつきも筋力も身長も何もかもがピクルに通用しなかった。
存在の全否定されたようなものである。

そこでトレーニングしようにも技術は数値として表れない。
筋力は既にハードドーピングしているのだから、これ以上求められるものもなさそうだ。
その上でさらに強くなろうとして求めたものがわかりやすく数値として表れる身長だとしたら物悲しい。
明日を求めないということは明日を求めれないことでもあり、それ故に結果を早く求めざるを得ないジャックの刹那的な生き方が表れている。

さてはて、骨延長手術の激痛に耐えるジャックだったが、その最中にも紅葉や独歩と同じようにあくびをしてしまう。
激痛の最中にそんな余裕はないはずなのに……
退屈を越えた何かがあくびには込められているのではないだろうか。

そんなあくびを生み出したであろう宮本武蔵はついに出産の時を迎えていた。
受精から11ヶ月と10日目に加え9時間41分のことである。
謎テクノロジーで32歳6ヶ月相当らしい。
これが世にまかり通る合法ロリである。
ちと違うか。

30代の強者というのも珍しい。
意外と30代の強者はいないのがバキ世界である。
烈くらいだろうか。烈も推定30代に過ぎないのだけれども。

さて、武蔵は享年61歳だ。
大分若返らせた。そりゃまぁ61歳じゃ肉体的にキツいのか。
(32歳からはややズレるが)武蔵は31歳の時に大坂の陣に出陣している。
大坂の陣は関ヶ原の戦いを越える史上最大規模の合戦だ。
そこを武蔵の全盛期として32歳という年齢を設定したのだろうか。

余談ながら有名な佐々木小次郎との決戦、巌流島の戦いは29歳の時だ。
メジャーな武蔵に対してちっとも話題にあがらない佐々木小次郎である。
まぁ、いるのかいないのかよくわからん人なのですが。

ジョン・ホナーの指示によりついに武蔵の出産が行われる。
ぬるりとカプセルから武蔵が出てくる。
エロには丸呑みというジャンルがあることをふと思い出した。

ともあれ、こういう時に科学者たちが被害を被るのがお約束である。

「ピクル」でもアラン君が酷い目にあった。
ジョン・ホナーと野々村仁も同じような目に遭うか?
いや、一番ひどい目に遭うべきは巨悪徳川光成だが。
次回へ続く。


まさかのあくびのシンクロニシティ!
うーむ、皆が皆、ワケのわからぬ病状に悩まされて大変なのだな。
紅葉が医者の仕事を放り投げているのはこのあくびによるものなのかも。
患者の前であくびなんてしたらシャレにならないし。

刃牙は勇次郎戦を乗り越えたことで人生の目標を達成してしまい、退屈しているからあくびをしていると思っていた。
だが、そうでもないらしい。
うむ、小憎たらしかった刃牙の印象がほんのちょっとだけマシになりましたね。
ほんのちょっとだけ。
それならそれで上手く隠せば恨まれなかったのに。
そんなあくびの真意が明らかになるのは次回以降か。

今頃本部も山であくびをしているのだろうか。
何か1人だけ必死に修行していてあくびする暇がなくてもおかしくないけど。
何の間違いか存在を主張することができたのだ。
あくびなんていていられない。
そう、山籠りで身に付けた新必殺技があくびさえも封殺する無呼吸解説ッッッ。
うん、武道家としてよりも解説家としての勇姿を我々は待ち望んでいる。


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