刃牙道 第39話 真剣



独歩が武蔵に完敗した。
パンチ一発でタフな独歩を倒した。
武蔵の打撃力は相当なものだ。
果たしてこの規格外から本部は皆を守護れるのか?
本当に守護る気があるのか?


さて、独歩が負けた。
かと思ったら立ち上がった。
逆立ちする余裕まで見せている。
独歩は実力者ながら負ける時はあっさりと負ける。
なので、今回も負けたかと思ってしまった。
ま、まぁ、さすがにパンチ一発では負けんわな。
Jr.にはアゴ一発で負けましたが。

立ち上がった武神が見せた構えは天地上下の構えだ。
独歩が見せる構えの中でもっともポピュラーなものであり、独歩の象徴とも言える構えだ。
一方、本部が評価した前羽の構えはちょっと影が薄い。
使用頻度はそこまで低いわけではないのだが。

立ち上がった独歩に疑問を持つのは武蔵だ。
斬ったのに立ち上がる。
殺したのに立ち上がる。
生死を分ける戦いをしてきた武蔵としては疑問なのだろう。

「斬る真似をした」

「あれを真似だと…」

「宮本さん」
「アンタの最大の失敗(ミス)は」「真剣を持ってここに立たなかったことだ」


さすがは死んでも、腕を斬られても、催眠術にかかっても、あとJr.に負けても闘争を捨てなかった男だ。
心が折れなければ負けではない。
例え幻影刀に斬られても生きている限りは負けではないのだ。

これには話術で押していた武蔵も納得する。
そして、徳川光成に刀剣を持っているかを問う。
……って、あの、ちょっと待ってください。
みっちゃんもそこで国宝「國虎」を武蔵に渡す。
あの、ちょっと待ってください。

「これなら耐久(もつ)な」
「お待たせした愚地どの」


武蔵、帯刀ッッ!!
ついに武蔵が闘争において帯刀した。
ついについにの帯刀だ。
ただでさえ危険な男が帯刀したのだ。
その危険度は刀を持った本部や柳の数十倍になるだろう。

現代人なら刀を持って死合えと言われても躊躇するかもしれない。
倫理観というブレーキがかかることだろう。
だが、武蔵は実際に斬り合い殺し合った時代に生きた男だ。
売り言葉に買い言葉でリアル刀を用意した。
実に恐ろしい男である。
あとみっちゃんも渡すなや。銘に虎がついているから虎殺しに殺してもらえるとでも思ったか?

帯刀と同時に刃牙道のロゴが挿入される粋な演出がされる。
武蔵の帯刀は一大事ですからな。
そりゃロゴ挿入のタイミングをズラすわけですよ。

さすがに独歩は汗を流す。
だが、武神だから引けまい。
一応、剣術家相手の経験もあるしな!
その人、イメージだけで心が折れたけど。

ここでみっちゃんに実物の宮本武蔵だと言われる。
だからこそ、刀を持たせた。
さすがの強いんだ星人である。
強ければ強いほど、危険なら危険なほどよし!

でも、相手がヤバい。
本部に刀を持たせてもこれっぽっちも怖くないが武蔵に持たせるとなるとヤバい。
二刀流に乱れ打ちさせるようなものですよ。
武道家は特攻隊じゃないと言ったのは独歩本人なのに……

「武器はこの人だけじゃない」
「空手は五体が武器」
「手刀…」「足刀」「貫手に前蹴り…」
「刀も槍も」「よりどりみどりだぜ」


だが、さすがは人間凶器。
日々、肉体を武器とするべく研鑽を重ねてきただけのことはある。
武器を前にしても己自身が武器だと引かない。
総計100巻を越えても歪まず貫き通す独歩イズムである。

「面白いことを言う」
「アンタらは実に滑稽だ」
「神でもない者を“武神”と称し」「本人もまたそれを受け入れる」
「紙切れ一つ切れぬ生身に」「刀だの槍だのと!!!」
「もはや舞踊(おど)りにも値せぬっっ」


と、本気の独歩に対する武蔵の返しがこれだった。
性格悪ッ!!
これは性格が悪い。実に悪い。範馬一族に比肩する性格の悪さですよ。
でも、紙なら独歩も切れそうな……
昂昇が斬っていたし独歩にもできますよ。

これには独歩も気を削がれたのか、天地上下の構えを解いてしまう。
独歩の臨戦態勢を見事に解いて見せた。
不味い、武蔵の思惑通りだ。

「空手とはさしずめ」「児戯! 小童の遊びといったところか」「なァ!」

さらには独歩が生涯をかけて研鑽した武道を否定した。
ここまで性格が悪い人だったかー。
もっとも、生き死にの戦いをしてきた武蔵にとって、相手に易々と武器を持たせた独歩は遊びと言えるかもしれないが。
これには独歩もキレて床を踏み抜くほどの脚力で跳び蹴りを行う。
それを武蔵は抜刀で迎え撃つ。
敗北のみならず生命の危険を目の前にしながら次回へ続く。


武蔵は性格は悪いが完全に戦いをコントロールしている。
個人を侮辱して闘争心にブレーキをかけ、直後に武術そのものを侮辱することで迂闊な踏み込みを誘発させた。
独歩の動きは完全に武蔵の思うがままだ。
駆け引きと策略の双方において独歩の上を言っている。

格闘家たちの中で独歩は曲者に属するほど食えない男だった。
その独歩を武蔵は手の平で操っている。
肉体的な強さ以上にこの心理戦の強さが武蔵の強みか。
肉体の強さに寄っていた範馬一族やピクルとは異なる強さだ。
技術に寄っていた郭海皇や渋川先生と言った達人とも異なる強さである。
武蔵は未知の強者なのだ。

武蔵にとって空手は未知の武術だ。
一方で独歩の攻撃力は試し割りで知っている。
そして、武蔵はジャブでダウンしたことから、防御力に関しては飛び抜けているわけではない。
独歩と真っ向勝負を行えば負けるまで行かずとも大きなダメージを負いかねない。

だからこそ、与しやすいよう独歩の動きを心理戦でコントロールしたのだろう。
如何に未知の武術でも仕掛ける瞬間をコントロールできれば制しやすいのは間違いない。
武蔵の立ち回りは恐ろしいまでに実戦的だ。
生き死にの戦いを制してきただけのことはある。
武蔵は勝つ以上に生き抜くための戦いをしている。
生き抜くためにはダメージを減らす必要があるし、そのために相手の出方をコントロールする必要がある。
何と達者な忍術……
喧嘩稼業に出てみては如何か。

武蔵は実に曲者である。
自身の強さだけを追い求めれば戦えた今までのライバルとは異なる。
武蔵自身も強いのだが、駆け引きの強さがそれを底上げしている。
武蔵に対抗するには同等の駆け引きをできるか、駆け引きをガン無視するかの2択かな。

刃牙は肉体の強さだけなら武蔵に対抗できたかもしれない。
事実、ジャブでダウンを奪えたし。
が、駆け引きで完敗してしまった。
刃牙の性格も悪さも相当なものだが、それを闘争に生かせるかとなるとまだまだだった。
そこはあくまでも若輩ということか。
なら、曲者の独歩はとなったが独歩を上回る曲者っぷりで圧倒してのけた。
独歩で敵わないとなると駆け引きで武蔵に対抗できる相手はいるのだろうか。
なかなか厳しい。
肉体と駆け引きの双方を満たすとなると勇次郎くらいしか思い当たらない。

武蔵はまずは心理戦から入ることから、ピクルは武蔵と相性がいいかもしれない。
あの人、言葉わかんないし。
でも、刃牙はピクルのメンタルに多大なダメージを与えられた。
なら、言葉が通じないなら通じないなりに武蔵も何とかできそうだ。
幻影刀を見せると怖いと怖じ気づくかもしれないし。
お互いの強みがどう噛み合うかわからないので、ちょっと見てみたい組み合わせだ。
ピクルの安否も気になるところだし。

まぁ、心理戦が重要となるとやっぱり本部だよな!
ここ最近、ずっと本部オチでワンパターンなのは申し訳ないのですが、やっぱり本部に期待ですよ。
あの人、曲者の死刑囚を圧倒するほどの駆け引きを見せたしな!
武蔵に勝てるとはいかずともさすがは本部と読者を感服させることはできそうだ。
させやがれ。

でも、あれだなー。本部ってどっちかっていうと口から出任せが多いというか、嘘八百って感じだからなー。
独歩を1分で殺せるとか、勇次郎と花田の才能が並ぶとか、渋川先生がロジャー・ハーロンに負けるかもしれんとか、
アンタ、発言の意味を特に考えていませんよね?

逆に言えばそんなことを思わせぶりに堂々と言えるような男だから詐欺師の才能があるかも。
もしや、本部は現代の心理術の最先端、詐欺を以て武蔵に挑むのか?
戦国の心理術VS現代の詐術! おお、物凄い勝負っぽいぞ!
いや、我々は一向に守護(まも)る気配のない本部に詐欺(だま)されているかもしれぬ……




サイトTOPに戻る Weekly BAKIのTOPに戻る