餓狼伝 Vol.212



完全武装の機動隊が松尾象山に挑みかかった!
先手必勝と言わんばかりにジェラルミン製の盾を足の甲に突き立てる。
盾を防具だけでなく武器として見事に用いてみせた。
機動隊もまた武道家だけあり的確な攻めである。
これには松尾象山もダメージを避けられないか?

筋肉の壁のない足の甲を攻める。
間違いなく松尾象山にも有効打となる攻撃、のはずだった。
だが、松尾象山は微動だにしない。
ノーリアクションだ。
この予想外の事態には不意打ちが成功したはずの機動隊が汗を流す
何があったんだ?

「残念だ」

奇襲を真っ向から受けたというのに松尾象山に同様はない。
一言つぶやくと即正拳突きで反撃する
正面からの打撃にはジェラルミン製の盾で正拳突きが防具となって機動隊を守ってくれる。
守ってくれるはずであったが、あまりの威力に機動隊は盾ごと吹き飛ぶ
そして、ジェラルミン製の盾には拳の跡がくっきりと残っていた。
さすが松尾象山。恐るべき打撃力だ。

松尾象山の恐ろしさを見せつけられた機動隊は冷や汗をだらだらと流す。
間違いなく喧嘩を売ったことを後悔している。
ジェラルミン製の盾なんて防具にすらなりはしないのだ。
人間なんてレベルじゃないから、武装したといって勝てる相手ではない。

松尾象山は機動隊がヤクザ同様のミスをしていると指摘する。
それは松尾象山を人間扱いしたことについてだ。
機動隊は完全武装、そして足の甲から潰すという念の入った攻めを行った。
人間が相手なら大ダメージを与えられただろう。
だが、相手は松尾象山だ
機動隊は立ち回りを人間の範疇限定で考えたのが敗因か。いや、まだ負けてないけど。

「君の盾」
「わたしの足にぶつけた部分を確認したまえ」


そう言われて機動隊は盾を見る。
なんと足の甲にぶつけた部分が足の形に曲がっていた。
松尾象山の足はジェラルミンより硬いのだ。
ジェラルミン以上の硬度を誇るのが松尾象山なのである。
…人間?
霊長類じゃなく松尾象山類かもしれない。

「松尾象山を人間(ひと)扱い」
「これは高くつく 俺を嘗めた」


目の前の相手がジェラルミン以上に硬いなんて死んでも思えないっすよ。
さすがにそこまで把握しろというのは酷だ。無茶だ。
そんな無茶を言いながら松尾象山は怒る
松尾象山は人間じゃないなんて言いながら、結局は人間として捉えてしまったのだ。
大言壮語を言われたのはいいものの裏切られた心持ちなのだろう。
これは残虐ショーの始まりか?

やっと命の危険を感じたのだろうか。
機動隊は警棒を振り下ろして精一杯の抵抗をしようとする。
それを松尾象山は手刀で迎撃だ。
当然のように木製の警棒は断ち切られる。
しかも、その切り口は鋭利な刃物で斬ったかのように滑らかだ。
ジェラルミン以上の硬度を持つ肉体を持つだけあり、切れ味も恐ろしい。

当然、機動隊は冷や汗を流す。既に冷や汗だらけだけど。
だが、これでも武道家の端くれである。
武器がないなら五体で戦うまでだ。
そう言わんばかりに蹴りを松尾象山に放つ。だが、かわされる。
さらに盾を振り回すコンビネーションって結局武器かよ!
実に落ち目だ。ダメダメ機動隊だ。

盾を一振りするが松尾象山には当然のごとくかわされる。
足下を狙ってもう一度振るがそれもジャンプでかわされる。
力任せに振るような技術なき攻撃に松尾象山が被弾する道理はないのだろう。
もはや戦いというレベルではなく、機動隊の精一杯の抵抗になっている。

「腹ッ」

飛びながら松尾象山は攻撃部位を予告する。
機動隊はすかさず盾を地面に立てて防御の構えを取る。
攻撃を予告されてなお防御するあたり完全に落ち目だ。
反撃するか、あるいはかわすくらいはやってもいいだろうに。
圧倒的な戦力差に戦意すら失ってしまったのか?

松尾象山は着地と同時に予告通り、腹へめがけて蹴りを放つ。
盾をくの字に折り曲げ機動隊を場外へと吹き飛ばした。
文句なしの一本だ。
完全武装の機動隊を攻守両面でまったく問題にもしなかった。
人間離れした姿をまざまざと見せつけられ丹波も冷や汗だ
あ、いたんだ。
…今後、こいつに出番あるのかなぁ…

(途中放った横蹴り――… あれがイチバンよかった……
 君の最大の誤りは完全武装……)
(自らの武器に縛られてしまったことか…………)


歓声に包まれながら松尾象山は機動隊の蹴りを評価した。
松尾象山に評価される以上、機動隊の男はなかなかの強者だったのだろう。
しかし、武器に頼り切ってしまい、持ち味を生かし切れなかったのだろう。
訓練で学んだ技術よりも五体に染みこませた武術の方が大事ということだろうか。

これにて松尾象山による生き試し、もとい演舞が終わった。
これで北辰館トーナメントの全てが終わったことになるのだろうか。
それとももう一波乱来るのか。
そして、最後まで丹波の出番はないままなのか
次回へ続く。


松尾象山は格が違った。
というか、ジェラルミン以上の硬度を誇る非人類だった。
餓狼伝世界最強だけあり人類一同とはレベルが違う。

そんな松尾象山が雑魚二匹でトーナメントを終わらせるのだろうか?
だが、それはないだろう。
ここは新たに十分な力量を持つ生贄が必要だ。
生贄が散ってこそ松尾象山も満足するのだ。
しかし、誰が捧げられるのだろうか。

・鞍馬(公約を果たす)
・久我重明(そういえば、神山徹との関係は何だったのだろうか)
・梶原(間違いなく機動隊より弱い)
・丹波(間違いなく機動隊より…は強いか)

…なんか下2つはありえないと断言できるな…
試合以外も先の読めない餓狼たちであった。


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