範馬刃牙 第130話 成りし時 



愚地克己オリジナルの最終兵器の俺マッハ突きが炸裂する。
今度こそ正真正銘の克巳オリジナルだ。
郭海皇の先の先を行く超必殺技である。
それだけに負担が心配だ。
骨折くらいで済んでください。


「当てる 貫く…… 当てる 弾く…… 当てる 砕く…… 当てる 響かせる……
 当てる 跳ばす…… 当てる 潰す…… 当てる 切る…… 当てる 壊す……
 当てる 抉る…… 当てる 折る……」
「当てることだけを考えてきた…… 強く当てること…… 速く当てること……」


克巳は俺マッハ突きの構えに入ると同時に無数の「当てる」を思い浮かべる。
当てることだけを考えるのは打撃系格闘技の世界に生きる男ならではである。
「金的」の二文字を加えるとすさまじくダメな人生に見えてしまうので止めておきましょう。
金的に当てる貫く…金的に当てる弾く…金的に当てる砕く…金的に当てる響かせる…
…刃牙?

「当てて効かせる……そうッッ」
「効かせるため…… 筋肉を備えた」
「効かせるため…… 脱力………緩(ゆる)を備えた」
「効かせるため…… 決して曲がらない骨を――――」
「力技(イメージ)で鞭にまで変貌(かえ)た」


関節多重化は力技という自覚があったのかよ!
思わず突っ込んでしまった。これは突っ込まざるを得ない。
ああうん。やっぱり、力技だよね、あれ。
現実に妄想で力押ししてものれんに腕押しの気がするけど、押し続ければ何とかなるものらしい。
空に手を振っても何も手応えはないけど、マッハで振れば音の壁が生まれるように!

ともあれ、打撃を当てて効かせる人生を歩んできた克巳はその効力を最大限に引き出すために身体を鍛えてきた。
そして、ここ最近になり今まで取り入れていなかった脱力という発想を、妄想想像を打撃に組み込んだ。
打撃に対して技術というアプローチから取り組むのは武道家らしい。
ピクルや勇次郎の非人間クラスになると筋力だけで十分になってしまう。

「そして誕生(うま)れた
 最新――――― 最強――――― 最善――――― 最良―――――
 現在(いま)最も進化した打撃(オリジナル)」


最新で最強なことに加えて最善で最良という安全面も考慮したのが俺マッハ突きのようだ。
真マッハ突きは威力は十分であったが使用者にかかる負担が半端ではなかった。
だが、そこをカバーすればマッハ突きは完成する。

あと門下生一同にマッハ突きを教えることもでき、克巳の館長としての株も急上昇だ
マッハ突きの鍛錬は多重関節をイメージしろから始まる。
…無理だッッ。

克巳は全身を多重関節にし、前方へ大きく身を乗り出す。
ピクルタックルに対抗して全身マッハのマッハタックルか?
と、積極的に勘違いしていたらちゃんと右腕を振っていた。
俺マッハ突きは右腕で繰り出すらしい。

「俺自身が驚愕(おどろ)いてるんだ……」
「だってよ…… ブチ当てることだけを考えてきた日々……………」
「そうして………」
「最後に辿り着いた最終形態………が あろうことか――――――」
当てない打撃だったなんて………」


克巳は腕を振り抜き、一気に引いた。
なんとピクルは吹き飛ぶ。
ピクルを数メートルも吹き飛びダウンさせる。
常識外の距離を飛ばされた狩りを返すように、常識外の距離を飛ばし返した。
俺マッハ突きは全力で突進したピクルを弾き飛ばすほどの破壊力を持っていた。

威力面はまったく問題なしだ。しかも、カウンターの形で入れている。
これにはピクルも大ダメージか?
腕を引いていることからマッハ裏拳だろうか。
いや、当てない打撃と言っているから特殊な技術が入り交じっているのか?

俺マッハ突きの炸裂と同時に血が観客まで飛んでくる
どちらの血なのかはわからないが、球場中央から観客席まで血を飛ばすほどの衝撃波を俺マッハ突きは生み出したらしい。
そうなるとやっぱり副作用が心配になってくる。
最善で最良がキャッチコピーの俺マッハ突きだけど、反動もやっぱりあるのか?

[手動でありながら音速(マッハ)を発生させる道具鞭]
[その鞭の][最もスピーディーな瞬間とは―――][ここ]
[打ち込む加速時ではなく]
[振り戻すその瞬間にこそあるという妙]


鞭とマッハ突きは綿密な繋がりがある。
繋がりと言ってもマッハであることだけだけど。
だが、克巳はここで鞭自体を模倣することでさらなるマッハを目指した
鞭人間である。
…こうなるんだったら郭海皇じゃなく柳…は生死不明だからマスター国松に習えば良かった気が…

[当てることに全生涯を そこには何一つ疑問の余地はなかったハズ]
[当てるという常識 当てるという大前提 当てるという全財産を手放した]
[そして手にした………………… さらなる音速(マッハ)…… さらなる衝撃波……]


なんと俺マッハ突きは衝撃波で攻撃する技だった。
音の壁が真マッハ突きの障害となった。
ならば、音の壁に達した瞬間に殴れば負担軽減。
そんなことを考えていた時期が俺にもありました。

だが、天才愚地克巳は違った。
音の壁が邪魔ならそれを取り除くのではない。
腕を引き戻すことで発生する超々音速を使ってさらに速くぶつかることでより大きな衝撃波を生み出した。
音の壁を武器にしたのだ。
そして、これなら骨折に関係なく打つことができる。

発想の逆転なんてものじゃない。
格闘技の常識から逸脱した部分に活路を見出したのだ。
土壇場になって天才愚地克己の才能が爆発した。
いや、普通に無理だろ、とか言うな。
格闘漫画には超震動で攻撃する無空波とか、5年後に死ぬ塊蒐拳というのがあって…
そういうのがあるくらいだから衝撃波で攻撃したっておかしくない。何もおかしくない。

ともあれ、超音速の衝撃波をピクルにぶつけた。
速度は間違いなくあるだろう。
でも、体重が乗っていないんじゃないか、これ。
打撃力の要となる体重が乗っていないというか、乗せられないのが不安要素だ。
そして、衝撃波だけにピンポイントの攻撃は苦手そうだ。威力が分散している恐れもある。

しかし、そういったレベルの技術を投げ捨てて作り出したのが俺マッハ突きなのである。
より重く、より的確に当てるという常識を覆して生まれた未知の打撃だ。
事実、あのピクルが打撃戦で吹き飛んだ
問答無用に大ダメージがあったと見るべきだろう。

さて、俺マッハ突きは威力は申し分なかった。
問題となるのはその副作用だ。
最善で最良なら…まぁ、骨折くらいで済んでいて欲しいですよね。
克巳は俺マッハ突きに用いた右腕を見る。

「そりゃそうだ……」
「鞭でもない…………… 多関節でもない………」
「ふつうの………… 骨だ………」


克巳の目の前にあるのは骨だった。

………

……



…え?

骨?

( ゚д゚)………

( ゚д゚)えー

( ゚д゚)まじでー

( ゚д゚)これは

( ゚д゚)骨だ

………

……




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     く::::::::::`i / ゝ-'‐' ̄ ̄`ヽ、_ト-、__rイ、
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      r'´ ィ"レ´ ⌒ ,___, ⌒  `!  i  ハ
      ヽ/ ! /// ヽ_ ノ /// i  ハ   ',  うー♪うー…
      .ノ /l           ハノ i  ヽ.
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克巳の右腕が骨だけになってるううううう?!!
思わず絶句して反応が遅れてしまった。
動転しすぎてAAも貼ってしまった。

烈の左脚食われ事件のインパクトに勝るものはないと高をくくっていたら、それ以上のインパクトを見せつけられてしまった。
あまりのショックに更新をサボろうかと思ってしまったほどだ。
っていうか、最善で最良じゃねーじゃん!
最凶最悪じゃねえか!

正確には肘から手までの前腕部の筋肉が丸ごとなくなっている。
手の部分は何とか肉が残っているが…手の平の筋肉はそげ落ち骨が見えている。
もっとも速度が出る先端部である手の肉の方が吹き飛びそうなものだが、不思議なことに負荷は前腕部の方が大きかったらしい。
音の壁との激突以外にも筋肉の酷使も絡んできているのだろうか。

何にせよ真マッハ突きとは比べものにならないほどの副作用だ。
出し惜しんだ理由がよくわかる。
そして、自分の骨を直視したことで関節の多重化ができなくなっていそうだ。
現実にイメージは勝ったが、今度はイメージが冷酷な現実に負ける気がする。

肉を失っても骨があれば何とかなるのがグラップラーだ。
だが、ここまで肉を失ってしまえばさすがに治しようがない。
克巳は右腕を失ってしまった。
烈が左脚を失ったように、ピクルと対峙する者は格闘家の命である五体の一部を損失するのかもしれない。

しかし、これほどの重傷を負ってなお克巳の表情は諦観のような感情が入り交じっていたが笑っていた。
肘から先が骨だけになるという想像を絶するというか、想像も何もできない苦痛を味わっているはずなのに、痛みに顔を歪めていない。
神経も丸ごとぶっ飛んでいるから、腕切断くらいの痛みか?
いや、それでも凄まじい苦痛だけど。

何にせよ苦痛に勝る充足感が克巳を包んでいるようだった
腕を犠牲にしてでも、ピクルを倒す。
克巳はピクルとの戦いに対して本気で命を賭けていた。
残念ながら烈にはなかった覚悟だ。刃牙にはもっとない。

[魔法が―――――――― 解けた………]

培ってきた技術も、鍛え上げた肉体を投げ捨てて、克巳は俺マッハ突きでピクルをダウンさせた。
その代償として格闘家の命である腕を失ってしまった。
烈同様に間違いなく再起不能だ。
義手にしてマッハ突きとかやりそうではあるが、実戦で戦うことはもうできないだろう。
克巳を強くした魔法は解けてしまったのだ。

魔法が解けた果てに残されたのは、魔法の副作用であった。
多くの人に支えられ駆け抜けて、そして強くなった男を象徴するような悲しい言葉だ。
泣ける…
衝撃的なラストと共に次回へ続く。


克巳は終わってしまった。
ヘタに死んだり食われたりするよりも雄弁に終わった。
俺マッハ突きは右腕そのものを犠牲にして撃つだけあり、破壊力は鬼哭拳以上かもしれない。
犠牲にすれば威力が増すわけでもないが、そうでもなければ克巳が報われない。

俺マッハ突きの前にピクルはどうなるのだろうか。
立つのか。それとも倒れ伏せるのか。
これ以上、克巳を攻め立てるのは酷すぎる
…何とか眠っていてください。
あるいは吹き飛んだ克巳の右腕の肉があるからそれで我慢する方向で。

それにしてもまだピクルにはダメージ表現が行われていない。
鼻血か冷や汗くらいは出してください。
どちらかといえば冷や汗がいい。
…起き上がったとしても冷や汗を流していれば痛み分け、なわけないか。

右腕を言葉通りに失うことでやっとピクルを吹き飛ばすことができた。
これを見ると刃牙は考えを改めざるを得ないだろう。
さすがに新聞紙とか言ってると…ちょっと…
まだ勝てる気でいたら大物だ。勝つ負けるじゃないと言ったら馬鹿だ。
克巳さん…あなたは馬鹿だ…右腕を犠牲にしてもピクルに勝てるはずがないというのに…とか言ったら…いつも通りだな。
いつも通りすぎてチャンピオンが裂かれる。

それにしてもバキ世界に衝撃波で攻撃するという概念が出てくるとは思わなかった。
技術云々よりも力んで殴った方が強い世界だけに、こうした間接攻撃が台頭するのは異例だ。
しかし、それはそれで真マッハ突きも衝撃波で攻撃したことになるんじゃないのか?
あるいは真マッハ突きを持ってしても速度が足りないのだろうか。
まぁ、俺マッハ突きは肉が吹き飛ぶくらいだし…

これでピクルVS克己はマッハの完成系を見せ壮絶なラストを迎えた。
いや、終わってないけど、これ以上続けるのも無理だろう。
間違っても左腕で俺マッハ突きとか止めてください。

マッハを極めた果てに自分の腕がなくなるというのも因果なものである。
進化の袋小路は死とも言うし、まさにその通りか。
そして、進化の果てに死が待ち受けていたのがマッハ突きの限界であろうか。
郭海皇はその限界を悟っていたからこそ、マッハ突きではなく消力に磨きをかけたのかもしれない。

涙を誘う克己のラストであったが、作者コメントも涙を誘うものであった。

[この半年。愚地克己を話す時、不覚にも涙する。]

…克巳がピクルと戦うと決意した時は完全にネタだと思ったものだったが…
今の克巳は誰よりも輝いている。それだけにこのラストが涙を誘う。

ありがとう克巳。
そして、さようなら。

…いや、別れ告げるのはダメだ。
ピクルは空気を読んでその辺に転がっている肉片で我慢を…



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