範馬刃牙 第165話 コロンブスの卵



ピクルの弱点を突くように鞭打が炸裂した!
真面目に戦ってきた俺たちは一体…ピクルに食われた3人の戦士は頭を抱えそうだ。
鞭打が通用するということは、柳でもピクルに痛手を負わせられるということだ
…柳じゃいくら何でも無理だな。


ピクルは激痛に身をよじる。打たれた部位を必死に押さえつける。
白目で冷や汗だらだらでまったく余裕がない。
鞭打は刃牙ですら耐えたダメージなのに…
ちょっと痛がりすぎではないだろうか。
想像を絶する痛みがピクルを襲った。

と思ったが、刃牙が食らったのは柳の鞭打だし、そもそも刃牙はマゾだ
痛みとか上等だよ。むしろ、良し!
一応はバキ世界最高峰の身体能力を持つ刃牙に鞭打をやられた上にピクルはマゾなんかじゃない。苦しんで当然だろうか。
野生動物だから痛みに強いんじゃないか…そう思っちゃうけど、ピクルも人間ということなんだ、きっと。

苦痛に身をよじるピクルを見て、花山とみっちゃんは驚愕(おどろ)く。
あれほどタフなピクルがどうして!
それは刃牙がイカサマをしたからだ。
…誰かがそう言わないかな。小物度が上がるけど。
元々小物である本部あたりが「それは下策じゃわい」と言ってみてはどうだ。

鞭打を受けた肩から背中まで刃牙の手形がついていた。
そのことにみっちゃんは驚く。
そういえば、鞭打の説明は受けたけど、実際に使われることを見たことはなかったのだった。

だが、刃牙VS柳の時の鞭打の傷痕はもっと凄惨なものだった
あの時は皮膚がちぎれ飛び肉が露出してしまうほどだったが、今回はピクルの皮膚は健在だ。肉なんてはみ出ない。
ピクルの精神は痛みに屈したが、肉体は鞭打を受けても耐えきったのだ
となると、ピクルはダメージに屈しなければ、鞭打にも対抗できそうだ。
よし、マゾになれ!

「あれが鞭打です」
「日本国の古流体術「空道」に伝わる秘拳
 我が 中国武術界においても“コロンブスの卵”と称えられる打技です」


驚愕する二人に烈は丁寧に解説開始だ。
何でも知ってるわ〜この人…
あの時、赤面した本部は可愛かったが、烈の赤面はそれ以上の破壊力を持つ。
よし、赤面だ、烈。ツンデレの赤面の破壊力は極めて高いぞ!

まぁ、赤面は置いておいて解説が行われた。
バキ外伝によって株が大暴落したのが空道である。
今更持ち出されてもありがたみがない。
ともあれ、鞭打は技術の宝石箱である中国武術界においても評価されているようだ。
だが、コロンブスの卵という以上、技術体系そのものではなくあくまでも発想を評価しているのだろう
だって、中国武術には多重関節化によるマッハとか存在するし…

鞭打はあれで秘拳だったらしい。
となると、柳は毒手+鞭打という空道奥義のコラボレーションをやってのけたのか。
実はすごい技だったのだ。SAGA後の刃牙にあっさり押し潰されたわけですが。
そして、そんな秘拳を幼年期に刃牙は勇次郎に教えてもらって体得している
…空道と柳の立つ瀬がない。

「筋肉を0レベルまで弛緩させ―― 身体の末端まで脱力を極める」
「不思議なことに」「脱力が実現するにつれ」「手足は重量感(おもさ)を増す」


鞭打の基本から説明する丁寧な烈であった。
だが、脱力すれば手足の重量が増えるってどういうことだ?
脱力することで明らかに軽くなっていた消力(シャオリー)とは正反対だ。
鞭打は不思議格闘力学が働くようだ。
もしかして、物理的に重くなるんじゃなく、脱力したから身体が重く感じるということじゃないだろうな

こうして脱力していくと終いには表情からも険しさが消え失せるらしい。
脱力しきった刃牙の表情はまさしく刃牙だ。
こう、働きたくないって表情が刃牙には本当によく似合う。
いや、待て。表情って関係あるのか?たしかに消力のために脱力した郭海皇の表情に険しさはなかったけど…
脱力するならまずは表情からということだろうか。むう…脱力道は一筋縄ではいかない。
顔面の筋肉が四六時中張りっぱなしの勇次郎が嫌う理由がわかるというものだ。
消力を真似た時はきっと相当無理していたに違いない。

「急所 弱点という概念は消えるのです」
「何故なら――」「標的は人体最大の器官 皮膚だからですッッ」


皮膚だけを狙い撃つ。それが鞭打の理合だった。
そのため、弱点や急所という概念が消えると同時に全身が急所になり得るしガードも意味を為さない
それでも金的を鞭打で行えば、その痛みは皮膚の数倍だと思う。
烈がピクルに生金的を行った時の動きは無意識に鞭打を意識したのだろうか。

こうして、脱力した四肢で打ち込めば、赤子の柔肌から花山の屈強なる筋肉までダメージは一緒だと、
ドカンやピシャンと擬音を交えながら烈は懇切丁寧に解説する。
さすが、神心会に指導者として携わっているだけある。不思議技術である鞭打を見事に説明してのけた。
精神論にまで発展する真マッハ突きと比べると、鞭打はあくまでも技術的なアプローチだから解説しやすい部類だろうか。

しかし、せっかくわかりやすく解説してくれたのはいいが、
残念ながら徳川光成は空道の元締めから直々に鞭打の仕組みを教えてもらっている
ちょっとだけ解説が空振りした感じだ。
まぁ、みっちゃんのことだからド忘れしていたもおかしくはないけど。
…ピクル編になってからみっちゃんのボケはひどくなっている気がする。認知症とは怖いものだ。

(ナ・ル……)(徳川光成)
(ホ・ド〜〜〜〜)
(花山)

通常の格闘技にはない発想に二人は素直に驚く。
って、みっちゃん!アンタ、鞭打のこと知っているでしょ!?
何を素直に驚いているんだ。「うむ、わしも耳にしたことがあるわい」くらいは言ってもらいたい。
やっぱり、忘れていたのだろうか。それとも、マスター国松に記憶を消されたのか…
いや、マスター国松にそんなことを出来る格はないよね。素直に忘れたと見るのが妥当だろう。

そんな解説の間に刃牙は脚による鞭打でピクルの太ももの内側に打ち込む
脚部の筋力・重量は腕部よりも上だ。おそらくは一発目以上の激痛がピクルに襲い掛かったことだろう。
また、軌道がもうちょっと逸れれば股間に鞭打ちだった。
ピクルはさりげなく九死に一生を得たかも知れない。

ピクルだって金的は普通にダメージを受ける。そこを鞭打されれば…
あるいは鞭打によってフンドシが破けポロリすることで、ピクルが強くなるかもしれない。
パンツ履いていないから恥ずかしくないもん!

さらに正面から背中へ手を回す形で鞭打を当てる
太ももの内側といい、わざわざそこかよ。
こういう場所は当てるのが逆に大変じゃないか?

刃牙は普通に戦っていては狙わないような位置…ピクルが打たれ慣れていないであろう位置に打ち込んでいる
どこを狙ってもダメージが同じという鞭打の特性を活かし、あえて普段は狙わない場所を狙っているのだろう。
刃牙は脱力して働きたくねえ働いたら負けだよ俺このままニートとして墓に骨を埋めるんだって感じに口を開いているが、
しっかりと計算して攻撃を仕掛けている
この嫌らしさの天才め…!

ピクルの身体に新たな鞭打の後が刻まれる。
3度も受けて慣れたのか、ダウンはしないものの激痛に苦しみ続ける。
きっと鬼の首取ったように周囲が騒ぎピクルは深い痛みに包まれた。
だが、やはり皮膚は破けない。闘争により鍛えられた鎧のような皮膚だ。
鞭打では直接的なダメージは期待できないようだ。精神的ダメージでKOとかは勘弁な!

「20億年前に始まる蛋白質の突然変異から人類に至る地球上の生物の歴史―――――」
「幾百万もの生物が誕生(うま)れようともッッ」
「皮膚の全てを標的とした――― 鞭的な武器を使用する生物は皆無!!」


烈は鞭打の解説を締めくくる。
これに対し徳川光成は「ちきゅーじょー?」「いくひゃくまんてオマエ…」など、どこか腹の立つツッコミをする
何だこいつは。この歳になって刃牙属性を手に入れようとしているのか?
でも、幾百万に対しては的確なツッコミだ。地球上に生まれた生物は360万〜1億くらいいるらしい。
360万〜1億と開き方が半端ではないが、烈の上げた幾百万では如何せん少なすぎることは間違いない。

しかし、鞭的な武器ってティラノサウルスの尻尾なんかどうなのだろうか
あれも鞭っぽいぞ。どうよ、ピクル!あの痛みを思い出せ!
まぁ、硬かったりして鞭打ほど効率良く皮膚にダメージを与えられないのかもしれないけど。

そんなわけでみっちゃんが何かおかしかったが、烈の解説は終わった。
花山ですら納得しきるほどの解説だった。
…変わったなぁ、花山…
昔の花山だったら解説なんて聞いていそうにない。離れた場所で刃牙を見ていそうだ。
社交性がいつの間にか増している。何があったんだ?他誌まで出向いたせいか?そういえば、ガイア外伝はどうなったんだ?没ったか?

さて、刃牙は今度は鞭打によるハイキックを放つ
これをピクルは腕を上げて受けた。
ピクルが初めて見せるガードだ。
それほどまでに鞭打は脅威だったのだ。
でも、鞭打はどこで受けてもダメージが同じなんだよな。ガードのありがたみが半減だ。

「あのタフマンが ハッキリと防御の態勢を」

「これもまたおそらく――――」
「彼の人生では初の事態でしょう…ッッ」


ピクルは両腕を突き出し刃牙を警戒する。
しかも、ただ棒立ちで突き出すだけじゃなく、腰を落としている。
慣れない防御態勢ながらも、必死に守ろうとしていることが伺える。
鞭打がピクルに大打撃を与えているのは疑いようもないようだ。疑いたいけど。

鞭打は純粋な破壊力では真マッハ突きに劣るかもしれないが、ピクルの弱点を突いている。
相手の弱点をいやらしく攻める…
主人公として如何せん卑屈であることは否めないが、相手はチート原人だ。
これくらいはありかもしれない。…ありかもしれない。

このまま、刃牙は鞭打でピクルを追い詰めていくのだろうか。
しかし、ピクルには鉄壁のタフネスの他に超回復力が備わっている
鞭打の痛みは大きい。大きいがやがては回復しそうだ。
ピクルの肉体に回復不能なくらいの直接的なダメージを与えなければ勝ち目はない。
でも、ファイナルマッハ突きも寝て回復したんだった。…刃牙ならそんな設定を破壊しそうで怖いが。

ピクルを追い詰めた…そう徳川光成は興奮する。
だが、花山はそれを否定する
同時にピクルは両手を地面につける。
この体勢は…もしや…

[刃牙が与えた激痛が―――]
[ピクルの矜持(ほこり)に届いた!!!]


ピクルの本気、ピクルタックルの構えだ!
本来は四足歩行だったピクルの取るナチュラルな構えだ。
やられっぱなしのピクルが取り出したのは強力な武器だった。
ピクルタックルの前には鞭打なんて小細工は通用しない。
刃牙の真価が試されることになる。

ピクルは本当の本気になると闘争のために最適化された構え、白亜紀闘法を取る。
そのため、ピクルタックルは本気と言えど氷山の一角に過ぎない。
ピクルタックルにつまづくようではピクルに勝てないのだ。
そういう意味でも刃牙の真価が試されるのであった。

同じ範馬一族のジャックはマックシングによって、ピクルタックルを受け流した。
刃牙はどうするのだろうか。ピクルタックルに対抗するためには、兎にも角にも筋力が必要となることだろう。
そうなるとここで鬼の貌を出すのだろうか
ピクル…お前が本気なら俺も本気を出さなきゃな…とか偉そうに言って鬼の貌を出す。
出している間に食らって吹き飛んじまえ。主人公だから運ばれても許してやろう。

ここから本気と本気の戦いになるのだろう。
刃牙が負ったダメージは自爆ばかりなのは何とも納得いかないな。
ピクルの攻撃を直接受け止めていないじゃん。
高いところから飛び降りて、これで俺とお前のダメージは五分と五分だ…と言われるようなもんですよ。
あ、そのまんまのことをやっているな。
次回へ続く。


刃牙の取っている行動はセコい。詐欺臭い。でも、合理的ではある。
正面突破では厳しいことは何度も証明されている。
だから、鞭打で回り道、あるいは近道をする。
クレバーな戦い方である反面、主人公としてどうかと思ってしまう。

かといって、愚直に真っ向勝負で勝てるわけがないし、勝たれると今以上に困る。
刃牙はどんな戦い方をしても文句を言われてしまう。
ひどい人徳だなぁ…

じゃあ、どうせなら安全にダメージを与えるために頭を使って戦いますよ。
それが刃牙の選んだ選択だったのだろうか。
理に適っているし、納得のいく展開だ。突破口としては正しい。
でも、何かやるせない。チクショウ!何なんだよ、こいつは!

そんな刃牙の在り方に疑問を抱くと同時に、ピクルのチートっぷりが少しずつ薄れていく。
烈と戦った時に見せた別生物的な迫力はもう存在せず、何か親しみやすい天然ボケ娘になっている。
これが刃牙作用という奴か?
良いのか、悪いのか。

鞭打でピクルをいじめるのは闘争じゃなく拷問だ。
もしも、ピクルがこれで負けたらしたらさぞかし後味が悪い。
俺は誇りを賭けて戦ったら、あいつは卑怯な手ばかり使ってきたんだ!何が文化としての闘争だ!都会なんてクソ食らえだ!
…ピクルに言葉があったらそう告白してもおかしくはない。
って、文化としての闘争はどうしたの?

そんな現状に一石を投じるのがピクルタックルであった。
これには刃牙も正攻法で対抗せざるを得ない。
ピクルが刃牙に突っ込んだら空振る。馬鹿な、奴は一歩も動いていないはずなのに。
馬鹿め、お前が見たのは俺が生み出した妄想、リアルシャドーだ!
…なんてかわし方はしないでもらいたい。

ジャックはピクルタックルを逸らすことで対処した。
が、あれは具体的にどんなことをやったのかさっぱりだ
その辺が消化不良だったことは否めない。
逆に言えば、刃牙が具体的かつ納得のいくピクルタックルへの対処を見せてくれれば、刃牙の株は上がることは間違いない。
ピクルタックルはカス当たりパンチに始まったセコい技合戦に終止符を打つと同時に刃牙の評価を上げる要因にもなり得る!多分。

既存の刃牙の必殺技でピクルタックルを返せるのはあるのだろうか。
例えば、剛体術。…オリバにまったく通じなかった剛体術で、ピクルタックルを返せるとは思えない。没。
例えば、宙返りかかと落としカウンター。…触れたのを感じた瞬間に吹っ飛ぶな。そもそも、カウンターを当てても弾かれそうだ。没。
例えば、0.5秒パンチ。…0.5秒ってレベルじゃない。没。
ダメだ、全然破れねえ…

だが、ここで新必殺技を炸裂させてみてはどうか。
ただニートっていたわけじゃない。ちゃんと資格取得に励んでいたよ!と言わんばかりに必殺技を披露だ。
それが対勇次郎を想定したものなら、場は盛り上がる。
さらに刃牙の株も上がる→生活が充実→心が豊かなので性格も良い→彼女ができる、と相成る。

とりあえず、ピクルタックルはファイナルマッハ突きとマックシング受け流しによって、2度破られている。
これを刃牙が改良してみてはどうか。
受け流すってのは主人公らしくないから、打撃で打ち破ることにしよう。
受け流してばかりだと最終回で刺殺されちゃうぜ。Nice baki.

マッハを出すと自分もダメージを負ってしまうから、音の壁を破らないように1000kmくらいに留めておく。
速度が落ちた分、剛体術の理合を混ぜることで破壊力を補う。
さらにオリバ刑務所で見た地球の核の硬さを打撃に活かす地球アタックの原理も含んでみる。
こうして出来上がったのが9割5分マッハ地球剛体術!
ダメだ、こりゃ。
地球アタックはピクルに当ててみて欲しいとは思うけど。結局、あれはどれほどの威力があったのだろうか。

とにかく、ピクルタックルが刃牙VSピクルのターニングポイントとなるのは間違いない。
ここに至るまで二人とも迷走しすぎた。
文化としての戦いと言いながら、戦いになっていない。
今のところ、刃牙が自殺して、ピクルが技の実験台になっているだけだ。
ピクルタックルのショックで文化としての戦いが開花してくれるのか?
今のところ文化的な部分は烈の解説だけだ。…あと挑発。



サイトTOPに戻る Weekly BAKIのTOPに戻る