範馬刃牙 第197話 堂に入る



烈がボクサーを虚仮にした。
貴様らのいる場所は4000年前に通過している。
そう言わんばかりだ。
サンボよりも前に通過したぞ。
ネタキャラとしては5年先に通過されている!とか言ってあげたらどうだ?
なお、ムエタイは500年先にいる。


「彼ではダメですッッ キケンすぎるッッ」

烈が叫んだ!
淡々と締めくくった前回とは大違いだ。リテイクしやがった。
指をさして麻仁アキオではダメだ、アイアン・マイケルを呼べと猛る。
これはいい挑発だ。日本の文化では相手を馬鹿にする行為だぞ、烈。

武術を甘く見てはいけない。
烈は麻仁アキオに諭す。
忠僕武術とボクシングには大リーグとリトルリーグくらいの差がある
具体的に言えば烈海王とアイアン・マイケルくらいの差だ。
おそらくグルグルパンチをしてもらって初めて互角だ。
…いや、それでも負けるか?

麻仁アキオは怒りもせず烈にグローブを嵌めてやるように言う。
冷静だ。大人だ。
それとももう諦めているのか?
食われることを恐れず、むしろ受け入れる境地だ。
ともあれ、ここまで言われたら烈とて引き下がることは出来ないだろう。

「言うまでもないッ ボクシングと拳法は違う」
「甘く見てるのはおめェの方なんだよッッ」


コーチこと深町元一(46)は忠告する。
深町もボクシングの世界に生きる男の一人だ。
烈の言動には不服があって当然である。
それほど烈は失礼なことを言ったのである。
さすが蛮勇だ。

麻仁アキオは蹴りを使っていいとお返しの挑発する。
義足の人に蹴りを使えというのも無理な話だ。
烈が負った傷を侮辱しているとも言える行為である。
さりげなくひどい。
貴様はボクシングを嘗めたッッと言わんばかりだ。
麻仁アキオの二つ名は「身の程知らず」で決定かな。

これには烈の怒りも有頂天になったのか。
リングに登るのだった。
だが、リングへの登り方がボクサーとは一線を画す。
ロープをジャンプで飛び越えてリングに降り立ったのだ。
片脚しか使えないというのに何という跳躍力とバランス感覚だ。
片脚一本で麻仁アキオの(多分)脚4本分くらいの働きをしてのけた。
右脚が健在なら麻仁アキオの(多分)脚8本分だ。
烈は足で対戦相手を投げられる変態だぞ、OK?

「無論蹴る気はない 蹴る必要もない」
「それでもなおッ あなたではキケンだと云っているッッ」


蹴らずともお前如き雑魚だと挑発した。
挑発合戦だな。
しかし、烈がボクシングのルールを知っていたのは意外だ
てっきり天然ボケ気味に蹴ってくるかと思いきや…

いや、烈は刃牙の保護者だ。
多分、3食用意してあげている。
またカップ麺だと食べて…と甲斐甲斐しく世話を焼いているに違いあるまい。
そんな烈だから刃牙イズムに染まってもおかしくはない。
むしろ、思いっきり染まっちゃって郭海皇に出来ないことも刃牙なら出来る!とか言い出しちゃっていた(第173話)。

だから、反則とわかりつつも蹴ってしまいそうだ。
「そう反則…ボクシングではな」と悪びれず言い放つのだ。
今の烈でもアイアン・マイケルなら倒せるぞ。

麻仁アキオはさっさとグラブを嵌めるように叫ぶ。
もう実力行使で叩きのめす気だ。
何が彼をこんな暴挙に導いたのだろうか。
つい出来心では済まない事態になるぞ。

こうして烈の手にグラブが嵌められた。
これで手にグラブ、足に功夫シューズ。烈の四肢は保護された。
自慢の指技は使えない。
指技を使わずとも強いのが烈だから問題はないか。
いざとなったら突き破る。
貫手…ボクシングでは反則だ。そう…ボクシングではな。

「さきほどあなたは ボクシングと拳法は違うと言われた」
「それは間違いだ」
「拳を使用する以上はボクシングもまた拳法ッッ」


烈は強弁で自分の論を突き通そうとする。
細かなルールの違いを完全に無視した論理である。
裸になる以上はバキSAGAもまたエロ漫画ッッ、と言わんばかりの迫力だ。
思わず納得してしまった。
いや、バキSAGAがエロ漫画であることには納得出来ないけど。

「しかも……… 不完全な」

さらにボクシングダメダメと付け加えた。
久しぶりに他の格闘技を侮辱する蛮勇烈海王の姿を見られた。
「バキ」以降の丸くなった烈もいいが、やはりこうした「グラップラー刃牙」時代の蛮勇烈海王も捨てがたい。
こうした傲慢な態度がツンデレのツンとなり烈を引き立てる。

…って、ちょっと待てや。
ボクシングが不完全なら何をしにここに来ているんだ?
おいおい、刃牙みたいなことをしているんじゃない。
たまには高級料理だけじゃなく、ジャンクフードを食べてみようという心意気なのだろうか。
烈は今すぐ破門を申し渡されても文句を言えないぞ。

あるいはボクシングに中国武術のエッセンスを盛り込み、洗脳しようとしているのだろうか。
ボクシングを越えたレツシングの誕生だ。
新たな流派の創造こそが烈の目指すべきものだった!
とりあえず、髪型は弁髪固定な。
あと足指で人を投げ飛ばせるようになれるまで努力しろ。

ともあれスパーは開始(はじ)まった。
烈は腰を低く落として構える。
ステップを踏みやすくした構えではなく、一撃必殺を狙ったものだ。
明らかにボクシングのフォームではない。

いやいや、烈さんや。
鏡の前で確認していたアレは何だったんだ?
形だけでもボクシングをやる気を感じさせない。
足で拳を作った以上は蹴りもまたパンチッッ、とか言ってやっぱり蹴っちゃうのか?

その構えを見た瞬間、深町と麻仁アキオの表情が凍り付く。
後に深町はボクシング誌のインタビューで「嫌な予感がした」「構えが堂に入っていた」とコメントする。
サンドバッグを破壊した時点で気付くべきだったと思うが、迫り来る危機から目を逸らしてしまうのも人間の性質である。

麻仁アキオは一歩も動かない烈に対し攻めあぐねる。
試合の全てを3分で決めてきた男らしくない姿だ。
でも、一歩も動かないのは遅延行為に入るんじゃないのか?
それはボクシング的にはマイナスだ。
一歩も動かない相手を見たことがないから、麻仁アキオは困っているのかも。

さて、1分半、1ラウンド中の半分が過ぎた。
その時、麻仁アキオの戦略が決まり動き出す。

[“ツー・ワンツー”“いきなり右から” “私も同じ戦略(プラン)でした”]

麻仁アキオが悩んだ挙げ句に選択したものは、牽制抜きで初っぱなから本命打を狙うことだった。
烈は一歩も動いていない。
ならば、奇襲に対応し切れまい。
そんな計算があるのだろうか。
そんな計算だとしたら地雷を踏んじゃったな。

麻仁アキオの右に反応して烈も動き出す。
義足で踏み込んだがために、リングが少し破れた
そんなこと関係ないと言わんばかりに踏み込む。
蛮勇だけあり、機材の破壊には事欠かせない。

そして、烈の右が麻仁アキオの顔面に入る
全体重を前面に委ねた防御を一切考慮していない打撃だ。
これをモロに受けた麻仁アキオの身体は宙に浮く。
サンドバッグを破壊する心構えで烈は打ち込んだことなのだろう。
ボクシングじゃねえ。

[“文句のつけようがありません”
 “とてもボクシングと言えるシロモノじゃありませんでしたが……”]
[“それは間違いで…”]
[“そんなボクシングを私らが知らなかっただけですから……”]


ボクシングにはない一撃だったが、深町にボクシングと認められた。
レツシングへの洗脳は順調に進んでいるようだ。

この調子でジムのみんなにレツシングを布教していくのか?
きっと「1日1回は14リットルの砂糖水を飲む」「減量は毒手で行う」「中国武術万歳」「ラブプラスでは凛子一択」など、独特の決まり事がある。
最終的には全員中国武術に移籍することで全ては完成する。
今の烈は営業だってこなす!
そうでもなきゃ何のためにボクシングジムにやってきたんだよと。

麻仁アキオを一蹴した。
それは誰もが予測していた出来事だ。
だが、問題はこれからだ。
ボクシングを習い始めた烈の真意が未だに見えない。
ボクシングをやっていないけど。明らかに蹴りを封印して戦っているだけだけど。

烈が再び前線に立つ時が来るのだろうか。
あの烈がボクシングで戦う!
やっていることは中国武術だけど、ボクシング!
アイアン・マイケルとのボクサー対決になれば大盛り上がりだろうな。
ネタ的な意味で。
次回へ続く。


麻仁アキオ、敗れる。
大舞台を前にこの敗北は痛い。
スランプになったらどうしてくれるんだ。

いや、そこで烈が麻仁アキオにレツシングを教えるのかも。
昨日の敵は今日の友。
中国武術のエッセンスを盛り込んで麻仁アキオは進化する!
空気弾を教えられて反則負けしちゃいそうで怖いな。

ともあれ、烈の拳技は豊富だ。
これをボクシングに活かしては…と思ったが、烈は指の使い方が豊富なんだよな。
ただ拳を握るだけではなく、状況と用途に応じた様々な形を取る。
これはボクシングにはない要素だ。
…何でボクシングに目を付けたんだろう、烈は。

ボクシングにあって中国武術にないものは何なんだろう。
軽快なステップ?
烈がその気になれば水の上を走れるから、やろうと思えばいくらでも…
多種多様なパンチ?
中国武術ならそれくらい余裕で持っているだろう…
判定勝ち狙いの立ち回り?
ノールールがバキ世界の基本だから意味がない…
うーむ、いくら考えてもさっぱりわからん。

せめて烈が実力者と戦えばボクシングの可能性がわかりそうなものだ。
だが、実力者であるJr.は地の底へと沈んでいった。
今出てきても烈に金的を食らって終わってしまう。
ここでユリーを出してみるか?
アイツは蹴るぞ!
でも、ロシア系なのが良くないな。
やはり、我々にはアイアン・マイケルしか残されていないようだ。

それにしても今回の「拳を使用する以上はボクシングもまた拳法ッッ」は名言だ。
何にだって使えます。
強弁を振るいたい時には非常に便利だ。

「海王を名乗った以上はムエタイもまた拳法ッッ」
「リアルにシャドーする以上はリアルシャドーもまた実戦ッッ」
「宇宙世紀である以上はユニコーンガンダムもまた正史ッッ」
「PS3を活用する以上はtorneもまたゲームッッ」
「それほどでもない以上はブロントさんもまた謙虚ッッ」
「強さこそ力である以上は力もまたパワーッッ」

有無を言わせぬパワーを身に付けたい時は意識的に使ってみては如何でしょうか。



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