範馬刃牙 第234話 千春イズム 



本格的な千春いじめが始まった。
対手は徹底的に潰す。それも屈辱的に潰す。
範馬家の家訓なのだろうか。
嫌な家訓だが範馬家なら仕方ないか。
そして、そんな範馬に関わった千春は己の不幸と花山を恨んでも恨みきれまい。


千春の蹴りを刃牙は顔面で受け止めた。
千春の脚は折れ大ダメージを負った。
では、刃牙はどうか。どうせ平然としているんだろうな。
何て思っていたら吹っ飛んでいた。
あ、ダメージ受けてた。千春よりは軽いけど。

「スゲェな千春さん」
「チハル流でもって――」
「蹴とばしたアンタを フッ飛ばせると思ってたンだけど――」
「千春さんの攻撃はいつも予測を上回る」

褒めるかと思いきや千春を過小評価していたことを露わにする刃牙だった。
こいつは千春を褒めたいのか、貶したいのか、どちらなのだろうか。
とりあえず、虚仮にしたいのはよくわかった。

刃牙としては顔面をぶつけて、千春を吹き飛ばすつもりだったらしい。
一体どういう原理だよ。
もちろん、千春が同じことをしても相手を吹き飛ばすことはできない。
千春流を拡大解釈しすぎじゃないか?
まぁ、刃牙にとっての千春流は千春を虚仮にするための手段だから問題ないんだろうけど。

「闘志天翔………………」
「気持ち一つで駆け上がれる高み 境地――――」
「アナタひとりで押し上げているかのようだ」

無闇に褒めて千春を持ち上げる刃牙だった。
高く掲げれば掲げるほど落ちた時のダメージは増す。
それが刃牙の狙いなのだろうか。
雑巾を一番貶める方法は雑巾を飾ることだ。
いいぜ。てめえが何でも千春通りにできるってなら、まずはそのふざけた闘志をぶち壊す!

さて、ここから千春流に対する解説が始まる。
実に7ページだ。
7ページに渡って千春流の解説を行っている。
もう少しで今年が終わろうというのに、千春流の解説だ。
作者まで千春を持ち上げてどうする。

千春流とは正式な名前や流儀があるわけではない。
当然だ。
だって、刃牙が勝手に名付けたんだから。
連載十年以上経過して、つい最近やっと名付けられたほどだ。

そんな千春流は気合いや根性だけで戦うものだ。
こうして畑中を倒し、アイアン・マイケルとの激闘を制し、ナナハン食らってもだったらイケるぜ。
それを踏まえると刃牙のやっている千春流は本家とは全然違う。
刃牙のは化け物じみたフィジカルで千春の攻撃を潰しているだけだ。
根性だけで戦う本家千春流とは似ているようでまるで違う。
侵略!イカ娘と戦慄!タコ少女くらい違う。

さらに千春の十八番、顔面を用いた頭突きも紹介される。
急所が無数に存在する顔面をあえて叩きつける!
本部が千春の試合を見ていたら、この辺を詳細に語ってくれたに違いあるまい。
小僧が叩きつけた顔面…あの部位には人体が抱える急所が無数にあるわい。それを叩きつけるとは…
なんて驚いてくれる。
そういえば、本部さんは今どこで何をしているんだろう。

そんな自己犠牲と自己破壊の精神は不良たちには絶大な支持を得ているようだ。
でも、チャンピオンに掲載されている不良漫画はどれも根性とかあまり出さないよね。
ナンバデッドエンドくらいだ。シュガーレスもクローバーもクールというか、パンチ一発で終わらせる感じである。
そんなご時世で根性丸出しの千春が支持されるのか?
いや、特攻の拓のスピンオフが掲載されるという話らしいからイケるかも。

10人はくだらないとされる千春の一の子分(自称)、トモジは語る。
10人はくだらないという微妙な規模の小ささが千春の何たるかを物語っている気がしなくもない)
千春が東京にマラソンに出たとする。おそらくは当日まで練習はしない。
だが、マラソンは根性のスポーツだから千春が勝つ!
…上も馬鹿なら下も馬鹿なのか?

ともあれ、それほど千春の根性は信頼されていた。
それだけの根性の持ち主だった。
凄いぞ、千春。偉いぞ、千春。
外伝で情けない姿を晒したけど、やればできる子だったんだ!

[そのカリスマが今 あられもなく動揺している]

全ッ然ッダメじゃん!
7ページに渡って持ち上げたのに、たった一言のコメントで墜落したよ!
作者まで千春を叩きつけてどうするんだよ。
そして、千春がカリスマを持っていることも、急造の事実なので感情移入する暇もない。
そんな張りぼてだから、刃牙に容易く砕かれてしまうのかもしれない。

「千春さん」
「止めにしないか…」


だが、ここで刃牙は言ってはならないことを口にした。
勝ちを相手に哀願する行為ほど危険なモノはない。
天内悠は勇次郎に手刀を食らい、オリバは刃牙に逆転されてしまった。
百戦錬磨の刃牙らしくない失態だ。OSRダダ下がりですよ。

叩き潰せるのなら、黙って叩き潰す。
非情だがそれがバキ世界の掟だ。
手加減せずに金玉を蹴り潰す鉄の意志が勝利を支えるのだ。
刃牙はそうやって勝ってきた。
外道にもほどがある。

[戦局の悪さにではなく]
[破壊(こわ)れた拳にではなく]
[粉砕(くだ)かれた脚にではなく]
[自らが立てた 次なる戦略にッッッ]


刃牙のミスで風向きは変わった。
千春が狼狽している理由は、ダメージではなく自分のこれからの行為にだった。
今の千春は断己相殺拳の覚悟で挑みかかる気なのだろうか。
でも、特攻しても千春は千春だからなー。
あ、ナナハン持ってくれば、だったらイケるぜ!刃牙並みの外道になるけどな!

「受けきってみな」

千春は左手の中指と人差し指を立てて構える。
必殺の目潰しを行う気だ。
目潰しの必殺性の高さは言うまでもない。
下手すれば金的以上に強力で強烈だ。

だが、目潰しほど不発に終わった攻撃がないのも事実だ。
目潰しを食らったのは夜叉猿とイスタス、あとシコルスキーくらいではないだろうか。
あの独歩でさえ目潰しは成功していない。
加藤なんて事あるごとに目潰しをしては失敗して、失敗率100%達成だ。

だが、今、刃牙は千春流を敢行している。
ならば、目で受けるより他ない!
…いや、どうなるのかな…そうなるのかな…
何だかわからんがとにかく良し!

[二人共が――]
[二人共に]
[追い詰められていた]


「外すなよ…」

千春の危険な覚悟を刃牙は受け止めた。
お、ちょっと格好いいぞ。
こいつ、本当に刃牙か?

受ける刃牙はもちろん、これを実行する千春にかかるプレッシャーも相当のものだろう。
稀代の闘士、刃牙は再起不能にするかもしれないのだ。
だからこそ、追い詰められている。
そして、刃牙が反撃に至った時のダメージも相当のものだろう。
おそらくは目を潰されても反撃する。多分、千春は死ぬ。
無明逆剛体術だ。

ただ、刃牙のことだ。
受けると見せかけて、かわして怒濤の刃牙ラッシュで反撃するかもしれない。
だって、刃牙だし。外道だし。
言うこととやることが違うくらい当たり前だ。

ともあれ、千春は必殺の覚悟と構えを見せた。
刃牙の圧倒的な優位が突き崩されるかもしれない。
初めて千春が刃牙の脅威となったのだ。
無論、刃牙が千春流を遵守する限りの話なのだが。
これで大きな動きが生まれるかもしれない。
次回へ続く。


千春弄りはまだまだ終わらない。
根性とかそういうのではなく、もはやM気質を開眼させているようにしか見えないな。
刃牙と関わったのが全ての失敗だろうか。
巨凶とはまさにこのことだ。

千春は千春流の逆転を突こうとしている。
弱点で受けるのなら、急所を狙う攻撃をやれば無敵じゃね?理論だ。
ある意味、墓穴を掘っているが、対応としては間違っていない。
ただ相手が協力してくれることが前提なんだよな。
そして、刃牙は裏切ることには定評がある。特に読者の期待には。
…唯一と言ってもいい勝機を手にしたはずなのに、千春には明るい未来が見えない。

しかし、それなら金的を狙ってもいいのに。
渾身の千春アッパーが刃牙の股間を狙う!
刃牙も股間で剛体術をして対抗…
ごめん、なしで。

さすがの刃牙も目潰しを食らえば困るだろう。
それとも盲目になることで新たな境地を目指しちゃうか。
失うことから全ては始まるのだ。
そのためにもまずは梢江を失え。

千春の覚悟と刃牙の覚悟。
どちらが上回るかの勝負だ。
千春がビビって目潰しをやめれば刃牙に殴られる。刃牙がビビれば千春は嘲笑する。
お互いに意地を張れば刃牙の目は潰され、千春はそこから刃牙に殴られて死ぬ。
うーん…悲惨な未来しか見えないな…

でも、チキンランみたいだ。
駆け引きも何もない。
駆け引きの域に踏み込めば千春がバラバラになるから、これくらいがいいか?

心を責めるならここで刃牙が土下座をしてみるとか。
まさかの命恋(いのちごい)だ。
全裸で土下座すれば千春の心だって折れるぞ。
街道で全裸になろうが刃牙なら一向に構わん。

そういえば、バキどもえでは刃牙はうんこと戦っていた。
それに習って刃牙もうんこになってみてはどうか。
いきなり、うんこになった!
これに手を突っ込むのは汚い!
と、千春は手を出すのを止める。その隙に殴る!

まぁ、刃牙なら予想外にして非道な答えを選択するに違いあるまい。
君が泣くまで殴るのを止めないとはよくぞ言ったものだ。
刃牙流なら泣いても殴るのを止めないし、金玉だって潰れるまで殴る。

それにしてももう少しで2010年が終わるのに、なかなか話が進まない。
今年中には第2回最大トーナメントが始まると思ったら、まったく始まる予感がない。
この調子なら再来年に開催かな。
…徳川光成の寿命が心配だ。



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