範馬刃牙 第262話 大炎上



大観衆が親子喧嘩に駆けつけた!
まぁ、勇次郎は生ける伝説そのものだ。
ある意味、バキ世界の誰よりも有名かもしれない。
本部よりは知名度が上だな。

刃牙は……ローカルでは相当な有名人かもしれないが、良くない噂の方が多そうだ。
妖怪松本梢江と付き合っているとか。
魔獣の方がいいか?


[突如眼前に現れた想定外………]
[どれほどの数か想像もつかぬ程の大観衆……………]
[緻密な頭脳を持つ勇次郎をして]
[あまりにも予想外の出来事だった]


勇次郎だって驚く。誰だって驚く。
ムエタイ戦士なら逃げ出しかねないくらいだ。
まさか、息子と一人きりの戦いだったはずこんなことに……
親子仲睦まじい時間に水を差された心持ちなのだろう。
やたらと勇次郎、嬉しがっていたし楽しがっていた。

「誰が集めやがったッッ」

ストレートにキレる勇次郎だった。
たまに勇次郎はこういう可愛い一面を見せるから困る。
さすが、地上最強。
自分の落とし所もわかっていらっしゃる。
これならアイドルのマスターになれるぞ。

落雷事件の時も誰が撮りやがったッッとTVの前でキレていたのかもしれない。
勇次郎は注目を浴びることは考えていないが、注目を浴びることに躊躇しない。
元々、とんでもなく目立つ体質だから、結果としてとんでもない注目を集めてしまう。
結果、こんなことになってしまって困る。
力を持つ者は自分がどれだけの力を持っているのか、無自覚なものだ。
これは強すぎ大きすぎることが生み出した悲劇であり喜劇なのかもしれない。
……喜劇だろう。うん。

今時、勇次郎公式ブログや公式ツイッターがサブタイトル通りに炎上していたりして。
管理人のストライダムは大焦りだ。
いや、そんなものがあるのかは知らないけど。
でも、欲しいな、勇次郎公式ブログ。
今日は息子と飯を食ったとか。

勇次郎とて観衆の前で戦うのは初めてではない。
地下闘技場で戦っていた時期もあったようだし、公式の大会では大擂台賽に出場した。
むしろ、観客にアピールするのが得意なくらいではないだろうか。
特に格闘家の壊し方は芸術的だ。
バラエティとユーモアに富んだ壊し方をする。
刃牙、アンタも少しは見習え。

でも、馴染まない。
勇次郎は褒められると逆に気乗りしなくなるタイプなのだろうか。
当たり前のことだが扱いが難しそうだ。
ストライダムはそんな勇次郎と付き合っているのだから大したものだ。
年に1回は殺しに来いと言われてそれを守った上で、勇次郎を満足させているからなおさらだ。
ストライダムがこの場にいれば勇次郎を乗り気にさせられたかもしれない。

勇次郎はトイレから飛び降りて、刃牙と向かい合う。
ギャラリーはさらに沸き上がる。

「おい」
「帰ェるぞ」
「今日は止めだ」

勇次郎が闘争中止を申し出た!
戦うことが三度の飯よりも、酸素よりも好きな勇次郎が……!
それほど観衆に驚いたということだし、何よりも刃牙との戦いが特別なものであったことが伺える。
親父が俺に帰ると囁いている。

だが、刃牙の答えはNOだった。
NOと言える日本人、刃牙であった。
いや、これでじゃあ帰るかだったら別の意味で伝説になれるが。
一気に刃牙のフォロワーが減っちゃうよ。
でも、刃牙ならじゃあ帰ろうと言っても不思議じゃないのが怖いところだ。

「言い方が違うぜ親父」
「人前で不覚を取るのは恥ずかしい」
「ここはひとつ引いてはもらえないだろうか」
「…じゃね?」


範馬刃牙、ここに来て挑発である。
ゴキブリダッシュが破られたというのにこの態度のデカさだ。
学習能力がないというか、自分を顧みないというか、何かもうブレーキ外しましたみたいな感じだ。
いや、もうブレーキ壊れちゃっているか?
270kmも出ているからブレーキがないと不味いぞ。

勇次郎の髪は逆立つ。
同時に刃牙は身体を緩める。
そして、ゴキブリダッシュからの三連撃だ!
観客が現れて調子に乗ったのか、問答無用の270kmの不意打ちであった。
僅かな時間の弛緩できていることから、ゴキブリダッシュの精度が上がってきていることが伺える。

まずは刃牙の得意技、顎を狙ったストレートだ。
ピクルの時のようにカスってはいないが、270kmのトップスピードからの一撃である。
その破壊力は相当のものだろう。
これが勇次郎の棒立ちに直撃する。

矢継ぎ早に左廻し蹴りで太腿を攻める。
上段から下段へと一気に切り替える反応しがたい連携だ。
並みの格闘家なら最初のパンチの時点でアウトだ。
少なくともJr.レベルならそこで気絶。

だが、刃牙ラッシュは終わらない。
さらに得意技のハイキックで勇次郎の顔面を蹴る。
ゴキブリダッシュによってその威力はさらに上がっていることだろう。
アイアン・マイケルでさえ一発KOしかねない威力であることは想像に難くない。
先の廻し蹴りと合わせて、対角線の攻撃で対処しにくい連携が完成した。

この三連撃はギャラリーの目に捉えることができなかった。
精々目に映ったのは三連撃を終え、後ろに下がった瞬間のみである。
まさにヤムチャ視点だ。
でも、見ている側からすればあんまり面白くないんだろうな。
……もしかして、勇次郎が渋った理由はこれだったりして。

正面からのゴキブリダッシュは勇次郎の力によって破られた。
だが、スピードそのものは未だに有用性を保てている。
だから、今度はゴキブリダッシュのスピードを生かしたコンビネーションに切り替えた。
より実戦的なゴキブリダッシュの用法を行っている。
ついに親子喧嘩から闘争にシフトしたか?

三連撃を命中させた刃牙だったが、手と足にしびれを感じていた。
勇次郎は直立不動のまま、動かない。
殴った方がむしろダメージを負うという理不尽だが、刃牙の闘争心は萎えていない。
いつにも増して不敵だ。
観客の前だから張り切っているのかもしれない。

梢江もいたらもっとやる気出していたかも。
でも、梢江がいると観客のやる気が萎えそうだ。
そうなると観客が減って刃牙も萎えるかもしれない。
観客と梢江、大切なのは梢江だけど、好きなのは観客です。

ゴキブリダッシュで接近、その勢いを利用して打撃、そしてゴキブリダッシュで離脱……
完璧なヒットアンドアウェイだ。
接近を捉えることも離脱を抑えることも難しい。
また、パワーでは勇次郎にかなわないと知っているから、スピードで勝負に出た。
まさしくゴキブリダッシュは対勇次郎兵器だ。
……ゴキブリだけど。

勇次郎はゴキブリラッシュの前に不動だがダメージはあるのだろうか。
これで立ったまま気絶していれば、刃牙は集団リンチも覚悟しなければならない。
伝説から記事になるぞ。
次回へ続く。



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