範馬刃牙 第264話 激 



観客も集まって親子喧嘩は本番に移行した。
散々、手を抜いていた刃牙だって、ゴキブリダッシュからのコンビネーションを用いた。
しかも、不意打ちの形で……
ここまでやったからには闘争の領域に踏み込んでいるんじゃなイカ?


日本人でありながら中国拳法家として名を馳せる澤井健一は以下のような言葉を残しているとか。

“野球の投手が投げるような柔らかさと手の振りで
 相手の顔を正面から打ったなら大変な攻撃となる”
“目も鼻も一度に打たれて相手が見えなくなるほど涙が出るだろう”


そんなわけで勇次郎の張り手を正面から受けた刃牙も泣いた!
あの刃牙が涙を……流すのはけっこうあることか。
でも、鞭打では泣かなかったのに。
澤井健一氏の言葉の通りに打たれた部位が問題となるのだろうか。

打たれた刃牙は飛ぶ。
まるでボールを投げるかのように飛ぶ。
飛んだ刃牙は観客の真上に落ちる。
観客がいるからといって遠慮する気はまったくないらしい。
これでこそ範馬勇次郎だ。

そして、観客を意に介することなく、刃牙に近付く勇次郎であった。
あっという間に刃牙が下敷きにしていた観客は散っていく。
ここだけ見ると刃牙の人望が絶無に見える不思議だ。
観客の注目は勇次郎にだけあるようだから、案外間違っていないか?

やられているばかりの刃牙ではない。
ダウンの状態からノーモーションで跳ね上がり反撃しようとする。
これもゴキブリダッシュ理論なのか?
泣きながら反撃しようとするその姿は父親にだだをこねる子供の姿にそっくりだ。

ともあれ、闘争心は萎えていない。
うむ、主人公らしいぞ。
刃牙から主人公を取ったら何が残るんだろう。
そう考えると悲惨なことになりそうなので、考えることを止めた。

それに対して再び真正面からの張り手で返す勇次郎だった。
今度は地面に叩きつける。
観客というクッションがないことからダメージが倍増していることだろう。
反撃したらカウンターされていたでござると突然の出来事であったが、刃牙はきちんと受け身を取っている。
さすがは範馬刃牙?

刃牙は顔面全体に痛みを感じ涙を流している。
打たれている部位が部位だけに鞭打より辛い攻撃なのかもしれない。
それともこれも鞭打だったりして。
力任せなだけではなく嫌らしい打撃だ。
サドな勇次郎らしい。

それでも刃牙は戦うことを諦めない。
振り向き様にアッパーを放つ。
身体を捻りに捻ったアッパーだ。
捻りすぎて足が地に着いていない。
……踏ん張れないぞ?

だが、それさえも真正面張り手で切って落とす勇次郎であった。
筋力も瞬発力も段違いだ。
こうして見ると刃牙が勇次郎に次ぐ実力者というのがどうにも信じられない。
フリーザとその幹部並みの差だ。

[恋して… 恋して…]
[恋焦がれて……]
[育て…… 育み……]
[そして……]
[今日なんだなァ…]
[フフ……]
[チョッピリ妬けるぜ…]


ポエミィな感想を述べる独歩であった。
増援の格闘家はまだいない。
本部がいたら勇次郎の張り手について解説できたのに。
もったいない。

勇次郎と刃牙の関係で特徴的なのは、勇次郎が刃牙を育てたということだ。
とはいえ、育てるというほど育てていないのだが、敵となる存在の成長に自らが多分に関与したのは事実である。
それだけに特別な存在だ。恋しちゃってるよ、YOU。
そんな特別な相手との戦い……格闘家なら誰しも夢見るシチュエーションなのかもしれない。

しかし、現実は厳しげだ。
何せ刃牙は本気になったのにこの差である。
アクセル全開で離されるようじゃどうしようもない。
技術面だって勇次郎の方が上だろう。
どの要素も良くて五分だ。駆け引きだって勇次郎の方が上手いだろう。
今から精神と時の部屋に駆け込んでみるか?

[打撃による生体反応か]
[己の無力への落胆か………]
[夥しい涙にまみれ……]
[少年は静かに決意するしかなかった]
[親子喧嘩どころではない]
[格闘(たたか)わねば…]


倒れたまま、刃牙は静かに、力強く拳を握る。
本気を出すことを決意した。
って、アンタ今まで本気じゃなかったのかよ!?
270kmのタックルをぶちかまして、その速度で不意打ち3連撃を喰らわせた人間の言うことじゃない。
刃牙は実力を隠していたのか!
……なんて思えるはずもなく、お前は何を言っているんだ?と頭に浮かぶばかりである。
いつものことですね、わかります。

どうみてもゴキブリダッシュを解禁したあたりから刃牙は本気だった。
あそこまでやっておいて本気じゃなかったなんて、恐ろしいまでのスケールの大きさだ。
でも、刃牙はその気になればどこまでも強くなっていく。
そこが強みであり嫌みでもあり、刃牙の人気を下落させている要因なんだろうな。
次回へ続く。


勇次郎の張り手で全刃牙が泣いた。
破壊力を支える筋力もさることながら、刃牙の心を折る部位のセレクトが上手い。
生意気な口を叩かれたからその仕返しに顔面を責めたのだろうか。
とりあえず、泣かす!
勇次郎の決意が伝わってくる張り手だった。

勇次郎の攻撃はダメージ以上に観客へのアピールが凄い。
まず、音だ。
壮絶な音に観客が驚いている描写がある。
次に飛距離。
刃牙は何メートルも飛んで大変見栄えがいい。
地デジ画質で見てみたいほどの迫力がありそうだ。

そして、一番は涙だ。
刃牙を泣かせている。これはデカい。
こちらの戦力をアピールすると同時に刃牙を辱めている。
勇次郎の緻密な戦略レベルの立ち回りが伺える。

その甲斐あって大衆の目からは刃牙は泣いているだけの存在だ。
ゴキブリコンビネーションは目にも止まらなかったのでノーカウント。
無力感が漂う。
対する勇次郎は張り手で大暴れだ。
とりあえず、観客を味方に付けたのは勇次郎で間違いないな。

刃牙は勇次郎に反撃を試みているが、全てノーモーションで返されている。
スピードで負けていますよ。
刃牙の突破口になるかもしれないファクターだったのに……
でも、勇次郎は瞬間移動を頻用しているから、スピードで負けるのは必然かも。

次回から刃牙は本気になる。……らしい。
でも、いきなり本気になるような男なら、今回も最初から本気になっている。
とりあえず、回想かな。
初めて本気になった時のことを回想する。具体的には100人不良戦あたり。
あとはそれっぽい解説を交えてもいいかもしれない。
そうやって刃牙の本気を最低でも8ページくらいは盛り立てれば何とかなるかもしれない。

ただ本気になった刃牙が勇次郎に勝てるビジョンがまったく思い浮かばない。
勇次郎だって本気ではないだろう。
底を隠しているのはお互い様である以上、現状で刃牙を圧倒している勇次郎に分があるというものだ。
刃牙のことだから本気を出した瞬間に圧倒し初めてもおかしくはないのが嫌なところだが。
ピクルの時みたいに。

勇次郎は拳を握らずに圧倒した。
それに対して、刃牙は拳を握った。
何とも象徴的だ。
握った程度でどうにかなるとも思えないし、勇次郎も握ったら終わっちゃう。
どうすればいいんだか。ベガスに助けを求めるか?
烈とボルトの試合をいきなり流して、それが終わる頃には状況が変わっているかもしれないぞ。

ここで独歩が刃牙が冷静(さめ)ちまったと言ってみればどうよ。
懐かしの末堂の危険度が一番高まる時ネタだ。
末堂の危険度が高まっても何てことないだろうが、刃牙の危険度が高まればそれはもうヤバい。
チャンピオンで掲載できなくなってヤングチャンピオンに移籍するほどだ。
勇次郎に対抗できるかもよ。
んー、でも、ヤバい時の刃牙って冷めるというよりも狂ってると言った方が正しい。
末堂はダメか。

刃牙は勇次郎と違って戦うことで絆を育んできた。
それを考慮すると今まで戦い友情を育んだ仲間たちを集めて、勇次郎に挑むってのはどうだ?
ものすごい少年漫画的なシチュエーションだ。
みんなの力を合わせて、勇次郎を打ち破れ!
格闘漫画的には最悪なのが難点。

でも、幼年期に応援しに来た人たちはみんなボコられたな。
みんなそのことを思い出して応援に来ていなかったりして。
独歩も刃牙より勇次郎目当て臭いからなぁ……
観客は無数。味方は皆無。
刃牙に嫌なキャッチコピーがつきそうなので、本部でも誰でもいいので観客に来てください。お願いします。梢江は家でテスト勉強してろ。



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