範馬刃牙 第271話 引き金(トリガー) 



刃牙の0.5秒パンチが勇次郎に決まった!
しかも、鬼の貌を出した勇次郎に対してだ。
鬼の反射神経を凌駕するパンチであった。
ゴキブリダッシュを使ったコンビネーション3撃よりも効果を発揮していると言えよう(第262話)。
ゴキブリダッシュは破られたけど、トリケラトプス拳は押し出すことに成功し、速度が通用しないと思われた中で0.5秒パンチは通った。
適材適所が大事だとはわかっているが、何が強くて何が弱いのかわからなくなってくる。


0.5秒パンチを受けた勇次郎は呆然とした表情で崩れ落ちる。
このまま、ダウンか?
と思いきや、意識を取り戻して踏みこたえる。
いきなりやったことだから多少無様な形になっている。
それでも力強さを感じさせるのは勇次郎マジックか。

勇次郎の鼻が地面についている。
顔全体がついちゃったわけじゃないけど、勇次郎が地面に顔をつけるなんて珍しい。
むしろ、初めてじゃないか?

「ち………」
「こいつァいつ以来のダウンだ……?」


勇次郎がダウン判定を下した!
鼻だけとはいえ顔を地面につけている。
勇次郎としてはダウンなのだろう。

出血したのはいつ以来だといい、こんな台詞を言える格闘家はなかなかいない。
勇次郎の大きさというか無敗っぷりがよくわかるというものだ。
でも、郭海皇との戦いでダウンしたような……
あれはスリップ気味だからなかった判定なのか?

周囲の人間は何が起こったのか把握できていない。
多くの試合を見てきた徳川光成でさえ戸惑っている。
ダウンというよりもつまづいたようにしか見えていないようだ。
その中で独歩だけが刃牙の0.5秒パンチの正体に勘付いていた。

[間合いを詰める両雄――― 先に動いたのは………]
[結果だけ見ると 刃牙ということになるが…]
[しかし…… 実体は違うッッ]
[“脳の起こり”]
[武における仕掛けの初動]
[すなわち“起こり”]
[脳の命令があり動作が始まる―――という常識は間違いだ]
[脳は命令の0.5秒前に信号を発している]
[脳が信号を発して―― 肉体に命令を下すまで0.5秒]
[その0.5秒間はなんと本人は無自覚! 例外なく]
[仕掛けられても反応できない]

独歩の解説をまとめてご紹介だ。
うむ、相変わらず意味がワカラン。

動くまでの0.5秒を掴めばそこに好きに攻撃を加えられるというのが板垣理論だ。
ただ、ここでひとつの問題が生じる。
まずはそれなら0.5秒以内に相手に到達する攻撃は全てヒットしてしまう。
かわせ、防御しろという命令にも0.5秒を必要とするのだから、そうなるのは道理だ。
また、攻撃する側も0.5秒のラグがあるため、結局はイーブンになってしまう。
こちらを採用すると前者はそもそも成り立たない。
そもそもが矛盾しているのだ。

ユーザーイリュージョンで語られた内容は「脳が命令する0.5秒前に肉体は既に動いている」というものであり、
決して「脳が命令してから肉体が動くまで0.5秒間のラグがある」というものではない。
(バキの解釈が後者なのかはよくわからんのですが。解説がよくわからん)
その辺の理解がかなりごちゃ混ぜになって実によくわからんことになっている。
そもそも戦いのほとんどが無意識下で行われる。自然に身体が動いたって感じだ。
無意識に動くのならラグも0.5秒のラグも関係ないのだ。

まぁ、0.5秒は絶対の壁なのである。
その領域に達した刃牙に独歩は歯がみする。
この天才め……!
独歩がこんな嫉妬めいた感情を露わにするとこの0.5秒パンチの偉大さがわかるというものだ。
本部なんかが嫉妬しても別にふーんで終わっちゃう。

ついでに解説の中で独歩は久我重明らしき人物と立ち会っている。
ちょっとしたドリームマッチだ。
ゲーム版餓狼伝では勇次郎がゲスト出演していたし、最近は秋田書店が餓狼伝を刊行するようになった。
二つの作品が本当にぶつかる時がいつか来るのかもしれない。いや、どうだろう。

「貴様がこの引き出しを持っていたとはなッッ」

勇次郎は刃牙を最高の玩具と認めた。
その上で0.5秒パンチを持っていたことは予想外であった。
って、オリバに教えてもらっていないのかよ。
オリバは勇次郎に力負けしたのが悔しくて教えなかったのか?

刃牙は思わずなのか、「ゴメンね殴って」とか言っている。
こいつ……何言っているんだ……
とんでもなくハイレベルなやり取りである。

0.5秒の空白を刃牙は手にしていた。
勇次郎が驚き評価するほどのものだった。
って、それならゴキブリダッシュとかトリケラトプス拳せずに0.5秒パンチを鍛え上げろよな。
とことんややこしい奴だ。
だから、最近になって解説が妙に増えているんだよ!

「よくやった」
「撫でてやる」
「きなさい」


ここで何故か勇次郎が刃牙を撫でてやると言った!
〜〜〜〜ッッ。
この親子、理解不能!
インキュベーターどころか人類にさえわけがわからないよ。

この提案を持ちかけた勇次郎の髪は逆立っていない。
顔も心なしか優しげで腹に一物はなさそうだ。
まぁ、だからといって頭を差し出せばジャガられる可能性だってある。

「喧嘩だぜッッ」

「息子の手柄を誉めるのは当然だろう」

喧嘩だぜって0.5秒パンチを謝罪したアンタが言うことじゃないのだが……
ともあれ勇次郎は刃牙を誉めようとしている。
あのダメ出ししかしていなかった勇次郎がだ。
最近はわりと軟化しているけれど、ここまでストレートな感情を見せたのは初めてだ。

こんな勇次郎を見て刃牙は……泣いた。
普通に泣いた。
涙がこぼれ落ちてしまった。

(これっていったい 何なんだ!!?)

こぼれ落ちる涙に刃牙は困惑する。
刃牙の人生は勇次郎に挑むために存在した。
そのために刃牙は研鑽を重ねてきたが、確たる賞賛を勇次郎からもらったことはなかった。
だが、今こうして誉めてもらえた。
……泣くよな。そりゃ泣く。

0.5秒のトンデモ解説に撫でてやるというトンデモ展開だったが、刃牙の人生と心情を思うとどこか物悲しい。
次回、刃牙はどうするのだろうか。
抗うか? 従うか?
でも、涙につられるまま、頭を差し出すとやっぱりジャガられるんだろうな。
次回へ続く。


0.5秒理論復活!
相変わらず、意味がわからん。
板垣生物学はいつでも絶好調だぞ。

0.5秒の隙が生まれるとしても、攻撃側にだってそれは生まれるだろうからイーブンだ。
それを踏まえて前もって動き出しておくか?
でも、それなら防御側だって……となってどうも堂々巡りだ。
刃牙が0.5秒の隙を突けているのはどんな理屈からなのか。
それがわからない話にならんな。

ゴキブリダッシュは時速270km。秒速75m。
つまり、0.5秒で37.5m進める。
そんなに距離は離れていないから接近の後に殴るのも余裕だ。
ゴキブリダッシュを使えば自然と0.5秒の隙を突けるはずなのだが……
うーむ、やっぱりよくわからん。
0.5秒理論を持ち出すとその他多くの駆け引きが破綻してしまうのが問題だ。

0.5秒理論は置いておく。
勇次郎は刃牙を誉めてあげる気だ。
青天の霹靂とはこのことだ。
そりゃ刃牙だって泣くよ。

勇次郎は超親馬鹿で有名だが、刃牙だってファザコンだ。
だからこそ、勇次郎に誉められるのは嬉しいのだろう。
それこそ泣いてしまうほどに。
今までの人生が報われる勢いだ。

それだけに悲しくもある。
刃牙はもっとも誉めて欲しい人間から誉めてもらえない人生が18年続いたのだ。
だから、最近の態度の軟化した勇次郎といることが嬉しくも楽しくもあったのだろう。
そして、認めてもらえたことで溜め続けていた想いがこみ上げ……
そう思うとむしろ悲しいものだ。

漂う悲哀の中、刃牙は如何にするのか。
突っぱねて0.5秒パンチ再びか?
それとも釣られて撫でられるか?
どっちにしろ地獄のような……

しかし、何と言うか戦闘と無関係な部分で一喜一憂する戦いである。
何かスゴイことをやる、それを解説する、何かスゴイことをやる、それを解説する、の繰り返しだ。
戦いというよりも芸の見せ合いだな。
これは芸を見せるのが得意な範馬一族ならではの戦いなのかもしれない。
強さを象徴する一族の頂点の戦いがよもや強さとは無関係なものになろうとは……



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