範馬刃牙 第274話 可愛がり



刃牙が勇次郎の猛攻を前にダウンした!
スピード、パワー、タイミング……全てが完璧な連撃だった。
観客はこれを見られただけでも来た価値があるな。
そして、刃牙は殴られていると映える男だと再認識するのだった。


さて、場面はとある山奥の寺に切り替わる。
山奥とはいえ豪奢な造りだ。
大きな寺であることが伺える。

そこにいたのは勇次郎の母だ。
トンデモエピソードの被害者とも言える人物である。
大分老いているが勇次郎母にはどこか妖怪めいた迫力があった。
コワイ!
さすがは勇次郎の母と言うべきか。

「大きいのだから 器が……」
「わたしなんかより遥かに」


母親を辞めた理由を問われ、勇次郎母はこう返す。
母でありながら生まれたばかりの我が子に授乳を強制された身だ。
器というか種族さえも異なる気がする。
そんな勇次郎さんも子供の時分には恐竜に胸をときめかせていました。

勇次郎母は勇次郎が生まれた瞬間から勇次郎に屈服していた。
子を育てる親としてこれ以上の屈辱はあるまい。
だからこそ、親を辞めたのだろう。
勇次郎なら育児を放棄しても育ってくれるだろうし。

「誰も勝てませんよ」
「あの子には」
「人も動物も」「歴史上の誰でも」


母親であることを辞めたとはいえ、勇次郎母は勇次郎のことをよく知っていた。
勇次郎の強さを痛いほど知ったからこそ、母親を辞めたのだろう。
だからこそ、このような台詞を言ったに違いあるまい。
勇次郎の何たるかを身を以て知っているだけあって、言葉に重みがあるというものだ。

「もし勝てる人がいるとしたら」
「血…………」
「範馬勇次郎の血………」
「これがまず絶対不可欠」
「それも」
「とびきり濃い〜〜いやつがね」


勇次郎に勝てるのは勇次郎だけ。
けれど、勇次郎は世に一人。
そんなわけで勇次郎の血族が勇次郎に対抗しうる手段であった。
範馬一族の血が強烈過ぎて、良くも悪くも血に偏ってしまっている。
もう格闘技云々よりも血の濃さのレベルだ。
特に刃牙を見るとそうとしか思えない。

さて、舞台は決戦の場へ戻る。
話題の血の濃さが自慢の刃牙は……全然立てなかった。
かろうじて意識を保っている。
が、それが限界だった。
勇次郎のコンビネーションはもう勝負あり級のダメージだったようだ。

ピンチにおいても変わらぬ刃牙イズムであった。
この人、根本的にヘタれである。
昔はもうちょっと格好良い部分があったと思ったけど……
一体、何がいけなかったのか。

「誉めたと思ったらこのザマ…」

[“オマエはだめなヤツ”]
[親の口から出た]
[聞き捨てならないニュアンス]
[それでもなお立てぬ]
[生身の現実…]


親から下される評価としては最大級に屈辱的なものだ。
褒められたりけなされたりめまぐるしい。
が、刃牙は如何ともしがたい。
それでも立てないほど、刃牙はダメージを受けていたのだった。
エンドルフィン、足りないんじゃないか?
自殺する余裕さえもない。

さらに勇次郎はトドメの態勢に入る。
拳で突くか、脚で踏むか。
どちらにせよ刃牙は多分死ぬ。
5年前の時のように地面は土じゃない。アスファルトだ。
脳味噌飛び出すぜ。
飛び出した脳味噌が鬼の貌で新たな伝説が生まれるかな……

トドメの前となり、勇次郎の髪の毛が逆立つ。
ゴウランガ! あの勇次郎が戦慄した!
つまり、ドアノブ合戦で勇次郎を驚愕させた鎬紅葉並みの実力者が……なかったことにしてください。

「ハルル…」

後ろを振り向くとピクルが立っていた。
ここでピクルさんが地に降りた!
最近、出番がなかったのは屋上から地道に降りていたからなのかもしれない。
そりゃピクルだって屋上から落ちたら死ぬ。
ゆっくり、確実に、足を踏み外さないように降りていったに違いあるまい。

まさかの超弩級の乱入者だ。
これには勇次郎も戦慄せざるを得ない強者だ。
観客も沸き上がるし、勇次郎も笑みを浮かべる。
刃牙の存在を忘れ去るほどのビッグカードだ。
いや、忘れるだろう。普通に忘れる。忘れた。

「貴様を……」
「幾度も思った」


ピクルがここに降り立ったのは当然勇次郎と戦うためだろう。
勇次郎も当方に迎撃の用意あり。
むしろ、良し! 刃牙よりも良し!
観客は歓声を上げる。
も、もうダメだ!
刃牙の存在が消えた!

しかし、これならピクルは刃牙を見にきたというよりも、勇次郎と戦うために来たということか。
うーむ、刃牙の扱いが軽い。
痛々しいまでに軽い。
そんな屈辱に身を染めても、起き上がれないのだからどうにもならない。

だが、その瞬間、刃牙は跳ね上がりピクルを殴った。
何たるシツレイ!
嫉妬が、ジェラしぃ心が刃牙に渇を入れた。
寝そべった状態からは、ダメージを受けた状態からは想像もできない跳躍だ。

このパンチを受けてピクルの視線は踊り歯が折れた。
ピクルの象徴とも言える牙が折れたのだ。
歯が折れるのはダメージ表現として上位だ。確実にダメージを与えたことが伺える。
刃牙、復活!
だから、いちいちやりすぎなんだよ!
真・マッハ手刀を受けても折れないピクルの歯が折れるとか困るよ。
こんなんだから、この人は人気が出ずに嫌われるんだ!

「フフ……」
「この妬きモチ焼きが」


勇次郎は刃牙が復活して笑みを浮かべる。
何だかんだで刃牙とまだ戦いたいようだ。
ツレない態度を見せて、愛しの彼の心を引く。
この男! 恋の駆け引きも一流!
さすが、恋をしていると告白するだけのことはある。
ピクルに向けた言葉も本音だろうけど。
戦えるならどっちでも良かったのだろう。
基本的にはバトルマニアだ。

ともあれ、ピクルを踏み台に刃牙復活だ。
あまりにデカすぎる存在を踏み台にした。
ピクルは噛むのにもったいない逸材だよ。
そこはせめてムエタイとかにしておこうよ。
戦慄したと思ったらサムワン海王が勇次郎の後ろに立っていたとか、想像するだけで笑える。

ピクルを踏み台にした以上は、本気を出さなければピクルも報われない。
これで不覚でも取ろうものなら、現代にいるのは失敗だったと冷凍保存に立候補しちゃいそうだ。
次回から刃牙の逆襲が始まるかもしれない。
勇次郎を差し置いてピクルと再び戦い始め、そして超体力に負けたら困るな。
いや、あまり困らないか。
うん、読者にさえ期待されていないな。
次回へ続く。


刃牙、復活!
復活のやり方としてはとんでもなく許しがたいが。
そりゃないよ。
せめてムエタイ……最大限に譲歩して本部で!

それだけに生け贄カードとしては最大級の逸材だ。
ピクルですよ、ピクル。
多くの苦戦を強いられ、刃牙には酷い目にあった。
それでも株が下がる気がしない近年の刃牙における最大の傑物と言えよう。
そのピクルを生け贄にした以上は、刃牙も鬼の貌を見せておかないともったないな。
せめて鬼の貌パンチで歯を折ってもらわないと困る。

ピクルさんも引き際を心得ている男だ。
殴られればおとなしく引き下がりそうだ。
ここで怒って刃牙を吹っ飛ばして勇次郎と開戦! でもいいのだけれど。
誰も責めまい。
観客の興味はピクルに向いているし。
都市伝説とリアル原人の激突なんて凄すぎて妖怪VSチュパカブラレベルのインパクトだ。

嫉妬という負の感情で刃牙は蘇った。
何か刃牙らしいというか何というか。
でも、これも戦いで生まれる絆か?
……久し振りに現れた友人(自称)を殴る絆はないな。

ここでピクルとの戦いを思い出して、友情成分を増やしてみてはいかがか。
ピクル戦で使った必殺技……
鞭打! トリケラトプス拳!
ダメだ! もう使っている!
やっぱり、最終形態か。刃牙得意のパクリ技。
刃牙流アレンジを加えてゴキブリっぽさも出している。
ピクルも太古から伝わる生物を思い出し、思わず落涙!
良し、刃牙よ。今こそ真のゴキブリになれ!

そういえば、このシーンを見て何かを思い出すような……
あっ! そうだ!
ジャックが勇次郎と邂逅した時にそっくりだ!
あの時はどうなったんだっけ?
たしか、刃牙は勇次郎に……
………………
来週から始まる勇次郎VSピクルにご期待ください!



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