範馬刃牙 第296話 努力しても…



刃牙が勇次郎を圧倒している!
今の今までこれっぽっちも想像できなかった姿だ。
刃牙の進化はいつだって急激だ。
急激すぎてあまりよろしくないと思っていたが、脳が進化しちゃったら仕方がないしどうしようもない。
インフレをインフレで理由付けた!


勇次郎はダウンを奪われた。
今まで勇次郎が倒れたのなんて、郭海皇戦と刃牙に0.5秒の隙を突かれた時くらいだ。
それはダメージによるダウンというよりもただ転ばされたようなものだ。
だが、今は確実にダメージでダウンした。
勇次郎は今までのあまり進まない戦いが嘘のように急激な速度で追い詰められている。

(いいもんだなァ………)
(親子ってのはいいものだ)


ダウンを奪われたものの、勇次郎は変わらずに勇次郎だ。
起き上がる。
腕の力だけで起き上がって華麗なV字開脚だ。
いや、普通に起き上がろうよ。
そんな扇情的なポーズをせんでも。
pixivで「V字開脚」で検索してみるとエロ絵しか出てこないぞ。
それほどの余力を残しているということか?

それにしても嬉しそうな勇次郎だ。満面の笑みですよ。
そりゃ嬉しいだろう。
自分に対抗しうる存在を作ると決意し、刃牙が生まれてから18年。
ついに、やっと、自分を追い詰めるだけの存在に成長したのだ。
18年間分の貯金がついに放出された。
そのカタルシスや、力みなどとは比べものにならないに違いない。

勇次郎はV字開脚から逆立ちへ腕の力のみで移行する。
脅威の腕力にバランス感覚だ。
そして、そこから腕力だけで飛ぶ。
刃牙の身長よりも高く飛んだ。
ただ起き上がるという動作も勇次郎にかかればショーになってしまう。
観客たちも勇次郎に魅せられるわけだ。
金的を喰らってもダウンを奪われても勇次郎の格は地に落ちない。

「思った通り――…」
「否(いや)………」
「思った以上に俺たちは繋がっている」

「混じりっ気なしの範馬だ」


刃牙は勇次郎との繋がりを感じ、勇次郎は刃牙を範馬だと認めた。
やっぱり、この業界は血か。血が大事なのか。
うーむ、ちょっと空しくなってしまうな……
血縁至上主義の結果の実力なのか、実力至上主義の結果の血縁なのか、どちらなのかはよくわからんが。

「嫌じゃないさ」
「範馬を生きることは」


勇次郎は刃牙を認めた。
それを刃牙は受け入れた。
これで刃牙は『刃牙』ではなく『範馬』として生きることになるのか?
米国に喧嘩を売ったり……あ、もう売っていたか。
じゃあ、梢江をレイプして問答無用に孕ませるとか……
……君は範馬にならんでも刃牙のままでいいや。

かつて刃牙は朱沢江珠に自分の戦う理由は勇次郎とは違うと言った。
相手を叩き潰す勇次郎に対して、相手との絆を育む刃牙である。
だが、範馬になるということは勇次郎の側に傾倒するということだろうか。
例えば、Jr.に対しては思いっきり範馬の接し方だった。
さりげないやり取りではあるが大きな意味を持つやり取りでもある。

ここで刃牙は再び液状化を行う。
一瞬で肉体が溶ける。ゴキブリ化だ。
だが、今までとは迫力が違うのか、観客たちは戦慄する。
範馬脳によるゴキブリ化だ。
鬼のゴキブリ……うん、すごく嫌だ。

(そう俺は正真正銘)
(範馬の子)
(努力しても努力しても努力以上が手に入っちまう)


かつての天才じゃない発言はどこへやら。
隠すことのない我天才発言である。
これが刃牙から範馬刃牙にシフトした瞬間か。

そして、刃牙は踏み込む。
姿勢は直立だ。体重が前にかかっていない。
最速のダッシュを行うには些か不向きと言わざるを得ない。
だが、足首の力だけでアスファルトが粉々に砕けクレーターができた。
紛うことなき連載史上最速の踏み込みである。
ぬう、これが範馬か……

最速の踏み込みだ。
だが、絵ではスピード感が感じられず制止したように見える。
それはむしろ、赤子が父親の元に歩いて行くような光景であった。
勇次郎は両腕を広げてそれを迎え入れる。
迎え撃つのではなく迎え入れる。
迎撃を捨て刃牙を受け入れるかのような構えだ。

(だからもう……)
(諦めたんだ…)
(親父の面倒は俺が見る!!!)
(親子だからな………)


神速の踏み込みからの刃牙式鬼哭拳が勇次郎のボディに入った!
刃牙が培った技術ゴキブリダッシュに生まれ持った範馬の資質が合わさり最強に見える鬼哭拳だ。
まさに範馬刃牙の必殺技である。
これぞゴキ哭拳!
……うん、最悪だ。

その破壊力はとんでもないものがあった
勇次郎を中心に衝撃波が伝わり、木々の葉が揺れて落ちる。
それを直撃した勇次郎はどうなる?
既に刃牙から大ダメージを受けている。
致命打となり得るのだろうか。

刃牙は勇次郎と親子であることを望んだ。
だからこそ、家族団欒を行おうとした。
勇次郎との食事は方法であり、目的ではない。

そして、勇次郎は親子であることを認め受け入れた。
刃牙の本願は達成されたのだ。
勇次郎が鬼哭拳を無抵抗に受けたのもだからなのだろう。
二人にとって、闘争そのものが家族団欒だった。
実に範馬的です。

この戦いは親子喧嘩などではなく、二人がお互いが親子であることを認め受け入れる戦いだったのかもしれない。
勇次郎は家族との団欒に喜びを覚え、刃牙は範馬の家系であることを認めた。
二人は心情的にも親子になったのだ。
連載から10年以上経って、ついにこの領域に二人は入った。

それだけにどうなるのか、まったく読めない。
ゴキ哭拳は勇次郎を穿つのか、それとも父としての貫禄と意地を見せつけるのか。
次回へ続く。


今回は静かながらも大きく二人の心情が動いた。
形式張った親子ではなく、心情として親子であることを認め合った。
そのために範馬の血というキーワードは欠かせなかった。

「範馬刃牙」は刃牙の成長において範馬の血が必ず関わってきた。
刃牙が戦ったボスキャラ、オリバもピクルも範馬の血を引き出して戦った。
第1話の時点でこうした範馬の血は前面に打ち出されていた。
「範馬刃牙」とは刃牙が範馬であることに目覚め認める物語なのではないだろうか。
だからこそ、タイトルに範馬の文字が入っている。
グラップラー刃牙やバキとは違い、刃牙個人の物語ではなく範馬一族としての刃牙の物語なのだ。

認めてしまったからには家族団欒は果たしてしまった。
二人がこれ以上戦う理由はない。
だが、そこは範馬一族。
強いんだ星人だから、まだ一騒動あると見るべきか。
もう少しで1周年だし、そこまでに一区切りは付きそうではある。

しかし、話が抽象的になっていき解釈に困る。
範馬一族はナニを考えているのかよくわからない。
今回もその例に漏れないということか。
そういえば、エジプト壁画は何だったのだろう。
今回のようなどこかしんみりとした物語が展開されたかと思えば、あんな抱腹絶倒確実な爆弾もあった。
範馬一族はナニを考えているのかよくわからないし、板垣先生もナニを考えているのかよくわからない。
あまりにも強烈なバラルの呪詛だよ。シンフォギアネタ。



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