範馬刃牙 第44話 超雄と超雄



ゲバルの右ストレートがオリバにクリーンヒットした。
続けてアッパーで追い討ちする。
オリバは後ろに吹き飛ぶが、互いを繋ぐバンダナによって離れない。
恐ろしく丈夫なバンダナだが、そんなことを突っ込んでいる暇はない。

[知ってるさ……]
[アメリカでイチバン喧嘩が強い男は]
[こんなパンチじゃ倒れない]


攻め立てるゲバルだったが、攻撃が通用していないことをはっきりと自覚していた
バンダナを握りながら殴るという不自然な体勢のため、攻撃に力が入りにくいのだろう。
この状態ではとてつもないタフネスの持ち主であるオリバを倒すのは難しい。

だが、ゲバルの今の狙いはオリバを倒すことではなかった。
バンダナを手放させることを狙いとして、オリバを攻撃していた。
なんか途端にルーザールーズがチンケな勝負に思えてきたが、無視。
チェーンネックデスマッチ@ジョジョ第1部だと思えば問題ない。

とにかく、ゲバルの右フックがオリバのアゴに入る。
脳が揺れる。膝が揺れる。
そこに膝蹴りをアゴに当てて追い討ちする。
オリバが後ろに倒れこむ。
バンダナを支えるためにゲバルは思わず両手を使う。
だが、オリバはバンダナは握ったままだった。
それも人差し指と親指だけで。

「オリバの巨体がッ」
「バンダナ一枚で支えられて…ッッ」
「しかもッ」
「両手でやっと保持されるのに対し」
「あの持ちかたッッ」


オリバの指力に観衆も大驚きだ。
妙に解説っぽく驚く。
これでシコルスキーがスプリンクラーに掴まったら、
シコルスの巨体(100キロ)がッスプリンクラーで支えられて…ッッしかもッ両手?でやっと保持されるのに対しあの持ちかたッッ
――と賞賛を浴びるに違いない。
彼の居場所はロシアじゃなくアメリカのようだ。

驚いていたのは観衆だけでなく、ゲバルもだった。
冷や汗まで流して最上級の驚愕をありありと見せている。
さっきまでの攻勢はどこへ行ったのか。
自分から仕掛けた戦いなのに、すでにオリバに呑まれてしまっている

オリバはダメージをまったく受けていないかのように立ち上がる。
相変わらずのタフネスを見せつける。
攻撃を受けただけなのに、オリバ優勢だ。
バンダナの持ち方を変えたことに対し、悪態をつくなど心理面で圧倒しようとする。
だが、オリバはさらに仕掛ける。
ゲバルはまた冷や汗だ。
戦いが始まって1週間しか経ってないのに負ける準備が出来てる反応だ。

オリバは今まで人差し指と親指でバンダナを掴んでいたが、親指と小指で掴んだ
明らかにものを掴むのには適していない態勢だ。
観衆の多くはオリバを煽る。
長老は冷や汗を流しまくる。
そして、刃牙はというと…

(絶対的握力への自信か……!?)
(戦略か…!?)


反応した!!!!
まさか、まさかの刃牙の驚愕だ。
てっきり冷や汗を流すしか仕事がないと思ったら、しっかりと驚いてくれる。
見る人が見ればオリバの行動は挑発や余裕の類ではなく、駆け引きに見えるようだ。
ここから解説に繋げれば範馬流解説術の完成だ。

オリバはバンダナの持ちかたが、古の貴族のマナーだと解説する。
貴族のマナーを戦いに持ち出すのは、パワーの中にスマートさがあるオリバらしい。
黒パンツもスマートだ。
バンダナが破れたらパンツでルーザールーズをやるに違いない。
パンツを失うものは誇りをも失うのだ。

「慎ましさ」
「君ならワカるハズだ」
「君の五体に流れる日本の血が」
「日出國の美徳である慎ましさを求めるからだ」
「さァ…」
「いつまで下品な鷲掴みを続けるのかね♡(はぁと)」
「慎ましさを…………」
「そう…」
「誇りを取り戻すのだ………」


戦いのさなかに説教を始めるのもオリバ流スマートだ。
そのうち、自前の黒パンツをゲバルに履かせるに違いあるまい。
もちろん、生のまま履かせる。
オリバの生暖かさがゲバルを包むはずだ。

その説教に影響されたのか、ゲバルは片手を離す。
が、動きがおかしい。
ヒゲを指で掴みねじり上げる。
1本のよれよれだったヒゲにたしかな芯が通った。

「フッ」

オリバの説教にうんざりらしい。
怒りのヒゲミサイルを放った!
かつてドリアンが得意としたヒゲミサイルだが、ゲバルのそれはドリルのごとく、回転しながら飛んでいく。
威力も安定性もゲバルのヒゲミサイルの勝っていそうだ。
さすが、無隠流忍術。
ヒゲミサイルは標準装備らしい。

そのヒゲミサイルはオリバの目に突き刺さる。
これで片目は封じられた
オリバは劣勢になった。
もっとも、オリバのことだからここからどんな攻撃をされても平気そうだが。

ゲバルはこういう小物を使うしかオリバに勝てる可能性がないように思える。
開始早々大ピンチだ。
こうなったら早くメイクしなきゃいけない。
メイクすれば互角になりそうな気がする。
でも、尿で柔らかくした土を使わなければあのメイクが完成しないというオチか?
とにかく尿を漏らせ!
尿でバンダナを攻撃すればいいんですよ。
そうすればオリバも手を離すに違いない。
尿を出した時点で誇りを失っているのは気のせいだ。


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