範馬刃牙 第70話 意識



刃牙は秘奥義範馬変化をして鬼の貌を出した。
それに対抗するかのように、オリバも肉変化する!
オリバの影が刃牙を包み込んでおり、どうみても巨大化したとしか思えない
まぁ、オリバが巨大化したところで、アイアン・マイケルが刑務所にいたサプライズにはかなうまい。
間違いない。

「な……」
「なんだいこりゃあ…」


オリバの超変化?に散々調子に乗っていた刃牙は冷や汗だらだらで驚く。
うむ、素晴らしい。
刃牙は無闇に生意気なところがある。
特に最近は輪をかけて生意気だった。
その生意気っぷりの根拠が実力とか練習の成果とか、そういうのじゃなく素の性格で生意気なのが刃牙の人望を著しく下げていた。
かといって、鬼の貌出して俺最強モードに入られると、生意気でもいいってわけじゃないけど。
何だか刃牙には根本的な人望が欠けていると思った。

さて、オリバの肉体がどうなっていたかというと…
あぐらをかいて、腕を縦にして顔を守って――
要するにはオリバは丸まっていた

[これって……ッッ]
[球体……………!!!]


だが、丸まり方が半端ではなく、オリバは完全に丸まっていた。
人間は普通、縦に長い生物だ。
縦の広がりと横の広がりを比べると、前者の方が圧倒的である。
例え、座るなりして全高を縮めてもこの差は変わらない。
が、オリバは半端ではない筋肉によって、かなりの横幅を誇る。
そんなオリバがこのように丸まれば、完全球体の筋肉ボールになるのだろう。
うん、筋肉ボールっていいな。
この状態を筋肉ボールと呼称しておきます。

でも、何で筋肉ボールになったのに、オリバの影が刃牙を包んだのだろう。
これは影が大きくなるどころか小さくなる動きだ。
もしかして、ボブはライトの動きを密かに調整しているのかもしれない。

「オドロキます……ってそりゃ まん丸のまん丸ボール状になったンですから人間が……」
「ほら…いるじゃないですか動物の……… アルマジロ―――?あれですよ まさにあれッッ」


ここでボブ・マッカーシーが空気を読んで驚くッッッ。
実に驚き役として適している。
その場に居合わせた数人の看守の中でボブが選ばれた理由は驚き上手だからだな。

「わたしもねこういう仕事ですからやりましたよ武術(マーシャルアーツ)も…」
「だからこの技?のスゴさはワカります」


待てェ、ボブ・マッカーシィィィィッッ。
武術をやったのはいい。問題ない。
でも、それと筋肉ボールは無関係だろう。
筋肉ボールのすごさは筋肉のすごさであって、格闘技のすごさではない
驚き方が上手と思ったら、こいつ、驚き方の筋を間違えていやがるッッ。
オリバが格闘技の果てにこの筋肉ボールにたどり着いたのなら関係なくもないが、オリバは格闘技というか筋肉万歳の人だからなぁ…

ボブは格闘技は関節を利用する、身体の角を利用することが多いと解説を続ける。
関節と身体の角はあまり関係ないと思うがボブクオリティなので無視)
言う通り、攻撃するには手とか肘とか角を使う。
アゴとか鼻とか金的とか、脆い部分も大抵角だ。
が、今のオリバには角も何もなさそうだ。何せ筋肉ボールだ。
守りは完璧だ。
でも、どうやって攻めるんだ?
筋肉ボールはすごいことはすごいが、一切攻めを考慮していない。
角を消すことで守りは万全にしたが、角がなくなったから攻めることもできない
そりゃあ筋肉ボールの状態で飛んだり跳ねたりして刃牙に襲いかかれば強力だろうが、それはさすがに無理だろう。
自信満々にこの体勢に移行したのはいいけど、やっていることは護身開眼した寂海王レベルだ
この場にもし寂海王がいたら、オリバの筋肉ボールにさすがアンチェインと感動するんだろうな。
そして、3万人の弟子に筋肉ボールを最強の護身として教えるのだった。
…少し面白いかもしれない。

とにかく、パーフェクトディフェンス筋肉ボール状態に移行したオリバに刃牙は攻めあぐねる。
そりゃあ、攻撃すべき部分がない。
銃弾すら通さない筋肉を持つオリバが相手にこの状態は辛い。
最初のダウンだってアゴ狙いだったし。

「でも そこは 悪魔の子……」

いったいいつどこで範馬は悪魔になったんだろうか?
ひどい扱いだ。
やってることは悪魔に等しいからしょうがないとも言えるけど、最近の勇次郎は殺害することがほとんどなくなったので比較的穏和だと思う。
刃牙が悪魔度が高い状態なので、悪魔と形容したのかもしれない。
もしかしたら、ここで逃げ出すのかもしれない
何せ悪魔ですよ。
相手が守りを固めるようなら逃げるまでだ。
もちろん、後日自分のやったことは全然卑怯ではないと堂々と理屈をこねる。

が、刃牙は果敢にも飛び後ろ蹴りをする
今の刃牙には逃げるという選択肢はないようだ。
いや、逃げるという選択肢があってのも困るんだけど、こいつは目の前のライバルから平気で逃げる男だ

その飛び後ろ蹴りはボブは蹴り技では最強と解説する。
たしかに体重も乗るし腰の回転を活かせると、単純な破壊力ではたしかに最強かもしれない。
大振りなのが難点だけど、筋肉ボール状態のオリバは動けないだろうからその弱点も解消される。
守りを固めた状態の相手に単純な最大威力の攻撃をぶつける刃牙の選択は間違ってはいない。
でも、鬼の貌を出したなら殴れって話だけど。
なんか刃牙は鬼の貌を一切活用できていない。
0.5秒の隙を撃つのもエンドルフィンだけで十分じゃないか、もしかして。
いや、鬼の貌自体がもう消えちゃったのかも。
絵を見る限り消えてるし。

しかし、刃牙の飛び後ろ蹴りは筋肉ボールによって弾かれる
一流の攻撃力を持つ刃牙の攻撃がまったく通用しないのだ。
おかげで刃牙の冷や汗はさらに増える。


さて、ここでボブの回想が入る
ボブが思いめぐらせる想い出はオリバがかつて自分に見せてくれたあるパフォーマンスだった。
オリバは腕の先の筋肉を二の腕の筋肉へと移動させ、それをさらに頭の後ろまで移動、最終的には反対の腕の先まで移動させた。
力を入れる場所を変えることで、筋肉がまるで移動しているように見せたのだ。
筋肉Aが筋肉Cまで移動したんじゃなくて、筋肉A筋肉B筋肉Cの順に力を入れるということだろう。
でも、オリバなら筋肉自体が本当に移動してもおかしくないよな。
だって、筋肉星人だし。

「ミスターはそれを同時数箇所で実現できる」

筋肉だるまなオリバだったが、ただの筋肉だるまではなく器用な筋肉だるまだった。
なんかアンチェインを止めても一流のパフォーマーとしてやっていけそうだ。
3ヶ月くらいしたら飽きられてマリアさんにしか見てもらえなくなる。
マリアさんも飽きてたばこを投げられたら、アンチェインに戻る時だ。

「早いハナシ全身どこにでも力を込められる」
「バキが弾かれたのはその能力のせいでしょう………」
「ぶつかってくる力に対し―――内側からの力で弾く」


寂海王の背中を向ける護身は背中の耐久力に賭けた守りだった。
それに対し、オリバの筋肉ボールは筋肉に賭けた守りであった。
ただ、丸まっているようで殴られる瞬間に力を爆発させている弾いているのだろうか。
過去、刃牙が腹筋だけでガイアの手首を折ったもののように!
手首程度の筋肉で刃牙を弾くのは無理っぽいけど、そこは筋肉魔神オリバだ。
問題ない。

「考えてみりゃ以前(まえ)にも同じことがあった」
「鎬 紅葉…………… 彼がやったことも同じ」
「筋量にあまりの差があるので気付かなかったよ」
「でも同じだ」
「多分破り方もね」


鎬 紅葉の筋肉ガード(仮称)の件を思い出したら刃牙の顔に余裕が取り戻される
自分が優勢になった瞬間にこれだ!
さすが、主人公!
筋肉ガードを打ち砕いた時は剛体術を使った。
ということは、ここで剛体術再登場だろうか。

剛体術は独自の名前を持った必殺技の類が少ない刃牙(というかバキ世界)において、珍しい個性を放っている必殺技だ。
鎬 紅葉を一撃で倒したことからその威力は折り紙付きだが、ずっと忘れられていた。
最大トーナメント決勝戦のジャック戦で使えば良かったと思うけど、
あの時は音速拳に取って代わられた挙げ句、フロントネックチョークでトドメだった。
そんな剛体術がここで復活するのならちょっと嬉しくて、ちょっとだけ刃牙を応援してしまいそうだ。
でも、剛体術はレアすぎて覚えている人があまりいなそうだ。
勇次郎の鬼の哭くパンチや克己のマッハ突きは派手さ満点で知名度が高いと思うけど、どうも剛体術は目立たない。
最近の読者にとってはもうわかるわけがないんだろうなぁ、剛体術。
もしかして、アイアン・マイケルなんかも最近の読者には新キャラだと勘違いされていたりするんだろうか?
そういう人はかつての姿を見て腰を抜かすんだろうなぁ。

「やってみるがいい」
「かつてオマエを救ったあの技」
「剛体術をッッ」


が、オリバは刃牙の剛体術を予想済みだった
さっきまで余裕面だった刃牙だったが、一瞬にして冷や汗顔(注1)になる。
(注1:冷や汗顔 冷や汗を流した時の顔のこと。ダメージ表現の他、心理的に不利な場面でも用いられる。
 なお大抵、敗北5秒前の絶望的なツラをしている。)
劣勢になった瞬間にこれだ!
さすが範馬刃牙。お調子者です。

剛体術は正拳突きの構えを取るので、どうも隙が大きいだろうし見切られやすいことだろう。
鎬 紅葉は初見だったし油断もあったので食らってくれたけど、オリバは剛体術を知っている。
対策はすでにできているのだろう。
いかに必殺技でも種が割れてしまえば必殺ではなくなるのだ。
種が割れても通用する必殺技は鬼の哭くパンチくらいだ。
刃牙ピンチだ。
音速拳なんかはバキ世界の中でも最強の必殺技のひとつかもしれないけど、
めっきり使われなくなったのもそのわかりやすさのせいかもしれない。

「ヘ…… 他の方法もなさそうだしな」
「言われるまでもなくそうするさ」


しかし、刃牙はこれでも主人公だ。
いかに不利な状況にあろうとも引かない!逃げない!屁理屈言わない!俺もアンチェイン!君はチェイン!
久しぶりの剛体術だから、刃牙は感覚を忘れてただの正拳突きになりそうなのが不安だ!

そもそも、剛体術の効果ってなんだったろう。
全ての体重をパンチに乗せられるようだけど、地球の核の硬さをぶつける地球アタックが出た以上、それだけじゃちょっと物足りない。
まぁ、鎬紅葉の腹筋を越えて、内蔵にダメージを与えたから、防御無視攻撃と考えるのが妥当か。
鬼の貌を出していることだし、当たればオリバに効きそうだけど、なんか当たりそうにない。

「アンビリーバブル続きのこのバトル」
「それでも……」
「それでもあのシーンには心底ド胆抜かれたよ」

「うわアアァアッッ」


ボブの意味ありげな解説と共に悲鳴が聞こえた
オリバと刃牙、どちらの悲鳴だろうか?
多分、刃牙。大穴でアイアン・マイケル。

優勢に見えた刃牙だったが、筋肉ボールのおかげで不利になった。
ワンパンKOをばかり危惧していたが、しっかり苦戦してくれそうなので胸をなで下ろす。
剛体術でワンパンKOってのも勘弁だけど。

しかし、刃牙は鎬 紅葉じゃなく寂海王を思い出せば良かったのに。
そうすれば、脊髄のツボを突いて筋肉ボールを強制中断できたはずだ。

「寂海王…………… 彼がやったことも同じ」
「筋量にあまりの差があるので気付かなかったよ」
「でも同じだ」
「多分破り方もね」
「やったァァァァァ」
「勝ったぞォッ」


鎬 紅葉を思い出してくれてありがとう!


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