範馬刃牙 第77話 勝る



今回も純度120%の殴り合いです。
花山とスペックの殴り合いくらいにピュアだ。
あ、それだと途中で武器使うか。

「わたしの………」
「半分にも遙か満たないこの少年が―――――」
「今 わたしを追い詰めつつあるッッ」


オリバはすでに壁の直前まで追い詰められていた。
拳が同時に入りながらも、オリバは押されていく。
正中線に打ち込んだり、刃牙は技を使っていることは使っているが、それでもオリバとの大きな差を埋めるには至らないだろう。
もう完全に筋力で押している。
やはり、人間の筋肉では範馬の筋肉に太刀打ちできないのか?

しかし、例えそうだとしても、オリバは相当な健闘をしている。
今まで鬼の貌が出てきたのは勇次郎対独歩、刃牙対ジャック、勇次郎対郭海皇の3戦だ。
そして、そのどれもが鬼の貌が出ると同時に、勝負のほとんどが決まってしまっている。
ジャックのダイヤモンド筋肉ですら鬼の貌の前には敗北している。
…まぁ、あれはチョークスリーパーだったから筋肉関係なさそうだけど、範馬のことだ。
チョークスリーパーにも筋肉で対抗できるに違いない。

ともあれ、刃牙とほぼ互角に殴り合っているオリバはさすがだ。
範馬を除いて刃牙世界筋肉最強だけある。
連載史上初めて鬼の貌と五分った男である。
いや、勇次郎と刃牙の鬼の貌を比べると、質がめちゃくちゃ違うかもしれないけど。

「NO! 追い詰めつつ――――――――ではない」
「100キロも軽い少年に――――――」
「わたしが――――――」
「アメリカが――――――」


ついに壁に足が触れたオリバは負けを感じてしまう。
オリバ個人だけではなく、アメリカの敗北すら感じる。
国すら凌駕する一個人が範馬だ。
刃牙は勇次郎の域に踏み込んでいるのかも知れない。
あと何でアメリカの負けになるんだ。
まぁ、たしかにアメリカで一番権力を持っているのかもしれないけど。

ともあれ、アメリカを背負っているから絶対に負けられない。
オリバが吠えた。
負けゆく自分を奮い立たせるような叫びだ。
なんと叫んでいるのかは文字が歪んでよくわからない。
が、「オーガ」と書かれているように見える。
オリバは刃牙に勇次郎の姿を見たのだろうか?

メキュッ

オリバの意地を賭けた全力の右拳が刃牙に決まった。
おそらく、ゲバルを倒したパンチだろう。
アイアン・マイケルなら100回は死ねるパンチだ。
ゲバルだって夢の世界に旅立ってしまう。

この一撃に刃牙の前歯が折れた
範馬の歯というものは基本的に折れない。
どれだけ殴られても折れないし、どれだけ狙われても折れない。
歯が折れた範馬は、ジャックに殴られた刃牙と力みすぎたジャックだけである。
範馬の歯を折れるのは範馬だけだ。

その範馬の歯をオリバは範馬の身でないながらも折った。
素晴らしい快挙だ。
アイアン・マイケル程度のストレートでは歯を折るどころか、鼻血すら出せないはずだ。
あ、妄想アイアン・マイケルは鼻血を出させることに成功しているか。

そんな範馬の歯を折るほどのオリバの渾身の一撃が入った。
大抵の格闘家は倒れる。
ゲバルですら一撃KOだろう。
だが、刃牙は倒れない。
いや、倒れかけている。
だが、オリバの首根っこを両手で掴んで倒れないようにしている。

よく見れば刃牙は殴られた時点で掴んでいた。
刃牙はオリバの一撃をただ受けるだけでは倒れると判断したのだろう。
しかし、首を掴んで間合いが離れないようにすると、むしろダメージが増えるはずだ。
おとなしく吹っ飛ばされた方が楽だろう。
しかし、ここで倒れればもう立ち上がれないと思ったのだろうか。
刃牙はダメージを減らすことよりも倒れないことの方を選んだ

前歯が折られ、視線は虚ろだった刃牙だが、それでも倒れず不敵な笑みを浮かべた
こ、これは範馬笑い
かつて、烈海王にラッシュを喰らった時、ジャックに追い詰められた時、刃牙が浮かべた笑みと同じものだ。
刃牙はこの笑みの直後に範馬の血を開放して逆転劇を繰り広げている。
オリバ、大ピンチか!?

範馬笑いをすると同時に、首に回した手と腹筋に力がこもる。
そして、刃牙の頭突きがオリバに決まった。
オリバの身体が壁にめり込む。
アイアン・マイケルは「刃牙の顔面突きかよ。想像したくもねェ」とつぶやいていることだろう。
今回は一度も出てきていないけど。
撃たれたか?
それとも、刃牙とオリバのいる場所はアイアン・マイケルのいるところから真下だから見られないのか?

壁にめりこむオリバを見て、ボブたち看守一同はアメリカ国旗が落ちる姿を連想する。
ううむ、いつの間にかオリバはアメリカの象徴になっているようだ。
オリバ自身も自分の負けはアメリカの負けだと思っていたし、意外と愛国心が強いのだろうか?

刃牙の頭突きはオリバに決定的なダメージを与えただろう。
だが、ダメ押し大王刃牙はその程度では終わらせない。
白目のまま、トドメの全力パンチを出す。
お、鬼だ!
いや、鬼か。
巨凶範馬だし。
壁にめり込んでいようが気を失っていようがアイアン・マイケルだろうが殴る。
刃牙の本質は真っ正面からの殴り合いではない。
一方的な暴力なのだ!
…多分。

刃牙のトドメのパンチに思わず看守一同は目を閉じる。
オリバを殺してしまうかもしれない一撃だ。
だが、オリバの顔面を狙った刃牙の拳は外れ、壁を殴り突き破って向こう側へ行ってしまう
オリバがついにダウンしたのだ。
そして、刃牙がついにオリバに勝利した。


「象徴的なシーンだった……」
「気が付いて……」
「顔を上げてみたらさ…」
「もう……………自分の前には誰も……いないのだから………」


刑務所の壁を突き抜け、外に飛び出た刃牙の前には何もなかった(よく見れば壁があると思うけど)。
オリバを倒した今、この刑務所の中には刃牙の目の前に立つ者はいない。
アイアン・マイケルなんかが「お前を倒せば今日から俺がナンバーワンだ!」とか言って、
ピーカーブースタイルを取る可能性もあれば嬉しいがともあれ刃牙は刑務所最強になった。
大分脱線していたが勇次郎へ至る道への一歩を踏み出せたのだ

「気がついた」という表現から最後のパンチは無意識に放ったものなのだろう。
オリバのパンチを食らい、範馬笑いをした時点で刃牙の意識は失われていたと考えられる。
常時範馬笑い状態に移行すれば勇次郎の域に踏み込めるかもしれない。

また、オリバを倒した今、勇次郎に次ぐ実力者はほとんどいない。
このまま、勇次郎との勝負に持ち込める
その意味でも目の前に誰もいないというシーンは象徴的だ。
あとは勇次郎だけなのだ。

もっとも、ここから別の相手と戦うのかもしれないが。
しかし、勇次郎に次ぐ実力者はもうほとんどいない。
郭海皇とジャックくらいのものだ。
郭海皇は範馬に越えられたし、ジャックは刃牙に負けているし、今ひとつインパクトが弱い。
これからどうなるのだろうか?

それとも、範馬に対抗するには範馬が必要なので、最大範馬トーナメントが始まるのだろうか?
勇次郎が言っていた世界中に広がった種の伏線がやっと明らかになる!
範海王も出場したりして数秒で敗北する。


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