範馬刃牙 第94話 小細工



烈海王VSピクルの戦いが始まった。半裸VS裸だ。
烈先生が負ければ喰われてしまう未曾有のハイリスクバトルだ。
というか、本気で喰われたらシャレにならない
もし、烈先生が負けたら徳川のじっちゃんとストライダムはどうするつもりだろうか。
喰われるのも一興とか思っていそうで怖い。
ストライダムはともかく、徳川のじっちゃんはそう思うのが自然だ。
…自然だよなぁ。
シベリアトラ補食作戦の時にいたライフル持ちがいないし、ピクルを止める術はない。
あと新年初の「範馬刃牙」だが、当然のように刃牙は表紙にしか出てきていない。


「ハルル……ル」

険しい形相を浮かべながら両腕を高く上げ威嚇するピクルだ。
烈先生はそれとは対照的に腰を落としてピクルの攻撃に備える。
全身のバネを活かせば、十分な打撃を叩き込める距離だ。
久しぶりに中国拳法の理合が炸裂するか。

しかし、この身長差だと烈先生の目の前にピクルの股間がある形だ。
無論、相も変わらずの全裸だから丸見えだ。
だが、烈先生は動揺した感じを見せない。当たり前だ。

「またとないこの機会」
「まずは真っ向 力の勝負が望みだ」


原人と戦う機会なんてまたとない。2度も戦えないだろう。
ならば、ピクルの本領が発揮される力による勝負をした方が、ピクルの潜在能力を知ることができる。
同時に相手の得意分野に持ち込むという、烈海王の自分に対する自信と自負が伺える。

でも、またとない機会って別の意味でまたとない可能性があるんだよなぁ。
負ければ喰われるし。喰われれば死ぬし。
ホモネタ爆発のピクルだけど、決してそちらの意味で喰うわけじゃなさそうだ。当たり前だ。
もし、そうだとしたらシベリアトラ相手に獣姦完成だ。

(ピクルよ 君の間合い(エリア)だ………)

腕を胸の付近に構えさせ、烈海王は慎重に間合いを詰める。
守りを重視した構えだ。
烈先生はピクルのパワーは知っているが瞬発力はまだわからない。
保険をかける意味で防御を重視しているのだろうか。

間合いに入ると同時にピクルが右腕を水平に振る
拳は握っていない。
ただの平手だ。
そんな原始的な攻撃だが烈海王の顔に冷や汗が走る
中国四千年すら脅威を覚えるのが野生の打撃か。
勇次郎以上パワーが烈海王に襲い掛かる!

そして、ピクルの平手がクリーンヒットする。
烈海王はガードする。烈海王の足腰を持ってすれば大抵の打撃をものともしないはずだ。
しかし、あまりのパワーによって吹き飛ばされる。
数メートル地面を滑った挙句、あまりの勢いに脚が地面から離れ、柵に激突する。
烈海王が踏みこたえることができぬほどの打撃だ。
勇次郎以上のパワーは伊達じゃない。
克己だったらこの時点で勝負ありだ。

「よく理解(わか)った」
「力の勝負は無理だ」


単純な筋力においても烈海王はハイレベルだ。
かつては筋肉を見せるだけで多くの格闘家を驚愕させ、最近では握力が自慢の孫海王を握力で切って落とすほどだ。
まぁ、あれは相手がしょぼかったのもあるだろうが。
そんな烈海王が力で勝てないと認めるのはけっこうな事態である。

しかし、烈海王の顔に焦りは見られない。
これほどの打撃を受けておきながらなお冷静だ。
すさまじい一撃を受けたがダメージもなさそうだ。
前回の敗北フラグをなかったことにする勢いである。
パワーこそあるものの、消力パンチのように奇妙な力が加わらないだけ見切りやすい打撃なのだろうか。

「小細工を弄するぞ」

小細工とは中国四千年の技術のことなのか。
ピクルの純粋かつ圧倒的なパワーの前には、中国拳法すら小細工に堕するのか。
そう言いながら、烈海王は再びピクルの元へ歩み寄る。

刃牙は「小細工を弄して勝っても意味がない」と言ったが、烈海王はその小細工に生涯をかけてきた。
小細工だろうが誇りと自負を持ってピクルに立ち向かう。
そんな人が刃牙に中国拳法を教えるはずがないのだ。

闘争心を失わない相手に喜びを覚えたのか、ピクルは歓喜に溢れた顔で烈海王に向かって走り出す。
そこにカウンターで烈海王のハイキックが顔面にクリーンヒットする
上体を横に反らしながら、垂直に足を振り抜く中国拳法独特の蹴りだ。
姿勢を低くしながら高い部位を攻撃する高度な技術であろう。
鍛えられた肉体と磨かれた技術が融合した完璧な一撃が完璧なタイミングで決まったのか、拳銃すら通じないピクルが白目になる
…意外と痛みに対する耐性がないのかもしれないな、ピクル。

白目になったことから一瞬気を失ったであろうピクルに烈先生はさらに攻撃を仕掛ける。
無防備になったピクルの目に三つ編みをぶつけて目潰しだ。
「バキ」時代には克己との模範試合で克己の脚に三つ編みに引っかけて態勢を崩していた。
その技術の応用が三つ編み目潰しか。
五体どころか毛髪すら武器に使うのが烈海王である。
これには髪の神も大喜び間違いなしだ。

それにしても生き物のように動く三つ編みだな。
たまに何もしていないのに勝手に浮き上がっているし。
実は意思を持っているのかもしれない。
烈小龍時代にハゲで烈海王になったら三つ編みになったのは、三つ編みの重要性に気付いたからかもしれない。

四肢を使わない最小のモーションでピクルの視界を塞ぎ、さらに脚を払いピクルをダウンさせる。
ピクルは普通に尻餅をつく。
受け身すらできていない。
ピクルに受け身の概念があるかは怪しいが。
ついでにピクルの股間は大露わだ。
ピクル最大の弱点である股間をどう責める!

そう思っていたら、倒れたピクルの顔面に烈海王渾身の廻し蹴りが入った
変則ハイキックによるカウンターから、三つ編み目潰しと足払いによる崩し、そして追い打ちの廻し蹴りと、
中国拳法の技術が積もり積もった見事な連携であった
並みの海王が喰らえば一発KO間違いなしだ。
これにはピクルも大ダメージは免れないだろう。
むしろ、一連の攻めに対して無防備すぎるピクルであった。
パワーは勇次郎以上だが、守りはヘタらしい。

ストライダムと徳川のじっちゃんはもう決着かと沸き立つ。
こうギャラリーが騒いだ時に限って決着していないのがこの世界の常識だ。
実際、ピクルも顔面に二度も渾身の蹴りを受けておいて鼻血すら流していない
バキにおいて、鼻血を流させないととりあえずダメージに加算されない。
刃牙VSオリバの時、オリバに目に見えたダメージが加わったのも鼻血が流れてからだし、鼻血は重要なダメージ表現だ。
強力な連携だったがピクルにとってはまだダメージに加算されていないのか。

で、当のピクルはぼうっとした表情で涙を流していた
ええと…何が起きた?
唐突な行動が目立つピクルだが、今回は輪をかけて唐突だ。
烈海王が見せた技術に何か心揺さぶられるものがあったのだろうか。
この涙は感動か、驚きか、悲しみか、それとも喜びなのか、わからないまま次回へ続く。


とりあえず、今のところさすが烈海王と言わんばかりの大健闘をしている。
ピクルの強さを引き立てるための消化試合になるかと思いきや、けっこうな盛り上がりを見せた。
完全版4巻の表紙が烈海王だったりと、板垣先生にとって烈海王ブームの真っ最中なのかもしれない。

まぁ、烈海王は範馬以外不敗だ。
(範馬星人以外に不敗の格闘家のことを指す。大抵強い。
 ただし、ズールのように試合数が少ないために範馬以外不敗になっているのもいるため注意が必要)
簡単に沈んでは今まで積み重ねた努力が無駄になる。

しかし、それにしても、このビッグマッチに驚き役がジジイ3人組というのは不適だ。
誰か大物驚き役がやってこないものか。
本部なんかがやってくればいい感じだ。
日本刀を持ってピクルに襲い掛かる。
でも、あっさりやられてしまう。
気分は安藤さん。


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