第238話 鬼哭



範馬勇次郎が寸止めという異常事態発生ッッ!!
範馬勇次郎は点火したら止まらない。
点火してもすぐに冷や汗で鎮火してしまうシコルスキーとは違うのだ。
自分で火を消すことはないし、邪魔者がいても遠慮なく叩き潰す。

ジャガッタだろうが、チャモアンだろうが、サムワンだろうが、ジャガるし、デコピンでKOするし、墓標のように突き立てる。
ムエタイ戦士ですら勇次郎は止められないのだ。
まあ、板垣作品におけるムエタイの位置付けを見ると、
止めるどころかネタになるのが精一杯ですが。

そんな勇次郎が拳を止めるのは異常事態でもあり、緊急事態でもある。
いったい郭海皇は何をしたのかッ!?
ついでにズボンを下ろしたとか、金○握ったとか、射○したとか、各地ではめちゃくちゃな予想がされました。
さすが板垣恵介、ナチュラルにネタになっているッ!!

「バカかてめえェッッ」
「ふざけんなアァッッッ」

勇次郎らしからぬなんだか青春している叫びだ。
あんたは青春からもっとも遠い人間でしょ?
むしろ、この言葉は春成を2秒で瞬殺してしまった息子に捧げてもらいたかったのだが。

郭海皇はまばたきひとつすることなく立ち尽くしていた。
動いている部位はない。
医師がすばやくやってきて、聴診器を当て瞳孔を確認する。

医師が来るのがやたら速いと思うが、
郭海皇は何せいつ死んでもおかしくない爺さんだし、
勇次郎が相手ではいつ殺されてもおかしくなかったので医師は前もって準備していたのだろう。
そして、診断の結果は…

「老衰です…」

逝っちゃった。
さすが146歳まで生きて、勇次郎の攻撃を何度も受けた挙句、自身もハッスルすれば逝くだろう。
むしろ、ここまで生きていたのが不思議である。
しかし、老衰という結果は意外だ。
勇次郎の攻撃をまともに受けたのだから、死因は外因性によるものが妥当だとは思うが…

その告知を受けた勇次郎はJrにコケにされた時のように身体を奮わせる。
てっきり足なり拳なりをドカンと闘技場に叩きつけると思ったら、何もせずに立ち上がる。
さすがに格闘漫画にあるまじきダメージを受けた闘技場に、
さらなるダメージを与えれば崩壊してしまうと思ったのだろう。(たぶん)

観客たちも無念そうに目を閉じる。
この念は愛する人が死んだというよりも、世界に一匹しかいない幻の珍獣が死んでしまった、というモノだろう。
ムエタイのパンツを脱がせたり、武術省のお偉いさんの利き腕を斬り落としたり、息子に残酷な言葉を投げかけたりする爺さんが愛されるわけありません。

「な…なにもこんなときに…」

「…………」

驚愕&解説コンビの刃牙と烈老師もきっちり反応する。
だが、本部や加藤ならもっといいリアクションしていることだろう。
まだまだ彼らも修行中の身のようだ。

勇次郎は気を弛緩させ日米連合軍のところ帰っていく。
しかし、背中に鬼が宿っているままだ。
こうなったら日米連合軍を喰ってストレス解放か?
もし、そうなるのならまっさきに刃牙を喰べてください。

いままでどこにいたのか日米連合軍が集まっている。
さりげなく烈老師が日米連合軍に仲間入りしている。
さりげなく繋がりで寂海王も勝ち組み入りしています。

「フン…」
「くたばっちめェやんの」

連中を喰うかと思われたが勇次郎の発した言葉はどこか悲しいものだった。
ここまで悲しい表情(かお)をした勇次郎は始めてである。
生涯で最大の敵との戦いがこんな幕切れなのが不服であるどころか寂しいのだろうか。

(これは…勝利(かち)なのか?)

格闘漫画的に言えば敗北(まけ)です
日米連合軍VS中国連合軍の戦いにおいて、
盛り上がりもないまま瞬殺された戦い2つ(主人公の関与あり)、
勝手に勝利宣言したネタ試合1つ、
まともな戦いはオリバVS龍書文と勇次郎VS郭海皇くらいだ。
まぁ、板垣ファンならばこの展開も圧勝であることを肯定しなければいけないのだが。
ついでに君たち全員、大擂台賽は海皇襲名のために開催された大会だということを忘れていますね?
海皇の名を外に出してはならぬという郭海皇の思惑は見事に成就している。

 

その頃、中国連合軍の控え室で異常事態が起きていた。
心電図に微弱な反応が起こり、それは大きなものへとなっていく。
医師たちは冷や汗を流して驚く。
老衰で死んだはずの郭海皇が起き上がったのだ。

「武術の勝利(かち)」

郭海皇が静かにつぶやいたところで次回へと続く。

どうやら、郭海皇は自らの技術(わざ)で一時的な老衰を起こし仮死状態にしたようだ。
心臓は自分の意志で停止させ、自分の意志で再び動かせるものなのか?
DIO戦の承太郎もビックリな荒業だ。
どうやら郭海皇は生粋の妖怪爺らしい。
そして、これは郭海皇だからこそできるものなのだろう。
あの勇次郎の目ですら欺いたほどなのだから、中国4000年の粋が込められているはずである。
なんだかマジックに4000年かけたような感じですが。

ところで、「武術の勝利」発言について。
武術というものは相手を倒す技術ではなく、自分が生き残る護身の術である。
相手を倒すというのも護身の延長線上にある行為である。
極論、負けても生き残る技術が武術であるといえる。
そんな中、郭海皇は自身に迫る絶対的な死を4000年の叡智で潜り抜け生き残った。
郭海皇の言う通りこれは武術の勝利というより他ないだろう。
試合に負けて勝負に勝った、というやつだ。

さて、気になるのはこれからの展開だ。
実は勇次郎は郭海皇の策略を見抜いていて、すぐさま再戦を挑む可能性がある。
そうなると郭海皇は武器を残していないので大ピンチだ。
さらなる技を炸裂させる可能性もあるが、だったらもっと早く使え、と言われかねない。
だが、武器が残っていないのは勇次郎も同様なので、
この二人の戦いをこれ以上長引かせるのは難しい。

それとも、211話の「残り4名4試合儂が全部やる」発言通り、
日米連合軍全員を狩りにいくのだろうか?
だとしたら、バキを速やかに屠ってください。
しかし、これも郭海皇の武器不足が問題となる。
そこでドイル戦の烈老師のように武器を使うかもしれない。
だが、勇次郎戦で見せた技術以上のインパクトを与えるのは難しいだろう。

とりあえず、ここから勇次郎と郭海皇を動かすのは難しい。
よってこれからの展開の予想がつかないので、次号を待つよりないだろう。
ここで郭海皇がさらなる強者を連れてきたら、いつ終わるの?という不安感に襲われる。
しかも、そのさらなる強者が自分の息子だったりしたら、アチャーな感じだ。
範馬の血にまた喰われますよ、春成みたいに。
もしかしたら、今回ちょこっと出てきた中国連合軍の恥さらし春成&範海王が復活するかもしれない。
復活しても賞味期限がとっくに切れているので、すぐ残飯行きですが。



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