第260話  ファイト


負けてない!!
表紙の刃牙が猛る、猛る、猛る――猛るッ!
勝ってもいないけどなッ!
むしろ、戦ってすらいません。
なお、今回も刃牙は出てきません。
それでいいのか、主人公。

 

「ヤァ」

Jrは四肢にギブスを巻いて、此度もまたファミレス『オーガスト』に梢江に逢うために来ていた。
松葉杖なしでは、とても立っていられないほどの重傷だ。
なのに、どうして、わざわざ梢江と逢おうとするのだ?
あんたはそこまでして梢江に逢いたいのか?
愛というものは時として哀になっている。

今回の梢江の服装は白を基調として、ちょっとだけお嬢様っぽいものだ。
これが梢江以外ならイケているだろう。
当然、梢江ならイケません。
ぶっちゃけるとセーラー服を着たラオウとかよりも、梢江の方が破壊力があると自分は思います。

また、今回の梢江はどことなく餓狼伝BOYに出てきた伊波さんに似ている。
だからといって萌え度が上昇しているわけではありません。あしからず。
なお、伊波さんも萌えられるような外見をしていません。

「会うたびにケガが増えて………」

「ハハ…」「ソウ…」
「大切ナノハソコデス」

Jrは自分のケガをネタにして、また梢江を絡めようとする。
しかし、梢江はブスッとしたままだった。
その仕草はモチロン可愛くない。
それでこそ、松本梢江だ。

「会ウタビニケガガ増エテル」
「ドウイウ事ダロウ」
「ボク等ハ何度モ会ッテイルトイウコトサ」

Jrは情熱的に責める。
だが、そこまで責めたいものなのだろうか?梢江は魅力的なのだろうか?
まぁ、強いんだ星人の考えは理解できません。異星人だし。
そして、梢江は異星人にとっては最上級の美少女なのだろう。
地球人にとっては…いや、あえて言うまい。

Jrの熱を梢江は「友達だから」(友達を強調)とあっさり返す。
心臓を強引に抉り取られるような笑顔付けで、だ。
なんだか、ストーカーを目の当たりにした妙齢の婦人のような対応だ。
慣れているのか?
慣れているんだろうなぁ。ソッチ系の死刑囚にはイロイロな意味で人気だったし。

その後、Jrは梢江の好みやクセなどを細々と述べる。
すげェ。ものすごいまでの梢江萌えだ。
そこまでして萌える価値はあるのか?いや、ない。

「愚地館長とはどうなったの」

梢江が唐突に会話を切った。
Jrのペースに巻き込まれる前に会話を中断ッ。
なんという手練手管だ。ほう、柔を使いよるか。
松本梢江、剛だけでなく柔とも使いこなしている。

「お砂糖はナシ」「ミルクは一つだったわね」
「カップ」「持てる?」

いきなり会話を切ったと思ったら、今度はJrが梢江の嗜好を当てたように、梢江もJrの嗜好を当てた。
ブレーキとアクセルを駆使した非常に高度な駆け引きだ。
今、ファミレスは戦場になっている。
根本的な問題として、梢江がファミレスに入ってきた時点で戦場と化していますが。

「カップ持てる?」の姿は実に挑発的だ。
イヤ、重傷人にその態度はないだろう。
さすが、松本梢江。理屈が一切通用しない。
それはもう「Jrよ……」「必ずカップ持つんだ」「途中で落としてみやがれ……」「コロす」と、松尾象山並みに凄んでいる。
おそらく、持てないのなら顔面がカップに叩きつけられていたことだろう。

「ドッポ・オロチトハ」

会話が中断したり、再開されたり、流れがごちゃごちゃしていた。
しかし、Jrは個人の嗜好の話ではなく、独歩の話をすることにした。
本当は梢江の細かい癖についても話したかったのだろう。
鼻水流すほどに涙を出したり、ヤクザや拳法家問わずに殴りかかるところとか。
そんなことを言えば、本気で消されかねませんが。

 

どちらのカップなのかは不明だが、飲み干されるほどの時間が立った。
結局、カップを持てたのかは謎のままだ。
まぁ、Jrが存命しているということは無事カップを持てたのでしょう。

「ひどい負け方……」

拳を砕かれ、脚を壊された。
たしかにひどい負け方だ。
しかし、「ひどい負け方」という言い回しに梢江の雌度が伝わってくる。
「ひどい戦い」ではなく「ひどい負け方」なのだ。
梢江は身体を壊されるほど残酷な戦いを卑下しているのではなく、無様に負けたJrを卑下している。
やっぱりコイツ、癒す気なんかちっともありゃしねェ。

「僕ハ負ケテナイ」

Jrは強がる。
梢江は「オメェは負けたんだよッッ」と言わんばかりの冷たい表情を見せる。
その眼光が恐ろしかったのか、「俺が悪かったァッ、勘弁してくれェッ」と言わんばかりに目を逸らす
このやり取りが二人の力量の差を如実に語っている、と思う。

怒りが胸の裡にあるのか。
梢江はレモンティー?をグイっと飲み干す。
Jr、なぜか「ア…熱イヨ…ッッ」と大慌てッ!
なんで、この人はこんなに焦るんだろう。
会話でずいぶん時間が経過しているはずだから、レモンティーはすでに冷めているはずだ。
おかわりでもしたのだろうか。
それも沸騰しているレモンティーでも頼んだのだろうか。

「カッコわる」

一気飲みでJrを動揺させておいて、止めの一撃を梢江は放った。
本当に癒すつもりなんかない女だ。
肉体的に傷ついたJrを、さらに叩きつけた。
松本梢江、容赦なし。

 

そんな梢江の言葉が効いたのか、Jrはホテルで呆然としていた。
梢江の「なんだか男っぽくない」という言葉が胸に突き刺さる。
Jrは3連敗した。
そのため、自分が磨き上げたアライ流に一種の不安を覚えているのだろう。
勝てない格闘技は無価値だ。(ムエタイはかませ犬になれるのでそこそこの価値はあります)
加えて女性関係でも悩んでいる。
最愛の女性にあんなことを言われたら、悩むに決まっている。
だが、悩む必要はない。忘れてしまえばいいのだ。
というか、Jrは自分の未来のためにも、梢江のことは忘れよう。
梢江と結婚すれば数日間ノンストップで布団の中の戦いをすることになるし。

思索を巡らせる中、突然ボーイがやってきた。
Jrに客人が訪れたようなので呼びにきたようだ。
場所はホテル地価2階の孔雀の間、Jrの記憶ではパーティ会場らしい。
もッ、もしや範海王の復讐かッ!
だが、範海王なら今のJrでも普通に勝てそうだ。
あの人は引っ張りに引っ張って負けたから、どうにも悪い印象しかない。

ボーイはJrの質問を笑顔で流している。
なんだか百戦錬磨の雰囲気だ。
間違いない。こいつ、絶対に徳川の回し者だ。

孔雀の間への扉が開かれる。
そこにいたのは範海王ではなかった(当然だ)
超大物マホメド・アライ(父)だッ!!
しかも、バンテージを巻き、ボクサーシューズを履いている。
完全な戦闘モードに入っていた。

いつの間に日本に来ていたのだろうか。
すでに壊れていたのではないのだろうか。
だが、ジャーナリストと会話した頃の危うさはもうなくなっている。
今なら1分以上動けそうだ。

「父さん…」
「どーしてここに…ッッ」

Jr、驚く。
恋人と一緒に布団に入っていたら、突然親父が現れて、説教されるような衝撃があるのだろう。
何はともあれ神出鬼没なお父さんだ。
バキ世界のお父さんは神出鬼没な法則があるようだ。
某鬼父とか。

「ファイト」

「ファイトって…」「父さんが……?」「誰と?」

「お前とだよJr.」
「ノーグラブだ」

アライ父、神出鬼没に出現して、息子に挑戦状を叩きつけた
どうして、戦う気になったのか、一切不明だ。
というか、突然すぎる。
脳の処理がついていかねェッッ。
怒涛の新展開になりつつも次号へ続くッ。

 

アライ父は何のためにやってきたのだろう。
瀕死のJrをボコるため…ではないはずだ。
現在のJrは連敗続きで凹んでいる。
そこでアライ父はアライ流の真髄を教えるために、日本へ馳せ参じたのだろう。
道に迷った息子を導くのは父の役目だ。
アライ父は立派な親父といえる。
これが範馬父だったら、ワケもなく殴るか説教するだろう。

あえて、梢江の話をしよう。
今回の梢江はいつにもまして冷たかった。
今の梢江はツンツンしている。
しかし、この状態を裏返せばデレデレして、萌え度急上昇だ。
つまりはツンデレッ。
そう、梢江はツンデレキャラだったのだ。
強力な萌え要素を武器にベストオブベストヒロインの座を梢江は狙っているッッ。
もっとも、その狙いどころは大きく間違っているような気がしますが。
火事から身を守るためにガソリンを全身に浴びるくらい間違っている。


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