第272話 覚悟


金的を食らってあんな顔をした格闘家は、もう格闘家として再起不能だ。
例え、玉が元に戻っても、それ以前の部分でナニかを失っている。

あとはもう本部に遅れを取ることしかできなくなる。
さて、Jr.どうやって逆転するッ!?

メキュッ

これは決して玉を潰したから、次はと棒を捻り上げている音ではない。
刃牙のダメ押しのチョークスリーパーの音だ。
なお、棒を捻ったからといって「メキュッ」という音がなるのかは不明。
気になった人は試してください。
硬くなっていたら「メキュッ」と鳴りそうな気がなんとなくだけどする。

それにしてもこの人、本当にダメ押しが大好きだな。
何というかここ数年の数少ない勝負のほぼ全てでダメ押しをしているし。
シコルスキーと柳には放置プレイのダメ押し。
張洋王には恥辱プレイ連続のダメ押し。
李海王にはアッパーのダメ押し。
春成には何度もダメ押し。
もうダメ押しばっかりだ。
って、こいつ、この数年間たった4回しか戦っていないのか?

刃牙は遠慮なく締め上げる。
Jr.は反撃することもかなわずただ締められる。
物好きな観客もこれには黙り込む。
梢江も相変わらず可愛くない顔でガチガチ震える。
っていうか、ガチガチ震えるから可愛くないんだ。
ふるふる震えろ。

過去、柴千春に「公開殺人を見せるわけにはいかない」と宣言していた徳川老は即刻「やめいッッ」の体勢に入る。
Jr.は観客にも、梢江にも、徳川老にも、読者にも見捨てられた。
ここからどうやって挽回するッ!
むしろ、
このまま殺される気満々じゃねえかァッ!!

バカ

突如、刃牙がパンチを受けてふっ飛んだ。
体勢的にJr.は刃牙にパンチを当てることはできない。
というか、もう意識ありません。
パンチ、打てません。

刃牙にパンチを当てたのは他ならぬアライ父だった。
あんな笑顔をする父親でも、親馬鹿だ。
息子の死の危険を黙って見守ることはできないのだろう。
にしても、なんという動きの速さだ
こいつ、絶対にベストだ。ベスト以上だ。

「伝説のパンチ…」
「光栄だ」

殴られた刃牙は怒りを露にするのではなく、むしろ笑っていた。
マウント斗場に憧れていた刃牙だ。
アライ父にもいつかは殴られたいと思っていたのか?
でも、この言い方には「伝説のパンチだけど、それを食らった俺は立っている」という意味をどことなく感じる。
相手を評価しつつ、自分の評価を上げる驚異の話術だ。
恐るべし、範馬刃牙。

刃牙はアライ父に止められなければ、Jr.を殺していたと告白した。
刃牙の精神はいつの間にかにものすごい暗黒面に踏み込んでいたようだ。
いつ辺りからだろうか?
明確な殺意を持って戦ったのは梢江がシコルスキーにさらわれた時だ。
あの時はビルから突き落とす、不意打ちをしまくる、バケツをかぶせて殴りまくる、生で金玉を蹴るなど、
もはや人間性を疑われる怒涛の刃牙ラッシュをしている。
まぁ、シコルスキーがロシア人ということも少なからず影響しているだろう。
板垣漫画のロシア人は本当にひどい目に遭う。

「相手から命をも奪(と)ろうというのに」
「自分の命は差し出していない」
「殺られずに生きようとしている」
「殺られて当然だ」
「飛び込んできたときのアンタのような」
「ホンモノの覚悟を持たなきゃな」

ヒデェ、Jr.をヘタれ発言だ。
でも、本当にヘタれだ。
怪我を強引に完治させた上に、いろいろな期待を背負ったのに、このやられっぷりだ。
早く起き上がって復讐しろ。
金玉殴ればいいんだ。金玉を。

刃牙は倒れたままのJr.に背を向ける。
あれ?こいつ、ナニを倒れたままでいるんだ?
おい、コラ。
このまま、倒れたままだとチャンピオン裂くぞ。
そして、勇次郎の方向を向いた刃牙は衝撃発言をする。

「親父…」
「俺と戦ってくれ」

今までの伏線はいったい…
ごめん、チャンピオン裂いちまった。

…オイ、コラ。
この半年の間、さんざ刃牙とJr.の対決を期待させておいてオチがコレか?
猪狩、独歩、達人の期待を背負ったのに、その期待の全てを金的を終わらせているんじゃねえッ!!
なんというか、漫画太郎みたいにここ半年の連載をなかったことにしたくなった。
せめて、バキSAGAだけでも消したい
そうすれば、刃牙は柳にボコボコにされる。
ついでにやってきたシコルスキーにもボコボコにされる。
万事解決だ。

読者の殺意とは引き換えに、勇次郎は満面スマイルだ。
あ、でも、鬼笑いだから殺意付きかもしれない。
できれば、今すぐジャガってもらいたい。
もう空中で何回転もさせてもらいたい。

「その試合を最後の防衛線とし――――」
「俺という物語の締め括りとしたい」

出た…出やがった…
最終回発言だ。
もういい、刃牙。
お前は出てくるな。喋るな。扉絵だけにいろ。
こんな物騒な発言ばかりされると本当に困る。

それとも、最初から殺されるつもりで勇次郎に勝負を挑むのか?
だから、「俺という物語の締め括りとしたい」と言ったのか?
そして、「グラップラーモトベ」が始まる。
…弱そうな響きだなぁ。

そして、次回へ続く。
次回といっても、今週のチャンピオンはバキ二本立てだから、次のページを開けば即続きだ。
そんなわけで後編をお楽しみに。

何だか二本立てにした意図が分かった気がした。
こんな展開にして次週までお預けにしてしまっていたら、各地で暴動が起きかねない
でも、焼き石に水的な工夫だった。

この展開を覆すには、Jr.が起き上がって刃牙の金玉を殴るしかない
「本当ニ甘イ…ヤハリ、少年(ボーイ)デス…コレハファイトジャナイ。(金玉の)潰シ合イナンダヨ」と、
精一杯の虚勢を張る以外に復活の手段はない。
…ていうか、Jr.って弱かったんだなぁ…
命のやり取りで独歩、渋川、ジャックに敗北した。
であるのに、刃牙に勝てる道理はない。
もうボクシングで対決すればよかったのに。
そうすれば金的封じになるし。


Weekly BAKIのTOPに戻る