バキ道感想 第53話「地上最無差別」

今回の巨漢は粘り腰だ!
今までの巨漢なら投げられた時点で勝負ありなんですけどね。
巨鯨はかろうじてではあるが生き残っている。
とはいえ、巨漢の一寸先は闇。
いつ死んでもおかしくはない!


「まいったなァ~~……」

巨鯨の勢いを付けた張り手を前に渋川先生はまいったと述懐する。
かつてはジャックのタックルに不覚を取っている。
その苦い経験が想起されたのだろうか。

だが、渋川先生は円熟してなお経験を重ねている現役の達人だ。
得意技の身をかがめ足元を崩す技が炸裂した!
これは相手との体格差があればあるほど効果を発揮する技だろう。
何なら体格に大きな差がない柳にさえ通じている。
であれば巨鯨に通じないわけがなく見事に態勢は崩された。

手が地面に付くほど姿勢を低くすると言う相撲の常識にはない技である。
初見で見切ることは不可能だろう。
柳は受け身を取れたが、第一の犠牲者のロジャー・ハーロンは柵に激突した。
ジャック戦のダメージを残して落ち目だったとはいえ、反射神経自慢のアライJr.も手を地に着いていた。
これには巨鯨も倒れてしまうか?

「のこ…ッッ」

馬鹿な!? 巨漢が倒れない!?
いつもの巨漢ならこのまま倒れてしまうところだが、巨鯨はバランスを崩しつつも何とか堪えた。
相撲の辞書にない技を食らってこれは見事と言わざるをえない。
巨鯨は反応が速い上にバランス感覚にも優れていると鈍い上にすぐに倒れるのが恒例の巨漢の革命家である。

だが、大きく態勢を崩したことには変わりない。
無防備になった隙に渋川先生が喉仏に人差し指を突いた!
この足元タックルからの人差し指の一撃はロジャー・ハーロンを瞬殺したコンボですな。
懐かしい一撃である。
人差し指で喉仏を突くチンピラにも使っているし渋川先生の得意技のようだ。

いつもの巨漢ならこのコンボで無様に失禁して死ぬ。
何なら最初のタックルで勝負ありだ。
だが、巨鯨は違った。
まさかの張り手で即カウンターだ!
馬鹿な、巨漢なのにダメージがない!
身体のデカさは常人の数倍であると同時に、受けるダメージも常人の数倍の巨漢が怯まない!?
珍事そのものである。一年戦争の戦場にキティちゃんが現れるくらいの珍事だよ。

そして、その張り手を渋川先生はガードで受け止めた。
だが、勢いを殺し切れず吹っ飛ぶ。
って、渋川先生がガードかよ!?
連載史上初の珍事である。
全ての攻撃はかわすか食らう渋川先生がガードした……それも巨漢相手に……
これは巨鯨が巨漢故に飛び上がって喉仏を突いたため、地面に脚がついておらず合気の極意である足捌きを使えなかったのが大きいか。
巨鯨の体躯が間接的にではあるが攻撃に生きたのだった。

吹っ飛んだ渋川先生だったが悠々と着地する。
だが、滝のような冷や汗を流していた。
ガードしたのは予定調和ではなく不測事態であることがわかる。
巨鯨、まさかの生存に加えて反撃である。
不測事態にもほどがある。

もっとも、巨鯨にもダメージはあったようで同じように滝のような冷や汗を流している。
巨漢にはそれが似合うが、まさかの食い下がりを見せているのは事実だ。
相撲にない攻撃に対応し続け、ついにはガードされたとはいえ達人に一撃を当てるという快挙を成し遂げている。
てっきり最初の投げどころか重力に押し潰されて負けるかと思っていたよ。
もしかして、巨鯨は本当に強いのか?
いや、油断させるためのブラフかもしれない……

ここで渋川先生は開いた両手を前に向けるいつもの構えを取る。
巨漢は油断のならない相手と認識したようだ。
対して巨鯨は再び腰を落とす。
力士は瞬発力はあるが持続力がないのが定説だ。
いくら10秒の密度が濃くともその10秒が過ぎれば困るわけですよ。

だが、巨鯨は毎回仕切り直すことでその瞬発力を活かそうとしている。
持久力不足で攻め続けることができないのなら、無理に攻めを持続させる必要はないと判断。
瞬間的な攻めを繰り返すのが巨鯨の選んだ作戦のようだ。

定石なら相手は体格に劣るのだから攻め続けるとなるところだが、渋川先生はまったく経験したことのない戦法を取って生きている。
ならば相手の弱点を突く、つまりはある意味では相手に合わせる戦い方をすると乗せられかねない。
ならば、自分の長所である瞬発力を活かした戦法を取る方がむしろ安全ということか。
自分の長所と短所を理解した見事な組み立てと言えるだろう。
巨漢はもうちょっと迂闊な戦法を取りそうなのに、巨鯨は愚鈍さが感じられない。
大豪院邪鬼のように実は見た目よりも小さいとかそんなことはないだろうな。
オッス失礼します!

その巨鯨に対して渋川先生は無防備に近付いていく。
あまりにもごく普通に近付いたからか、あっという間にゼロ距離だ。
こうなるともはやぶちかましの距離でもない。
そもそも一番勝っているリーチで戦えない距離なのが不味い。
散々褒めたのに巨鯨、懐が甘かった。
やっぱり巨鯨は巨漢のようだ。

「他でもねぇ」「大関…」
「俺と組まねぇか………?」


渋川先生の発言は合気と相撲で組むという意味では当然なく、組み合った勝負を望んでいたのだった。
それに対して巨鯨は……笑った。
歓喜の笑みというよりもやや侮辱が入った笑みだ。

もはや油断はないはずの巨鯨だが、これには気が緩んだのだろうか。
あっさりと誘いに乗り達人の帯を掴む。
力と力の勝負……に見えて、相手の力を利用できるのが合気である。
加えて巨鯨と相撲の持ち味であるリーチと瞬発力による勝負を捨ててしまっている。
これはむしろ罠にかかったと見るべきか。
巨鯨はやっぱ巨漢っスね。

巨鯨は巨漢とは思えぬ粘りと的確な戦術を見せたのだが、一方で巨漢らしく罠を踏むのだった。
渋川先生の罠が巨漢を墜とすのか、あるいはそれを体躯でねじ伏せるのか。
しかし、この試合は試合にさえならないワンサイドゲームが予想されていただけに予想外の方向に転がっている。
ここに本部がいたら「いくら合気でも力士の瞬発力には分が悪い」とか言っているところですよ。
本部なら言う。

ともあれ、どうなるのか。
次回へ続く。
だが、次週も休載!
ぐ、ぐぬぬ……
もうちょっと掲載と休載のバランスが良ければいいのですが。
いや、1:1だとバランスが良さそうでバランスが悪いので、3:1くらいの割合でお願いします……