バキ道感想 第59話「先鋒戦、決着」



ついに巨漢異例の長寿を誇った巨鯨が倒れた。
連載史上、ここまで長生きした巨漢はいないと断言してもいい。
特に大きさを押し出しているキャラとしては破格だ。
でも、巨漢に皆が求める生き方って瞬殺なんですけどね……


「勝負あり!!!」

巨鯨は地面に倒れ伏せた。
が、それと敗北は別。
まだ続く可能性もありそうだったがここでみっちゃんの裁定が入る。
勝負ありが入れば決着。それがバキ世界の絶対の掟である。
なので、勝負ありが入れば例え意味ありげな戦士でもそのまま負ける。範海王とか。
渋川先生に叩き付けられた巨鯨だったが自分の力で立ち上がる。
敗北したとはいえ、まだ余力があるのだった。
決着の一撃を受けたとはいえ、病院送りにはなっていない。
相撲ルールで敗北を認めたが、古代相撲ルールならまだ戦えるのかもしれない。
巨鯨は渋川先生に恐怖したことを語る。
渋川先生は魔術同然の合気を使った。
合気を押し返したものの人生初体験の異常事態が何度も起きていたことは想像に難くない。
それに対する解法が力だけというのも脳筋なのだが、力だけでそれを押し通したのだから並大抵ではない。
巨鯨は間違いなくフィジカルならバキ史上最高峰だ。何か納得行かないけど。
巨鯨には余力がある。戦おうと思えばまだ戦えるのかもしれない。
だが、大人しく敗北を認め完全決着するのであった。
審判の裁定、戦闘不能が敗北の条件だが、一番の敗北は自身が敗北を認めることである。
勇次郎も刃牙に敗北を認めて完全決着している。ちょっと観念的だったけど。 そんなわけで巨鯨の完全敗北であり、渋川先生の完全勝利だった。

巨鯨はフィジカルという点では異常な強さを見せた。
やっぱり、ちょっと納得行きませんけどね。
表の大相撲でこれくらい強いのなら、今までの格闘家たち(金竜山含む)は何だってことになるわけで。
しかし、表の人間らしく命のやりとりがちらつくと心が折れてしまった。
圧倒的なフィジカルを持つ反面、メンタルに劣るのが巨鯨だった。 大人しく負けを認めたのもそのメンタルの脆さか。

そして、それは今後の大相撲力士全員に合致するであろう弱点であろう。
その点、地下闘技場戦士は全員が全員、命のやりとりを経験しており殺傷本能キラーインスティストに満ち満ちている。 ジョルノ並みに覚悟ができているのが地下闘技場戦士の強みだ。
力士のフィジカルVS地下闘技場戦士の覚悟の構図なのかもしれない。

これに対抗するには相手を壊すことを躊躇わないサイコパス力士が必要だ。 その点、最古の横綱、龍金剛はヤバい。
いきなり金玉を掴んでいるし、ゆうえんちでは倒れた力剛山に四股を叩き付けるという凶悪な男として描かれている。
なので、龍金剛の弟子なんかがいれば期待できるかも。
いっそのこと、龍金剛本人が出てくるとか?

「神技合気を「力」でハネ返した――――」「人類初の男ッッ」
「その神話的底力を―――」
「十分に見せつけたと言えますッッ」


ともあれ、巨漢で扱いが悪いかと思いきや、何だかんだでけっこうな好漢な巨鯨であった。
なので、負けはしたものの実況に讃えられる。
巨鯨自身も満足げな笑みを浮かべている。
巨鯨は強さ的にも扱い的にも破格の巨漢だ。 負けはしたものの綺麗な敗北であった。
悪い言い方をすればちょっとネタにしにくい。

今までの巨漢ってすぐに情けなくなってすぐにやられていたんですけどね。
安藤さんとかリーガンとか。どっちも同じ人物をモチーフとしているのが筋金入りだ。
それだけに右目の安否が気遣われる。
ここでインタビューで平気そうだったから右目は無事……は素人考えである。
強さにあまり納得はできないが好漢なのは事実だし、失明という末路は報われない。
巨鯨の右目の続報を待ちたいところだ。



でも、右目が若干見開いているように見えるから平気か?
一時的に見えなくなっているだけかも。
この辺の加減をしていたのならさすが達人なのですが。

「日本文化はやっぱイイッッ」
「日本武道はやっぱイイッッ」


渋川先生と巨鯨は一礼と共に闘技場を去る。
この礼節をアナウンサーは讃え、日本文化まで讃えるのだった。
ちょっと国威発揚のために無理矢理褒めてません?
相撲という日本オブ日本の格闘技が強いという事実は国威発揚には打って付けかもしれないけど。
とりあえず、刃牙道の初っ端に出てきたアトラスは大相撲には勝てなさそう。

こうして礼と共に試合を終えるのは珍しい。
目の前の相手をとにかく叩き潰す試合が多かっただけに意外と初めてのことかもしれない。
主人公の刃牙は地下闘技場でJr.を殺しかけたりしたので礼節どころではなかった。 いいんスかね、主人公がそれで。

「震えが止まってくれンわ」

渋川先生が控え室への廊下を歩いていると独歩と対面する。
ここで渋川先生は試合が終わってなお震えが止まらないことを語るのだった。
巨鯨を前にしても例の幻覚は見えなかったから危険な相手ではなくとも、十分な脅威だった。
合気を力のみで完全に破ったのは巨鯨が初だ。 渋川先生が怖じるのも道理だろうか。
力のみで破ってしまったから、オリバの株がヤバいことになっているんですけどね。原油並みにヤバい。
「「ああいうバケモノもいる」――――――――」
「――ではないぞ独歩」
「ああいうバケモノしかいない」「そう考えるのが自然だぜ」


渋川先生は巨鯨との戦いを通じて大相撲の手強さを感じるのだった。
モブ格闘家軍団では大相撲軍団の強さは正直わからなかった。
岩波混沌カオスの名前が面白かったくらいだ。
だが、渋川先生と激闘を繰り広げた以上は本物! 本物だ!
疑るなァ!!

その大相撲との戦いを前にして独歩も震える。
だが、それは武者震い。
人間凶器は大相撲との戦いを前にして燃え上がっているのだった。
何せ独歩のまともな試合はJr.戦以来だ。
範馬刃牙ではロクに戦わなかった。
一応、船井零は倒しているがあれをまともな試合とは言い難い。
刃牙道では有名の何だぁテメェである。あとギョウザ食べた。
刃牙道は独歩にとって大不況も大不況であり恐慌もいいところだ。

なので、独歩には実に10年以上振りにまともな見せ場が来るかもしれない。
そりゃ武者震いが止まりませんよ。
ここで格好いいところを見せることができたら往年の格を取り戻せるかもしれない。
というか、最近はコラ素材としてしか見ていないので、そろそろ強いところを見せて欲しい。

逆にここで負けたらもはや切腹ものである。 二度と見せ場はやって来ないと言っても過言ではない。
合併号なので再来週の次回へ続く。
独歩との試合は休載少なめで進んでくれれば助かるんですけどね……