刃牙道感想 第49話「水準(レベル)」

本部が烈の前に立ちはだかった。
仲間を守護るためにあえて敵対する!
うむ、王道ながらも燃えるシチュエーションですな。
勝つにせよ負けるにせよ美味しい展開になる。
問題はそれを本部がやっていることである。
身の程をわきまえい。


「「越え行け」…………」
「その意味するところ考えてみた」


さて、ここでシンキングタイム。
越えていけと言ってその意味を考えさせる辺り、本部の場違い感は本物のようだ。
話したことさえない第三者がしゃしゃり出たと思ったら越えていけだから当然そうなりますな。
お前はどこにいますか?

「あなたと立ち合った上」「なおかつ倒してのけなければ先へは行かせぬと――――」
「そのような意味にしか解釈できぬが」「本部さん」
「わたしの勘違いであって欲しい」


あ、メッチャ舐められてる! すっごい舐められてる!
これは本部も「貴様は本部流柔術を嘗めたッッ」とキレてもいい。
キレた先に何があるかって悲惨な未来しか待っていないけどキレてもいい。
花田! 加藤! 末堂! 本部流に命を賭けた人たちよ、今こそ本部に力を貸してくれ!

「烈つァん」
「勘違いじゃねェよ」


さて、本部はあっさりと烈の答えを肯定し、本当に立ちはだかる気らしい。
うわ、マジすか。止めておきなさい。
そんな読者の動揺を踏みにじるかのように本部はいとも簡単に烈の間合に入った。
無防備すぎてむしろ意表を突いた形であり、烈も思わず右の拳を本部の顔面に放ってしまうのだった。

かつての本部ならこれで鼻血流して冷や汗ダラダラだ。
だが、山ごもりした今の本部なら一味違うぜ。
烈の右拳をかわすばかりか、アゴで押さえて伸びきった肘に平手を打ち込む。

かわしただけでも驚きなのに最小限の動きでカウンターを狙っている。
まるで渋川先生のような立ち回りである。
事実、アゴで相手を押さえる技術は最大トーナメントの独歩戦で使っている。
渋川先生を先輩呼ばわりしたのは伊達ではなかった。

これを烈は飛び上がって衝撃を逃がして難を逃れる。
最小限の本部に対し最大限の動きで対処した。
これは烈が一本取られた形か。
無防備に近寄る相手に反射的に打撃を打ち込むというのはあまりにも安直な手であり悪手だ。
いつもの本部なら必勝であったが、今の本部は見事に対処してのけた。

「む………」「無事…ッッ」
「……ッッ」「凄まじい…」
「危うく肘を破壊されるところだった」


バカな!? 烈が本部の技量に驚愕している!?
あの烈をして肘を破壊される?
バカな!?(2回目) コイツ、本当に本部なのか!?

だが、たしかに完全に烈を手玉に取った本部の返し技は見事だった。
消力を無効化した。
どんなに脱力しても関節はどうしようもなく存在することは刃牙が柳の腕を極めた時に語っている。
多重関節にする真マッハ突きだって中身は普通の骨だ。
なので、先ほどのように腕を固めれば消力を無効化できるのだろう。
烈の跳躍が消力の可能性がなきにもあらずとはいえ、消力に対するひとつの対策を見せたことになる。
武蔵に消力はダメだという根拠は本部でも破ることができるからでもあるか。

「相手は拳雄烈海王」「手加減の余裕はないぜ」
「ブッた斬られるよりゃマシだろう」


手加減の余裕はないと本部が言った。
お前はむしろ手加減して欲しい身だったのだが、それは昔の話のようだ。
我々は認めねばなるまい。
本部は武器と公園はもちろん素手で道場でも強い。
信じられんがこれは事実なのだ。
もしかして、バキSAGAの裏で童貞でも捨てたのか?

そんな本部に烈は改めて踏み込む。
本部は油断ならぬ強敵と認めただろう。
間違いなく慢心はない。
おばけなめくじ相手にギガデインみたいな大人げのなさだが、今の本部はばくだんいわみたいにあまりやりたくない強さを秘めているのだ。

そこで初手は顔面へ掌底の横薙ぎだ。
裏拳のように逆手で行っている。
それを本部はいとも簡単に受け止め腕を押さえ込む。
その瞬間に本部のボディに崩拳を決めた。
あえて本部に腕を取らせた上でカウンターを取るという烈らしい真っ向勝負である。
先ほど一本取られたことを根に持っていそうだ。

かつての本部、主に金竜山に負けた辺りでは殴られたダメージで腕を離していたことだろう。
だが、今の本部は白目で耐えそのまま肩の関節を極めようとする。
これはかつて勇次郎を仕留めようとした技だ!

あの時は勇次郎が鬼の貌を出したことで力で破られたのだが、逆に言えば鬼の貌を出さなければやられていたということでもある。
勇次郎でさえ追い詰めた本部の必勝系である。
好きに技をかけろと言われてこの技を選んだことからも本部の自信が窺える。
誇張表現だって? まぁ、うん……

勇次郎でさえ追い詰めた技に烈はどう対処するのか。
本部の力に逆らわず、むしろその勢いを味方に付けた蹴りを顔面に決めた。
これにはさすがの本部も手放すより他なかった。
今度は本部が一本取られた形になるが、先の先を取り合う実にハイレベルな攻防である。
あの本部が烈にこんな勝負を演じていることが信じられない。
白熱しているはずなのに思わず笑いがこみあげてくるほどだ。

(強い…ッッ)
(烈さんの強さは当然として…………本部以蔵とはこんな水準
(レベル)だったのか!!?)


この本部の大健闘に克巳も驚く。
いやはや、そりゃ驚きますよ。
克巳の知っている本部は金竜山に惨敗した本部だ。
あの時の克巳には驕りがあったとはいえ、本部を本気で小馬鹿にしていた。
まぁ、小馬鹿にするほどの実力差もあったわけだが。

そんな本部が地球上で勝てる人間を探す方が難しいという烈に互角に渡り合っている!
克巳の驚愕はあまりにも、残酷なまでに妥当だ。
読者一同も同じように驚いている。
そして、思わずこのコメントには笑ってしまう。
やっぱり本部って作中人物から疑われるほどに弱かったんだ。

「さすがは烈海王…………」
「俺以上…………………なのだろうな」「しかし」


本気の烈には本部は敵わない。
いや、そもそも対等に渡り合った時点で何かがおかしい。
そこは本部も認めるところだった。
でも、けっこう渋りながら認めているので、実は俺の方が上かもとか思っていそう。
何よりその不敵な笑みが底知れぬ何かを感じさせる。本部のくせに!

「武蔵以上…じゃねぇ…」

(動画勢のくせに生意気にも)そう言って本部は武蔵と同じ人差し指を刀に見立てて握る構えを見せる。
何故、武蔵がこの構えを取ったことを知らない本部が同じ構えを!?
やはり、こいつの正体は宮本部なのか?
本部流柔術の源流は二天一流なのか?
この本部のさらなる深淵を前に烈は戦慄するのだった。

と、思ったら突如本部は驚愕し気絶する。
郭海皇が不意打ちしたのだった。
さすが中国を代表する武人だ。
卑怯も武のうちである。

「片手間にやり合える相手かや」
「オマエ……このまま続行
(つづ)けたら」「烈や」
「無傷じゃすまなかったぞい」


今の本部は容易い相手ではないと郭海皇も認めた。
郭海皇は本部を知らなかっただけに、本部がクソ雑魚ナメクジ解説おじさんというネガティブな先入観はない。
それだけに本部の実力を正確に見切ったのだろう。
今の本部は烈でさえ無傷で済ませられない強者! はい復唱!

郭海皇は無傷で比武の場に立つのは礼儀だと言い烈を休ませる。
刀で斬りかかったあんたがそれを言いますか。
ともあれ、そこまで言われると烈は引き下がらざるを得ない。
だが、倒れ果てた本部に礼はするのだった。
本部は烈に道を示せたのか。守護れたのか。
本部が秘められた実力を見せたのはいいけど、見せただけで何もできていないように思える。

さて、当日、地下闘技場はざわめきに満ちていた。
明らかにいつもと違う闘技場だったからだ。
もしや本部が解説か?
それはいつものことでした。
次回へ続く。


本部が強い!
バカな!? 嘘だ!? エイプリルフールはまだだぞ!? でも、ホントだ!?
短いとはいえ白熱したバトルだった。
本部が頑張っているという事実に思わず吹き出してしまったけど。
笑うなという方が無理だ。

とはいえ、もはや疑うまい。
本部は強い。これは事実であり真実だ。
烈と郭海皇のお墨を付けてもらったのだからもう野暮なことは言うまいて。
もっとも、我々はそのギャップに生涯悩まされることになるのだがね。

以前も書いたが板垣先生は本部を強者として描いている。
勇次郎の打撃を見切ったのは運とか偶然ではなく、おそらくは実力なのだ。
週殺されたとはいえ勇次郎相手にあそこまでやれば文句はなかろうよ。
柳を圧倒したことからあれがフロックでなかったこともわかる。

そりゃあ知識と解説の技量に反して、戦力の見立てと戦術の構築が甘いのは事実だ。
だが、実力そのものは高いのだ。ホントだよ。ホントホント。
金竜山に惨敗したことで印象が最悪になっただけなのだ。
まぁ、小石に躓いて全身複雑骨折って具合ですが。

なので、今の本部は独歩を1分以内に殺せるといかずとも独歩と同等の実力はあるだろう。
そうなると烈とも互角に違いない。
何があったのか。本部SAGAでもやったか?
いや、重要な儀式を忘れていた。
本部は山ごもりしているのだ。

山ごもりで強くなれば物事は簡単だが、バキ世界における山ごもりは侮れない。
何せ刃牙が山ごもりによって一気に一流になれるだけの実力を身に付けた。
本部だって一流になってもおかしくはない。
おかしくないよね?

実力を示した本部だが何をしたいのかはよくわからなかった。
その辺にオチを付けるのも本部らしいですな。
何かダメなんだよなー、この人。何かダメなんです。

とはいえ、本部が見せた武蔵の構えには何か意味があるのだろう。
あの構えは刃牙道を象徴するものだ。
意味がない方がおかしい。
つまり、刃牙道は本部道ということだな!

ともあれ、まだ本部には深淵が残されている。
おそらく本部フィーバーはこれからも続くだろう。
何か死体殴りの気もいたしますが、まぁ気にしないでおきましょう。
本部は弄るほど輝く素材なのだ!

さて、前回の中国武術史ネタを(当感想のリスペクト元の)とらさんに振ったらすっごい細かく書いていただけました。(今週の刃牙道追記
ありがとうございます。大変勉強になりました。
本部が強気なのは中国武術の歴史の怪しさを突いてのことなのかも。



刃牙道(5): 少年チャンピオン・コミックス