バキ道感想 第85話「溶けた」

刃牙が炎のスピードとパワーに圧倒された。
けど、刃牙が吹っ飛ぶのはわりといつものことなんですよね。
特に初見のライバルにはよく吹っ飛ばされる。
今回の刃牙はしっかり受け身を取っていたから、むしろ、ダメージが軽いくらいだ。
うーん、先行きが怪しい。


「強ぇえ~~~!!!」
「俺 強ぇえ!!!」
「相撲 強ぇえ!!!」


刃牙をブン投げた炎の心中は如何ほどのものかとなると恥ずかしくなるくらいに浮かれていた。
いや、ダメージ与えていませんがな!?
背後からの攻撃というクリティカルチャンスにミスってますがな!?
何かもう有名人に握手してもらったファンみたいな心境ですな。
いいんスか、それで。

とはいえ、相手は彼の範馬刃牙。
勇次郎と真っ向渡り合った怪物の中の怪物であり、地上最強の男と言っても過言ではない。
いや、刃牙の強さはあまりにも相対的過ぎるから、地上最強と呼ぶのは何か躊躇われるが地上最強である。
勇次郎本人も認めていたしね。
認めた直後に刃牙が投げ捨てているから、その理屈だと地上最強と呼ぶべきではないのか?

ともあれ、そんな圧倒的な格上の刃牙から一本取った。
そりゃ喜ぶというものである。
でも、ダメージを与えられていない。浮かれるには早すぎる。
この時点で炎の目的は「刃牙に勝つことではなく刃牙に善戦する」にすり替わっているのかも。
ちょっとこれは勝てるメンタルじゃない。
いや、メンタルが勝ちに向かってもフィジカルの差が絶望的だから諦めるしかなさそうなんですけどね。

「大相撲ってやっぱ―――」
「最強サイコーの格闘技だ!!!」


一瞬とはいえ刃牙を上回る動きを見せた。
それもこれも相撲だから! 相撲サイコー!
でも、炎が見せた立ち回りは相撲じゃなく、むしろレスリングのものだった。
あれを以て相撲最強サイコー!と誇るのはやや無理があるような……
これが刃牙なら範馬の血ってやっぱ最強サイコーの血族だ!と悦に浸る。
……それよりなら相撲最強サイコーの方がまだいいか。

あるいは小兵の自分が地上最強に一矢報いるまで鍛え上げてくれた相撲がサイコーってことか?
うーん、何か誤魔化しがあるような。
ともあれ、自分の格闘技に誇りを持っているのは良きことだ。
バキ世界でこうした主張をする人物はあまりいない。
烈海王という大横綱が存在するけど、数としてはあまりいないんですよね。

この試合を独歩、渋川先生、花山は刃牙と克巳が居座っていた観客席最上段で見守っていた。
入場口辺りで見てあげればいいのに。
あと克巳がいない。負けた後の行方がわからないからちょっと心配ですね。
宿禰がいないのはいつものことなのでもう慣れた。
……お前のライバルの試合なんだからちゃんと見ておこうよ。

独歩と渋川先生は刃牙が後ろを取られたことと投げられたことに注目していた。
炎はあの刃牙を上回る速さと力の持ち主なのだ。
でも、刃牙さんは最初の一本目は遊ぶからな。
刃牙の強さは相手によって変わりすぎる。
勇次郎と真っ向殴り合うこともあれば、千春相手に妙に手間取ることもあると、何とも相対的である。
特に顕著なのがズール戦で、マウントポジションを力だけで破れるほどの差があったのに不意打ちで一度は負けている。
なので、この結果を絶対値として信じ切ると危険だ。

炎は速さと力を見せた。
あと握られた手がいつの間にか離れている技も一応見せている。
この結果を受けて刃牙も様子見を止めたのか、刃牙はいつものファイティングポーズを取る。
でも、いつものとは違って拳を握っていない。開手だ。
目線も下げているし何ともやる気なさげである。

「え…………」
「…~~~~~」
「マジかァァ~~~~~~」


だが、炎のイメージには自分を遙かに上回る圧倒的な体躯の力士が映る。
身長が3m以上はあるまさに巨人だ。
妖術師刃牙は自身のイメージを相手に見せて圧倒する妖術を持っている。
さらに刃牙は厄介なことにイメージと強さがちゃんと釣り合っている。
自分以下の強さのイメージを相手に見せる妖術を持っているのだろう。
範馬刃牙の技術は格闘技だけでなく妖術にも及ぶのだ。
何書いてんだ、俺。

「俺は それよりデカくて強ぇえぜ」

刃牙は何が見えたのかを問う。
炎はやや悩んだ後に何も見えていないと否定する。
これを受けて刃牙はデカくて強いと凄み、炎は圧倒されてしまう。
はぐらかすことが多い範馬刃牙流話術だが、今回はしっかりと相手を圧倒できたようだ。

「デカいのはダイスキなんで…」

炎は巨漢と戦ってきただけにデカいのは大好きと言い返す。
が、その言葉は結局刃牙のイメージが見えたことを肯定してしまっている。
刃牙に強がりを見透かされてしまい精神的な優位に立たれてしまったと言えるだろう。
これは刃牙が舌戦に長けるというよりも炎が下手だったのかも。
相撲では短期決戦故に言葉を用いた心理戦が入り込む隙間はない。
こうした技術が育つ土壌がなかったのだろう。
にしても、デカいのは大好きって曲解できそうな台詞ですね。
梢江にでも言わせておけよ。

「後日 小結 炎は述懐する」
「刃牙の――」
「左手が――」
「溶けた」
「液体レベルにまで脱力を極めた」「軽打ジャブであった」


ここで刃牙は得意のゴキブリ化による打撃を放った。
対勇次郎のために編み出した技だが、すっかり頻用されるようになった。
単純に動きが高速化するという応用の幅が広さを持つから、刃牙が愛用する理由もわかるか。

今回のゴキブリ化の特徴は全身ではなく、身体の一部のみをゴキブリにしたことだ。
ゴキブリダッシュは非常に強力な技だが、一方でその初動を潰されることも多かった。
全身のゴキブリ化は一瞬では終わらず溜めが存在するからだろう。
実際に勇次郎にゴキブリダッシュを放った時は、その脱力の瞬間を指摘されている。

そこで刃牙は左手だけゴキブリ化した。
全身をゴキブリ化した打撃ほどの重さはないけれど、必要十分な速さに加えて僅かな時間でゴキブリ化できるのだろう。
戦いにおいて常に全力を引き出す必要ないのだ。
それよりも必要な力を確保しつつも隙を減らす方がより賢く実戦的である。
このゴキブリジャブはゴキブリダッシュがより洗練された形と言えよう。
変態技が多い刃牙としては珍しく理に適った進化である。
ゴキブリ化そのものが変態技の最右翼なのは置いておくとして。

ゴキブリジャブは炎の顔面に完全に入る。
為す術もなく尻餅をつくのだった。
それだけならまだしも、力士の象徴とも言える髷が解けた。
相撲最強サイコーとイキってすぐにこの仕打ちである。
範馬刃牙、容赦せん。
自分が調子に乗るのはいいが他人が調子に乗るのは許さん。

相撲などワンパンで余裕。
そんなメッセージさえ伝わってくる差を見せつけた。
このまま決着でもおかしくないレベルの一撃を受けて炎はどうするのか。
本体にはあまり期待できそうにないから何らかのオプションアイテムが欲しいところだけど、相撲賛美を見るに範馬一族の末端だとかそんなオチには期待できませんな。
本部に勝ったみたいな箔を付けておくか?
……その箔をつけた金竜山のその後はいまいちだからいらんか。
次回へ続く。
次週はお休みです。お休みの間に炎は逆転策を見つけられるか……?