刃牙道感想 第52話「手裏剣」

ついに武器VS武器の殺し合いが始まった。
過去に武器VS武器を経験した格闘家は少ない。
烈VSドイル、本部VS柳くらいだろうか。
幸いにして烈には経験があり本部にもある。
この2人が絡んだのは必然!


試合開始と同時に地下闘技場にある男が戻ってくる。
だが、戦場(いくさば)としての地下闘技場ではなく観客席としての地下闘技場に戻ってきた。
そう、あの男である。
守護者にして解説神、本部以蔵である。

ついに! ついに本部が観客席に復活!
あの試合に本部がいれば、解説してくれれば……
そう思った読者は数多いことだろう。
刃牙VS勇次郎という大一番にも解説しなかった男がついに守護(うご)いた。
16年ぶりの快挙である。

「まさに今開始(はじ)まったところです」

その本部と共にいる男が克巳である。
敬語を使ってるし、かつて小馬鹿にした時とはまるで異なる対応だ。
克巳、それアンタの立ち位置やない! 加藤や!
ピクル戦を経て著しい成長を遂げた克巳であったが、時折暴挙を行うのがこの天才であった。
ピクルにノープランで挑んだことはもちろん、加藤に弟子入りしたりとか。
もしかして、加藤の時のように本部に弟子入りしたのか?
天才愚地克巳に欠けている武器術を本部から学ぶことで補うのだ。
止めておけ、キャラとして立ち直れなくなる。

しかし、別の視点で考えるとこれは見事な判断と言える。
本部と言えばその豊富な知識(と戦局を見極められない眼力)から繰り出される神がかり的な解説だ。
ならば武蔵という未知の強者を分析するに当たって本部ほどの適材はいない。
天才愚地克巳、ファインプレイである。
馬鹿と天才は紙一重という言葉を今更ながらに思い知るのだった。

「長引かせるものでもなし」
「最速」「最短にて決着
(おわ)らせるか」

さて、場外に波乱がある中、殺し合い慣れしている武蔵は動じずに歩を進める。
武器を持った烈を前にして気負いなく最速で最短で真っ直ぐに一直線で終わらせると言ってのけた。
さすが何人もの人間を殺してきただけのことはある。
そりゃ警官に何の躊躇いもなく金的を打ちますよ。
ムエタイにだって多分打ち込む。

それに対し烈は上着を広げる。
下手すれば不審人物だがここは戦場。
見せるのは裸体ではなく、上着の裏に隠した烈得意の鏢こと手裏剣だ。
かつてドイルをサボテンにした必殺の武器である。

ドイツの時もそうだけどわざわざ手裏剣を見せびらかす烈だ。
武器を見せることで相手を萎縮させるのが狙いなのだろうか。
武蔵は恐れこそしないものの歩を止める。
飛び道具持ちとなるとまた戦い方が変わってくるものだ。

烈は早速第一投を投げる。
ドイルが為す術もなく食らった手裏剣を武蔵はこともなげにかわす。
眼前に迫ってから必要最低限の動きでかわした。
通り抜けたのかと錯覚するほどのギリギリにして神速の回避である。
これも0.5秒の読みが為せるものだろうか。

「速ぇええ……ッッ」
「残像が出るほどのスピードだぜ」

「一投目ならやってやれぬことじゃない」


出た! 伝統の驚愕と解説のコンビネーションだ!
克巳が驚き、本部が解説(かた)る。
驚愕役の役者は異なれど解説は変わらずの本部である。
地下闘技場で、なおかつ本部が絡んで行われた驚愕と解説は何年ぶりだろうか。

何かもう感無量である。
これだけで本部が出てきた価値があるというものだ。
やっぱり守護るより解説る方が本部には似合っている。
そもそも守護れてねーし……

克巳でさえ驚く武蔵の回避術であったが、1投目ならできないことではないらしい。
本部は何故か武蔵の戦力を知っている。
それ故の正確な戦力分析である。
でも、本部なら多分無理だよね。そうだよね。守護れないよね。

臆せず烈は2投目に移る。
1投目は腹部を狙ったのだが今度は顔面だ。
殺す気の手裏剣であるが、これも武蔵はこともなげにかわす。
頭部は的が小さいので胴狙いよりかわすのは楽なのだろうか。

なお、かわした手裏剣は入場口を通過した。
武蔵の背後に観客がいれば別の意味で最悪が起きていた。
観客も命がけの戦いである。

2投かわされた烈は今度は両手に手裏剣を持つ。
武蔵に対応してか、二刀流だ。
今度は上半身と下半身を狙っていく。
上下の両方向を同時に狙う対応の難しい攻めだ。
それを下半身狙いを片足を上げてかわし、さらに上半身狙いを手で難なくキャッチした。
かわすだけならまだしも、キャッチまでしてのけた。
この神技には刃牙も驚く。
幾本もの矢が飛び交う合戦で鍛え上げられた技術だろうか。

これだけで気が参ってしまいそうなものだが、烈は構わずに手裏剣を投げる。
同時がダメなら連射だ!
それをかわして、かわして、かわして、掴んで、掴む。
冷や汗ひとつかかずに手裏剣に対処している。
対武器対策は完璧だ。試合だけでなく合戦に生きただけのことはある。

さらに喉へ向けて手裏剣が迫る。
それを国宝國虎を抜いて一閃で真っ二つにしてのけた。
狙っている部位を見切る眼力、凄まじい速度の抜刀、真っ二つにする正確な太刀筋……
全てが常軌を逸している。元祖最強は伊達ではない。

武蔵は烈の手裏剣をいとも簡単に封じてみせた。
武蔵に飛び道具は通じない。
斬り合うしかないのだろうか。
せめて殴り合いに持ち込みたいところではあるが……
次回へ続く。


本部見参!
これで諸々の心配は吹き飛んだ。
特に解説の心配はない。
烈が危なくなったら守護ってくれるだろう。
守護れよ。

武蔵に手裏剣は通用しなかった。
矢が雨あられの合戦で鍛えられたからか。
でも、投石で死亡説もあるんですけどね。
板垣版武蔵は投石説を却下しているのか。

ここでやはり本部ですよ。
武蔵の弱点を見切ってくれるかもしれないし知っているかもしれない。
それを烈に教えれば……
というか、このおっさん、気絶した後に何もしていないのか。
守護る気があるのかよ。
やはり、この本部、守護るより解説りたいのかもしれぬ……



刃牙道(5): 少年チャンピオン・コミックス