刃牙道感想 第58話「拳法家」



武蔵が素手で烈に近付いた。
ボクシングに手こずったりとその印象が薄れているが、烈を打倒できたのは刃牙とピクルだ。
要するに人外だけである。
武蔵も人外に踏み込めるか。いや、クローン体とある意味、今までで一番リアルに人外かもしれないけど。


「ほら」
「近付いたぞ」「拳法家よ」「素手のままだ」

烈に肉薄しながら武蔵は煽っていく。
相手を積極的に煽っていくスタイルは健在だ。
でも、ここまでにこの人、メッチャダメージ受けているんですけど……
大丈夫なのか? 何で原始人並みに迂闊なんだ?

そんな武蔵の顔面をすかさず烈の左拳が狙う。
だが、武蔵は0.5秒の先読みができる。
いとも簡単にかわして左腕を掴む。
このまま、折るのか? 投げるのか?
現代に失われた戦国時代の武術が炸裂するのか?
しかし、現代格闘技の(自称)数千年先を歩むのが中国武術だ。
掴み対策は(多分)完璧だ!
自慢の三つ編みを振り回し目を打つ。
かつてピクルに行った四肢を使わない目潰しである。

髪まで使うのは予想外だったのか、これには砂弾による目潰しにも動じなかった武蔵もよろめき手を離してしまう。
え! それは効くんだ!? 目に直接入るどころか、歯が刺さった砂弾の方がどうみても痛そうなのですが……
あの時はプロレスラー並みの覚悟をしていたのだろうか。
武蔵のタフネスはよくわからんな。

これで危機を逃れた烈であった。
さて、ここでひとつ思い出して欲しいのは前日に本部に腕を掴まれた経験だ。 あそこから関節を極められそうになった。
あの時は本部の技の勢いを活かすことで返したのだが、スマートな対策とは言い難かった。
本部がより速く関節を極めていたらどうなっていたのかはわからない。

だが、今回は極めてスマートに、技の初動に移る前に潰している。
本部との戦いの経験が生きているのだ。 本部が烈と五分ったのは無駄ではない。
決してギャグではなかったのだ!

たじろぐ武蔵のアゴを烈は垂直に蹴り上げる。
かつてドリアンや龍書文が使い、烈自身もピクルとの戦いで放った中国拳法独特の垂直蹴りだ。
零距離でもアゴを蹴り上げるという高等技術である。
卓越した足技が烈の武器であり、脚を失えどそれは健在だ。

「拳法家に」
「素手で近付いてはならぬッッ」
「その言葉の意味するところ」
「実感
(わか)ってもらえたハズ……ッッ」

何やかんやで烈には相手が伝説の侍と言えど、素手なら負けないという自負があったようだ。
その上で相手の得意とする武器戦を挑む辺り、この男、克巳以上のノープランだ。
この特攻に等しい精神が烈を強くしたのが事実でかもしれないが、師匠(ポジションにすっかりなってしまった)の郭海皇はもうちと慎重な生き方を教えて差し上げろ。

烈の垂直蹴りで武蔵は膝を着く。
何をやっても効かなかったピクルとは違い、武蔵にはダメージの概念があるようだ。
そして、そこにさらなる蹴りを狙う。
烈は体勢が崩れた状態への顔面の蹴りは普通人なら確実に死ぬとピクル戦で述べている。 致死の一撃が武蔵に襲いかかる!

だが、呆気なく膝を着いた武蔵に油断したのか、烈はあっさりと武蔵に義足を掴まれ持ち上げられてしまう。 烈はこれでけっこう油断というか隙がある。
押している次の瞬間に反撃を食らうことも多い。
刃牙、ドイル、寂、ピクル……いずれも反撃を受けている。
というわけで、今回も例に漏れず押していると思った次の瞬間には反撃を受けてしまうのだった。

(こんな握力があるのか――!?)
武蔵は片手で烈を持ち上げる。
軽量級の刃牙どころか100kgを越えるヘビー級の烈まで持ち上げた。
その握力に烈を含むその場にいる全員がもう冷や汗だらだらだ。
しかし、これ、握力というよりも腕力もあるだろうし、あとしっかりと持ち上げられる人たちのバランス感覚も凄いと思うのですが。

持ち上げながら武蔵はアゴへの打撃を凄いと評価する。
アゴへの打撃は刃牙世界において高い必殺率を誇る。 下手にマッハを出すよりアゴを狙った方が効果を期待できるくらいだ。
どこか納得いかない。ぜぇんぜぇん納得いかない。

そのアゴへの打撃が武蔵にとっては未知ながらも、刃牙のジャブで学び烈の垂直蹴りに体勢を崩せどすぐさま反撃に移った。
もうアゴを狙っても数度殺すことはできない。
1度で全てが決着する殺し合いに生きてきた男だけに、同じ失敗は繰り返さぬのだ。
……武器に対してもその経験を活かして欲しいのですが。

さらに三つ編みを武器とし、零距離で蹴り上げたことを褒める。
独歩の時といいちゃんと相手を褒める武蔵であった。(当然自分より下という確固たる自信はあるがね)
それも圧倒的に有利な状況にあるからか。
烈も蹴りで足掻こうとするが武蔵に操作されて翻弄されるばかりだ。
この状態からは刃牙でさえ為す術なくやられている。 烈、大ピンチである。

「ぬん!!!」
武蔵は烈を振りかぶる。
かつて刃牙に行った人体素振りを敢行だ。 当然、握りは人差し指だけで支持する独特のものである。

ドキャッ
烈は顔面から地面に叩き付けられた。
刃牙と違って受け身さえできずに直撃してしまった。
刃牙はかつてドレスでブン回された経験がある。
それでかろうじて受け身は取れたのかもしれないが、未経験の一撃を受けた烈は為す術もないのか。

叩き付けられた地面を跳ねる。
跳ねながら体勢を立て直し構える。
まさか、この場面で消力か!?
だが、壁を利用されると消力が無効化されるのは勇次郎VS郭海皇戦で実証されている。
当然、地面を利用しても同じことだろう。

そんなわけで烈は立って構えているものの白目だ。
まさか、立ちながら気絶したのか?
烈でさえ一撃で倒しかねない武蔵の力に観客の皆が言葉を失い汗を流す。
それはグラップラー一同も一緒だ。
刃牙が、郭海皇が、渋川先生が、本部が、ジャックが、克巳が呆然とする。
何故か紅葉だけいない。アンタ、来ていたよね?

だが、ここで本部に注目したい。
グラップラー一同の皆が冷や汗を流す中、本部だけが冷や汗を流していない。 かつてはアナウンサーの啖呵だけで冷や汗を流していた男が、この衝撃の事態を前に冷や汗を流していない。
やはり、刃牙道の本部はどこか一味違う。 それは構わないのだ旧来通りに解説して欲しい。

「満場の者全ての胸に去来した思い」
「烈 海王 敗れたり!!!」


烈海王敗れたり。
武蔵の言葉通りになってしまった。
何というか、あの言葉に意味や真意があったというよりも、ネタバレしていて笑われたから実力行使で黙らせたという気がしてならない。
武蔵あるいは本部の解説が欲しいところである。
特に本部は知られざる武蔵伝説(板垣知識)を披露していただきたいところだ。

烈は気絶?した。
だが、この試合はただの試合ではなく死合いである。
武蔵は歩を進める。
トドメを刺す気だろうか。あるいはまだ烈は戦えるのか。
次回へ続く。


烈が刃牙の二の舞になってしまった。
この辺を刃牙はまったく説明しなかったんだろうな。
生死の分かれ目なんだからちょっとは教えてあげればいいのに。
いい顔をしているとか言っている場合じゃない。

武蔵の烈の攻撃を幾度も受けた。
だが、勝負の分かれ目では耐えきって反撃した。
勝敗に関係しない打撃はかわす必要さえないということだろうか。
タフネスがあるのかないのかよくわからん人だ。
この掴み所のなさも武蔵の武器か。

駆け引きで刃牙と独歩を下した武蔵だったが、今回は純然たる身体能力で大ダメージを与えた。(まだ勝ったとは言わない)
烈相手には駆け引きより真っ向から押し切る方がダメージを与えられると踏んだか。
事実、烈はピクルの肉体に圧倒された時は心が折れてグルグルパンチをしている。
それを含めると今回の素振りも駆け引きの結果になるか?

しかし、この世界、握力がやたらと驚かれますな。
腕力よりも脚力よりも、何よりも握力が持ち上げられている。
それを象徴するように花山を代表とした握力自慢に弱者はいない。除く孫海王。
……もしかして、最近の本部が調子に乗っているのも握力が強くなったからか?
孫海王の手を握り潰している本部を近々見られるかもしれぬ……



刃牙道(5): 少年チャンピオン・コミックス