刃牙道感想 第81話「黄金」

勇次郎と武蔵が宴会開始だ! 本部はどうした!
今時、コニャックの味に震えているのかもしれない。
徳川など飲んでいられるかと豪語するのであった。
あるいは酒に飲み慣れていなくて二日酔いでダウンか?
いずれにせよ本部はクソの役にも立たないことが絶対の事実である。


「伝説の剣豪宮本武蔵の実物が眼の前にいる」
「跳びかかれば」「反応する宮本武蔵がここにいる」
「わかるかい」
「夢が叶ってるンだぜ」
「黄金の山に囲まれていたってアンタしか見えねェさ」


勇次郎は武蔵の問いにこう答えるのであった。
本物の武蔵がいるからもう武蔵以外に見えない!
まさにぞっこんである。
こりゃ完全に恋していますな。
闘争はセックスと表現する勇次郎らしい。
刃牙と親子関係を堪能したり、少年にサインしたり、本部に酒を奢ったりとやや丸くなったかと思われた勇次郎だが、その本質は変わっていないのであった。

その一方でぞっこんの相手となかなか戦わないのも勇次郎である。
ピクルともあれだけ期待させておいて戦わなかった。
あれも恐竜クラスの戦力と戦えるという夢を叶えたと思うのだが……
今回もどうなることか。
これに関しては本部も守護れるかもよ?

「アンタは俺に何を見てると」
「まさか黄金じゃねェよな」


「イカンか黄金は」

武蔵の問いかけに答えた勇次郎は、酒を武蔵に注ぎながら問いかける。
カマをかけているがそのものズバリ黄金である。
武蔵は誤魔化さずそのまま返すのだった。
これには勇次郎もやや想定外というか、毒気を抜かれる。

武蔵が生きていた時代は名のある武将を討ち取ればそれはもう大手柄だ。
だからこそ、勇次郎を山盛りの金貨と捉えたのだろう。
勇次郎を討ち取ることは戦国時代換算でそれほどの価値があるのだ。

「闘争が」「目的地ではなく手段か」
「純度が低い」


これは間違いなく相当な評価ではあるが、勇次郎としては気にくわないらしい。
闘争の理由を考えたことがないのが勇次郎イズムである。
ただ美味い飯を食らうように戦いたい。
そこに目的を加えることは不純なのだ。
勇次郎と武蔵は最強同士だが闘争へ向ける気概には違いが存在した。

「必要か」「純度」

不純という言葉に対し純度が必要かと真っ向から返す。
これには勇次郎はまた驚く。
料理漫画で言えば無農薬や天然物や天然調味料が必要かと返すような行為である。
農薬を使い養殖物をうま味調味料で食わせる!
グルメなら卒倒しかねないことである。
なお、農薬に関しては使った方が美味しい野菜ができるとか。

ここで武蔵は自分の人生を語る。
相手を斬りまくると名が広まり、諸国の大名が武蔵の腕を求めた。
結果、多額の報酬を得られるようになり、同時に民衆たちは武蔵を讃えた。
女も、金も、飯も、酒も思いのまま!
武蔵を支えていたのは実に俗物的なモチベーションであった。
強いんだ星人とは一線を画す。
みっちゃんに死合いを求めているのもこのためなのか?
で、現状武蔵に酒などを渡しているから条件としては問題なしと。

なお、武蔵は60回ほど斬ったと言っている。
これは史実における30歳までの戦果と一致する。
だが、武蔵は60歳くらいまで生きている。
30歳以後を考えるとやや計算が合わなくなりそうだ。
つまり、武蔵の記憶は肉体年齢である31歳に合わせられているのだろうか。
脂の乗った実力と老練した精神という矛盾した強さを持っていると思いきや。
そうなると初代地下闘技場設立と時期が合わなくなり……
まぁ、その辺はあまり整合性を求めても仕方ないのですが。

「出世したいのだ!!!」
「誉め讃えられたいのだ!!!」
「誉められて」「誉められて誉められて」
「逃げも隠れも出来ぬ身となりたいのだ!!!」


武蔵は自分の出世欲を吐露していく。
これは生きることそのものが大変な時代に生まれたからこその欲だろうか。
宮本武蔵という自身が戦うことによって認められ誉め讃えられることが続けば、やがてそのために戦うようになってもおかしくはない。
あくまでも自身の強さのために戦場に身を置いた勇次郎とはまったく異なる考え方である。

同時にこれは勇次郎と言うよりも勇一郎の考えに似ている。
米軍を圧倒する戦力を持ちながらも金のために負けを選んだのが勇一郎である。
勇次郎は勇一郎を快く思っていないようだったし、同じような感情を武蔵に抱いているかも。

武蔵の告白によってやや好感度ダウンだろうか。
勇次郎は興味を失ったように白目で酒を飲む。
ぞっこんだったのに……
だが、その隙に幻影刀だ!
ここまでの告白は演技だったのか?
本心ではあるが勇次郎の人格を見切った上で、隙を作るものだったのか?

駆け引きにおいて圧倒的に優れるのが武蔵である。
その駆け引きは勇次郎をも翻弄するのか?
幻影刀を受けた勇次郎は表情を変えていないが……
あるいは体重100kgのカマキリを笑ったように幻影刀も笑うか?
最強同士の駆け引きは既に始まっていたのであった。
次回へ続く。


武蔵は想像以上に俗物だった!
とはいえ報酬があるからこそ頑張れるのが人間というものである。
武蔵の叫びは実に人間として正しい。
同じような欲を抱えていた人間がたくさんいただろうし、その中でトップになった武蔵は欲に見合う実力を備えており、それだけの研鑽も重ねていたのだろう。
欲があるからこそ人は進化できるのだ。

不純と称されたもののこの一切の欲を抑えない生き方は勇次郎の主義には反していない。
強くなりたくば喰らえ主義だ。
だから、勇次郎は自重しない。煙草だって吸う。
なので、食いたい物を好きなだけ食うために戦うのは問題ないように思える。
まぁ、その辺を判断するのは勇次郎なのですが。

勇次郎は戦いたいから戦う。
武蔵は出世したいから戦う。
本部は守護りたいから戦う。
それぞれに戦う理由が存在する。
その辺、烈は半ば死ぬために戦ってしまったのはいかんかったか。
チキンレースばかりやっても実際のレースで勝てるようになるわけじゃないのだ。

さて、ここで存在を真面目に失念していた刃牙は何のために戦うのか。
勇次郎に勝つために戦うという理由はもはや存在しない。
なので、ええと……
そうだ、コイツ、アクビするために戦っているんだった!
……今更ながら最悪な主人公だよ。



刃牙道(8): 少年チャンピオン・コミックス