刃牙道感想 第132話「孤独」

本部死す!
ついに討ち死にを果たした本部であった。
だが、悲しむまい。
むしろ、大健闘とも言えるだろう。
だから、ちゃんと感想を書くよ。烈の時みたいに本気でショックで感想を書けないなんてことにはならないよ。


本部の絶体絶命に刃牙が叫ぶ。
旧知の格闘家が――本部は忍者だけど――2人も死ぬとなれば黙ってはいられない。
ジャックがピクルに食われそうになった時も止めようとしたし、メンタルを砕いてまでも戦うのを止めさせた。
この辺は主人公っぽく命を大事にする奴なのだ。
シコルスキーとJr.のことは忘れろ。

「おお…っ」「少年ぼん

刃牙の絶叫に武蔵が反応する。
思えば久し振りに対面したな。
武蔵が現代に来て初めて見えた格闘家が刃牙である。
佐部は……忘れよう。彼はすっかり面白くなってしまった。

人を殺しておいて武蔵のこの反応である。
何か斬殺に対する躊躇がまったくございませんな。
如何に死んだのが本部とはいえ、これには刃牙も本気にならざるをえまい。
本部の屍が刃牙を本物の武へと導くのだ。
そう考えていた時期が俺にもありました。

守護しゅごれねェだろうが……」

本部が生きていた!? 武蔵にタックルを放った!?
まだ生きていたのかよ、お前!?
いや、たしかに死んだにしては出血が少なすぎたが……
というか、やっぱり守護しゅごるなのか。

この本部のタックルは刃牙に意識が向いたこともあって、完全に決まって武蔵は倒れる。
ピクルタックルにさえ耐える武蔵だが、不意を突かれた満身創痍の本部タックルには耐えられない。
先読みの達人である一方で先読みできない状況に弱いのだろうか。

本部は如何に剛力と言えど力では格闘家の中でも下の方だろう。
実らない努力ほど辛いものはない。
だが、本部はそれでも諦めずに鍛錬を重ねてきた。
このタックルが決まったのは不意を突いたのもあるが日頃の鍛錬の賜物だろう。
本部の人生が篭もったタックルである。

マウントを取った本部は膝で武蔵の腕を押さえて金重を封じる。
ここから武器か?
ちゅどるか?

ん~~~~~……
やっぱりあなたたちはわかっていない。
本部以蔵という人物を。
武器の使用を十八番にしていた本部も――追い詰められていたのでしょうね。

最後の最後――もっとも信頼に足る武器として使用したのは己の肉体でしたよ。

そんなわけでマウントからの頭突き連打!
これには武蔵も鼻血を出すのだった。
本部の頭突きでダメージかよと思うかもしれない。
だが、バキシリーズにおいて頭突きの必殺性は極めて高い。

遡ってみると頭突きでオリバが龍書文を下し、刃牙もそのオリバを下している。
また、格上相手にも有効なのが頭突きの特徴で、寂が烈を怯ませ、最近ではフィジカル最強のピクルを相手に武蔵が頭突きでダメージを与えている。
だからこそ、本部と言えど頭突きには侮れないダメージがあるのだ。

また、マウントポジションは現代格闘技でも手を焼く存在だ。
かつてブラジリアン柔術が格闘技界を震撼させている。
如何に武蔵が伝説の剣豪と言えどこのポジションには無策では抗えないのだった。
本部はこの土壇場で現代の利を活かしている。

「たった一つ残された…」
「俺に残された たった一つの武器わざに」
「間に合った!!!」


そして、武蔵に裸締めだ!
左腕は切られ、右腕は肩ごと切断されたので使えない。
なので、左腕の上着を噛むことで無理矢理締め上げている。
グレート巽のような強引な裸締めである。
アラミド繊維でなければちぎれてしまいそうだ。
いや、こんなこともあろうかとアラミド繊維の上着にしたのか?
本部の上着はただの防具ではなかった。武器にさえなるのだ!

マウントからの頭突き連打を経た裸締め……
合戦ならまずありえない攻めである。
これには武蔵も大混乱なのか、裸締めを解くことよりも本部を倒すことを優先して金重を先ほど斬った右肩に刺す。
この態勢ではそもそも斬れないのもあり、本部の決死の裸締めを解くことはできないのだった。
峰が身体の方に向いているのもちょっと損だ。

武蔵が素手なら別の方法で逃れたかもしれない。
力尽くで腕を剥がしたかもしれないし、それで逃れられれば本部は満身創痍だからほぼ決着だ。
だが、その真価を発揮できない状況だというのに武器に頼ってしまい、致命的な痛手となってしまった。
これぞまさに磨いた五体以外の何物かに頼みを置く、その性根が技を曇らせるということだろうか。

出血がなくて平気そうな本部であったが、先ほどの斬撃で片肺は潰れ鎖骨も断たれたらしい。
大ダメージだ。
ほぼタックルからの猛攻も無呼吸だろうし、追い詰めてはいるが本部大ピンチ。

「この顎をわずかでも緩めちまったら」
「もう守護まもれねェ」
「自身を……… 仲間を…… 時代を…… そして何より………」


この期において守護るか、本部!
守護るの意味は相変わらずようわからんが、この決意は本物だ。
自身と仲間と、時代を守る!
本部の一連の攻めは現代だからこそ、素手だからこそ磨かれたものである。
たしかに時代を守護る資格があるな……

さて、この裸締め、効いているのだろうか。
わりと簡単に気絶するけどタフなのが武蔵でもある。
冷や汗を流して舌を出してメチャクチャ効いていた。
……あ、これ、あかんやつや。
あかんやつやぁ!

「アンタをだ」「武蔵さん」

武蔵も守護る! それが本部流!
いやいや、口を離したらいかんでしょ。
だが、この言葉は武蔵に届いたのか、衝撃を受けるのだった。

「すまない…」
「今さら……」
「今頃追い付いた…」
「アンタの孤独に 今頃追い付いたんだ……………」


戦う中で本部は武蔵が抱えていた孤独に追いついたらしい。
だから、守護るということか?
うーむ、本部の考えは難しい。
何にせよ本部にとっての武蔵はただ斬る相手ではなくなったようだ。
そして、やがて武蔵は気を失っても離さなかった金重をついに手放すのだった。
……え? 手放した?

「勝負あり!!!」

勝負あっちゃったァァァァアアァアアア!? 守護しゅごっちゃったよ!?
勝負ありの裁定が下ればそれは覆らないのがバキシリーズのお約束である。
つまり、本部は武蔵に勝ったのだ。
刃牙が、独歩が、烈が、渋川先生が、ピクルが勝てなかった武蔵に、本部が勝った!!

最後の最後で本部は自分の肉体に頼ることで勝利し、一方で武蔵は武器に頼ってしまい敗北した。
現代だからこそ磨かれた技と戦国だからこそ振るえた凶刃の対決でもあった。
忍者だ何だと言われまくった本部だが、最後の最後は立派なグラップラーとして戦い勝った。
刃牙道になって武器の強さが強調されたが、やはり大事なのは肉体であったのだ。
故に刃牙道のテーマにさえ関わる大勝利とも言える。
まさか、本部がここまでの大任を務め、そして、成し遂げようとは……
次回へ続く。


本部、守護った!
いやはや、もう疑うまい。
散々ネタにしたがもうネタにできない。
本部は強い。
これは完全に確定した真理なのだ。
そこに異を唱えるのは野暮というものだろう。

でも、違和感を持ってしまうのはやっぱり金竜山を相手に大失態を犯したことだ。
実戦流柔術の使い手が横綱に負けるのはちょっと……
だが、ここで見方を変えたい。
金竜山も強かったのではなかろうか。

実は金竜山は烈クラスの強者だった。
それほどの強者が相手ならば本部とて分が悪い。
本部最大のポカである小指に関しては横綱の小指の強さを知り尽くしているからこそ指を捕ったのだ。
本部の剛力ならば小指に対する信頼をむしろ逆手に取ることができる!
だが、金竜山は本部の想像さえ上回る小指で逆転したのでは……
なので、本部の失敗というよりも金竜山の大健闘という可能性があるかも。

その後、金竜山が猪狩に負けている。
これは本部との戦いで消耗した可能性がある。
また、本部に対しては最後に四股で踏み潰すという反則技を使ったが、猪狩には真っ当な相撲を挑み挑まされ、結果、それが致命傷になっている。
本部クラスの強者である金竜山が猪狩に負けたにもそれなりの理由があるのだ!
……多分。

本部自体は金竜山に負けたことを除けば、他の描写は概ね失点はない。
勇次郎に鬼の貌を出させるほどだし。
スピードでかきまわせとかはどうかと思うけど……
あれは刃牙レベルに合わせたアドバイスということでひとつ。

さて、武蔵の孤独とは何なのだろうか。
これは武蔵と同じ領域で戦う人間がいないということかも。
みんな、基本的に武器を使わないし、勝つことを目標にすれど殺人を目標にはしていない。
ピクルも食うという目標はあっても、生存が第一だからヤバい相手と思ったら即逃げ出している。
闘争に対する心構えが武蔵は現代の戦士たちとズレているのだ。
それが武蔵の強さでもあったが、故に弱さとなってしまった。

武蔵もこれで現代の戦いを理解して、素手で戦うようになってくれればありがたいのだが。
刀を手にしてはむしろ勝てない相手もいる。
それを本部が命を犠牲に教えてくれた。
……うん、勝ったけど本部、死ぬよね、これ。
だが、死んでも悔いはあるまいて……守護れたし……